第14話 「――――新入生代表、アーバン=グランシェルド」  

 「――――新入生代表、アーバン=グランシェルド」


 パチパチ。


 体育館の檀上で俺が新入生代表の挨拶を読み上げると、疎らに拍手が起きた。

 生徒の殆どが怪訝な顔で此方を見ている。


 そんな中、クラス分けの時にもいた剣術の試験官と魔法の試験官は満面の笑みを浮かべながら全力で拍手していた。逆に怖いんだが?


 入学式も無事に済み、生徒たちはそれぞれのクラスに案内される。


 クラスは全6組。

 単純にA組~F組に分けられていて、俺は1年A組に通された。


 「Aクラスの諸君!入学おめでとう。私が諸君らの担任を務めるクルス=メモリだ。A組の諸君らはクラス分けのテストで極めて優秀な成績を残した優秀な生徒たちだ。私はそんな生徒諸君の担任に慣れた事を誇りに思う」


 随分と感情をこめて語る教師だな。

 それにしても、生徒に優劣をつける発言は前世だと問題になっていただろう。どうもこの教師は好きになれそうにない。


 「はい、メモリ先生。そんな優秀なA組には相応しくない方がいると思いますわ」


 手を挙げて発言したのは黒髪縦ロールヘアーの女子生徒だった。惜しい、金髪なら完璧だったのに。


 「君は確か、ケイト=フェメルだったね。相応しくない、というと」


 問われてケイトはコチラを睨みつけてビシっと指を指して来た。こら、人様に指を指しちゃいけません。


 「アーバン=グランシェルド!彼の魔法の成績は明らかに異常でした!間違いなく何かしらの不正行為を行ったに違いありませんわ!神聖な学び舎である王立学園のクラス分けの試験でそんな不正を働くような人間が、A組に相応しいわけが御座いません。いえ、王立学園に相応しく御座いませんわ!今すぐ退学処分にするべきです!」


 語尾に”わ”を付けるのか付けないのかはっきりして欲しい。


 「なるほど、素晴らしいなフェメル!」


 メモリ先生はパチパチと笑顔で拍手をする。

 その言葉と態度で教師の同意を得たと確信したケイトがふふんと鼻を鳴らし、こちらを見下してくる。


 「つまり君は、我々教師がどれだけ調べても見つけられなかった不正を見つけたという訳だ!では聞かせてくれ、グランシェルドは一体どういう方法であの高得点を叩き出したのかを!」


 「え?……え、あの……」


 メモリ先生の言葉が予想外だったのだろう、ケイトは驚いて言葉をうしなっている。


 「方法は、わかりませんわ……で、ですが、あんな数値はあり得ません!144点だなんて!わたくしでも033点でしたのに」


 ああ、思い出した。この子、クラス分けの魔法の試験で俺の次に点数が高かった子だ。


 「嘆かわしいな。つまり君は我々教師の目が不正も見抜けない節穴だと?何度も調べなおしたが、グランシェルドが不正を行った形跡は見られなかった。つまり我々は不正は無かったと判断した」


 「証拠がなければ許されるのですか?!144点なんて、常識的に考えて不正以外考えられないではありませんか!」


 尚も食い下がるケイト。というか、何度も調べなおしたのか、やっぱり学園側にも不正を疑われてたんだな。


 「常識的に考えたら、我々教師は間抜けだから簡単に出し抜けると?ではこうしよう。フェメルでも他の生徒でも構わない。これから10日後にもう一度魔法の威力を計測する。ただし今回は不正をしても構わない。144点を出して見ろ。もちろん、グランシェルドが可能な方法でだ。例えば全員一斉に魔法を放つなどは認めん。もし、お前たちの中の誰かがグランシェルドの不正の証明を出来れば、グランシェルドの処分を検討しよう。それでどうだ?」


 メモリ先生の提案にクラス中が騒めく。


 「分かりましたわ!必ずあの点数が不正であったと証明してみせます!」


 他のクラスメイトが困惑する中、ケイトは一人息巻いていた。



 ―――やっぱり、面倒くさいことになったな。

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