第13話 「ふぁ~……」

 「ふぁ~……」


 入学式当日。俺は学園に向かう馬車に揺られていた。


 王立学園は全寮制だ。交通手段が徒歩か馬車ぐらいしか存在しないこの世界では通学は難しいらしい。

 ちなみに、生徒1人につき1人の付き人が許されている。


 「眠そうですね坊っちゃん。昨夜も遅くまでゴーレムを造っていたとか」


 付き人として連れて来たのはカミーユだ。

 彼女は手先が器用で、良くゴーレム造りを手伝って貰っていたので、一緒に居た時間が多い。そんな理由で選ばせて貰った。


 「おかげでキリが良いところまで造れたよ。入学したら暫くはゴーレムをいじれないだろうからね」


 「長期休暇の期間以外は帰省が許されていませんからね」


 ちなみに、王立学園の入学式は年の初め、長期休暇はその前の20日間になる。つまり約1年はゴーレム関連はおあずけ状態なのだ。





 学園について馬車を降りた俺は驚いていた。


 「多いな。これ皆新入生か?クラス分けの時は100人ぐらいしかいなかったはずだけど」


 ざっと見渡すだけで200は居そうな子供、それと同じ数の付き人。


 「あれ?坊ちゃんはご存じありませんでしたか?王都に住んでいる貴族、西部に住んでいる貴族、東部に住んでいる貴族の3日に分けて試験が行われたそうですよ。確か今年の新入生は400人近くいるとお聞きしました。それだけ多くの生徒様方の中から新入生代表に選ばれたからこそ、旦那様はあれだけお喜びだったのです」


 カミーユの自慢気な声が聞こえてしまったのか、周囲の人間の視線が俺に集まる。


 「新入生代表?」「あれが?」「アーバンってあれだろ?ひきこもりの」「替え玉じゃないのか?」「俺は血のつながっていない養子だと聞いた」「表に出すのが恥ずかしいぐらい不出来だから屋敷に軟禁されてるって聞いたけど?」「どうせインチキだろ」


 うーん、俺の悪い噂は国中の貴族の間に広まってしまっている様だ。俺の顔を始めてみるという事は、クラス分けのテストが別日だった生徒ということ、つまり地方貴族たちの間にまで噂が広まっているとは。おそるべき貴族ネットワーク。


 入学式の前に、一度寮の自室へと案内される。

 1学年300人以上いると言うのに全員個室だ。流石は貴族専用の学び舎。そもそも平民は学校に通えないらしいが。

 公爵家と侯爵家の子息令嬢の寮は、それ以下の爵位の家の生徒とは別で、どちらも男子寮と女子寮に分かれている。つまりは合計4つの寮があるという事になる。学年毎に階層が分かれていて、今年の1年生は1階だそうだ。王立学園は5年制なので、これから5年間この部屋の世話になる。

 そうそう、使用人は使用人専用の宿舎で寝泊まりする事になるそうだ。ちなみに使用人は圧倒的に女性が多いせいか男女別になっていないし、主の爵位は関係なく同じ建物で4人部屋だとか。流石に部屋は男女別々らしい。がんばれカミーユ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る