第18話 入学から10日目。
入学から10日目。
A組の人間は魔法試験が行われたグラウンドに集められていた。
「では、本日は約束通り魔法試験と同じ魔道具を使い、魔法の威力の再判定を行う。ルールは事前に説明した通り、クラス分けの試験の際にグランシェルドが使用可能な方法であれば何をしても構わない。自信のある者からやってみろ」
メモリ先生の説明が終わるが、我こそはという者は現れない。
「どうした?グランシェルドの不正を証明してくれるんだろう?ケイト=フェメル、君からやってみてはどうだ?」
「……わかりましたわ」
メモリに言われてケイトが前へ出る。そのケイトが取り出したのは水晶の様な魔道具だ。大きさは野球ボールぐらいある。
「こちらは火球の魔法が発動する魔道具。通称火炎玉です。水の物が手に入らなかったのでこちらを代用します。この火炎玉が放つ火球と私の火球の魔法を同時に放つ事で威力を嵩増ししますわ。ちなみに、今回は10日という期間しかなかったので出来ませんでしたが、本来は魔道具は見つかりにくいよう細工をしていたのではと推測いたしますわ」
「なるほど、ではやってみなさい」
「いきますわ!≪火球≫」
ケイトが魔道具に魔力を流し、その直後に火球の魔法を使う。タイミングは完璧で、二つの火の球は1つになってクリスタルへと直撃した。
表示された数値は042。
ケイトの元々の数値が033だったので9点の加算だ。
「嘘、たったこれだけしか増えませんの?」
「火炎玉単体で使った時の数字が大体010だからな。そんなものだろう。次はだれがやる?」
そこからは実演よりも質問コーナーだった。
「事前に魔道具に細工をしていた可能性はありませんか?」
「ないな。試験に使われた魔道具は回収して教師全員が立ち合いの元でチェックしている。魔道具に細工をした形跡は見られなかった」
「回収までに、又は先生たちが確かめるまでの間に誰かがすり替えた可能性は?」
「あの魔道具には過去100回分までの記録が保存されている。それらの記録が学園で保管している記録と一致したうえ、グランシェルドの魔法で出来た凹みもあった。偽物にすり替えるのは難しいだろうな」
「実際に表示された数字の上に魔法で数字を浮かび上がらせたんじゃない?」
「阿呆。先ほど記録は残っていると言っただろう。それに魔道具に出来た凹みはどう説明する」
「あの魔道具が水に弱く、水魔法だと高得点が出やすいなんて事は?」
「あるわけないだろ。諸君らの中にはいなかったが、別日に試験を受けた者の中には水魔法を使った生徒が2人ほどいたが、どちらも000を下回っていた。過去の試験の結果からも水魔法はむしろ高得点が出にくいとされている」
「だったら尚更、水魔法で144だなんておかしいじゃないですか」
「魔道具を凹ませるほどの魔法だぞ?むしろ水魔法でなければ150は越えていただろうな」
「今この場でグランシェルドにもう一度魔法を放たせれば何か分かるんじゃないか?」
とある生徒のそんな提案に、クラス中の生徒の視線が俺に集まった。
「だそうだ。どうする?グランシェルド」
「別に構いませんけど……」
「良し、ではやってみなさい。出来れば水魔法の後に他の属性の魔法も使ってみてくれ」
「わかりました」
面倒くさいのでさっさと終わらせたい。
威力は試験の時と同程度で構わないだろう。
「≪水球≫」
俺は手のひらの上に野球ボールより少し小さいぐらいの水球を作りだし、それを半分程度の力でクリスタルへと放った。
水球はクリスタルに直撃し、前回同様窪みを作った。
表示された数値は162
あ、あかーん。また失敗した。
威力調整が雑過ぎた。というか難しいな、威力調整。せめてプラス18じゃなくマイナス18なら体調の所為とかにしたのに。
そういえば、オリビエ先生は魔法のコントロールが芸術的だったな。彼女なら下一桁まで調節できそうだ。
オリビエ先生の顔に泥を塗らないように、今後は魔法の威力のコントロールを課題にしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます