第16話 学園生活2日目。

 学園生活2日目。

 本格的な授業が始まった。と言っても初日という事もあり、内容は各家庭で家庭教師に習っていそうな事のおさらいみたいな授業だった。

 ちなみに、クラスメイトは幾つかのグループに分かれ始めているが、当然俺は何処にもなじめておらずぼっちだ。


 放課後、俺は早速魔道具研究部の部室に赴く事にした。

 プリントによると場所は旧校舎、別名部室棟の2階の端らしい。

 地図を頼りに部室棟を目指した。

 旧校舎という割には綺麗で、手入れが行き届いているように感じるが、流石に建物自体からは歴史を感じる。

 中に入り大理石の廊下を進み、その先の階段を昇る。中もやはり手入れが行き届いており、とても旧校舎という雰囲気ではない。そのまま端まで歩いて行くと目的の部屋を見つけた。


 魔道具研究部と書かれた表札が掲げられている部屋の木製の開き戸をノックして声を掛けた。


 「すみません。入部希望の者です」


 中からガサゴソと人が動く気配を感じた。少しだけ待つと、開き戸がこちら側に徐に開いた。


 「ほう、まさかこの部に入部希望者がくるとは。私は3年で部長のコーネリア=ネフィスという。さぁ、入ってくれ」


 出迎えてくれたのは、なんというかイケメンだった。赤髪ロングのイケメン女子だ。演劇部に所属し男役でもやれば、それはもう女子生徒たちから黄色い悲鳴が上がるのは請け合いのイケメンだ。


 そんなコーネリア部長に促されるまま、魔道具研究部の部室へと入室する。するとそこにはもう1人の部員がいた。


 「紹介しよう。彼女は副部長のサリー=ネフィス、2年生だ。名前から分かると思うが私の妹だよ」


 紹介されたサリーは座ったままペコリと会釈をしてきた。


 サリーは目元迄伸ばした前髪と眼鏡で顔を確認しずらい。髪の毛の色は姉と同じ赤色だが、その他はあまり似ていないような気がする。とくに胸が。妹の方は結構な物をお持ちなようだ。俺の中に眠るエロガキだった頃のアーバン君が目を覚ましそうだ。


 「どこを見ているのかな?」


 コーネリアに指摘され、俺は目線を外し咳払いを1つしてから自己紹介をする。


 「失礼しました。1年生のアーバン=グランシェルドです。魔道具研究部に入部したくて来ました。あ、こちら入部届です」


 俺は持っていた入部届を部長のコーネリアに手渡した。


 「預かろう。時にアーバン君は何故魔道具研究部に入部しようと思ったんだい?魔道具は正直あまり人気のジャンルではないだろう?」


 そうなのだ。貴族の間では魔道具を使うぐらいなら魔法を直接使う方がエレガントだとされている。魔道具は魔法も碌に使えない平民の道具だと魔道具を馬鹿にする傾向があるらしい。そのくせ生活に必要なランプやら水を浄化する魔道具は普通に使う。


 「幼少期に出会ったゴーレムにハマりまして。今でもゴーレムを改造したりして遊んでいます。将来はゴーレム専門の魔道具師を目指したいと思っているので、その一環ですかね」


 「ゴ、ゴーレム!」


 声を発したのはサリーの方だった。挨拶の時も会釈だけだったに。


 「あ、あなた。ゴーレムが好きなの?」


 「ええ、この年でまだそんなおもちゃを?と思われるかも知れませんが、自分の夢はいつか自分だけのオリジナルゴーレムを造ることなんです」


 「わ、私も、ゴーレムが好きなの」


 そう言って彼女が持ち出したのは、クマのぬいぐるみだった。

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