第17話 サリーがクマのぬいぐるみをテーブルに置くと、

 サリーがクマのぬいぐるみをテーブルに置くと、クマのぬいぐるみはがまるで紳士のような礼ををした。


 「これは、ぬいぐるみのゴーレムですか…」


 石製以外のゴーレムを造るのはそれほど難しくないが、布製のゴーレムは考えなかった。

 外見からは核になる魔道具が確認できないので、きっと中に埋め込んでいるのだろう。


 「この子はシェル。9歳の頃に誕生日プレゼントでもらったの」


 貰った、ということは自分で改造を施したわけではないのだろう。それにしても市販されているゴーレムは全て似たような石製のゴーレムだった筈だ。ということはあのゴーレムは市販品ではない事になる。


 「俺の記憶では市販のゴーレムは全て統一された石製の物だったと記憶していますが、そのゴーレムは誰が作った物なんですか?」


 「サリーは元々ゴーレムに興味はなかったんだが、ぬいぐるみが好きでね。動いて喋ったらどんなに素敵だろうと毎日語っていたよ。そこで私が元のゴーレムの制作者である魔道具師に無理を言って既存のゴーレムの魔道具を改良してもらったんだよ」


 コーネリアは快闊に笑って見せ、サリーは少し照れ臭そうにしている。

 まさか製造元に直接頼むとは、流石貴族。


 「ご自身たちで改良した訳ではないのですね」


 ちょっとだけがっかりだ。魔道具研究部を名乗るぐらいだから、もしかしたらと思ったんだけどな。


 「アーバン君は面白い事を言うな。私たちの様な素人がそんな事出来る訳ないじゃないか。プロに依頼しても完成まで1年以上かかったんだからな」


 それは多分他の仕事が忙しくて後回しにされていた、とかじゃないかな。ゴーレムの魔法陣を理解できる今なら、布製のゴーレムを作るのは難しくないと思う。寮に戻ったらちょっと魔法陣を描いてみようかな。


 「ここは魔道具研究部ですよね。そういうのもやっているのかと思いまして。まぁ、お話を聞く限り学生になる前のお話の様でしたが」


 「学生の今でも出来ないさ。魔道具研究部は、言い方は悪くなるが魔道具を使って遊ぶのを主目的に活動しているよ」


 だろうね。そんな気はしてたよ。


 「それも良いですね。俺は幼少期の頃はゴーレムで遊べるような友達もいなかったので楽しそうです。とはいえ、シェルを見る限り、戦って遊ぶのは無理そうですが」


 戦うと言う言葉を聞いてサリーがシェルを抱えて体の後ろに隠した。涙目になって首をフルフルと横に振っている。


 「お、良いね。私はサリーとは違ってそう言う遊び方の方が好きなんだ。是非一緒に遊んでくれると嬉しい」


 「ええ、是非」


 俺はコーネリアと握手を交わした。

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