第10話 唯一クリスタルに到達した火球が叩き出した数字は011。
唯一クリスタルに到達した火球が叩き出した数字は011。この数字が高いのか低いのかは分からないけれど、どう見ても火球のはしょぼかった。が――
「お見事です。届かなかった方は一つ前の白線まで進み、もう一度魔法を放ってください。表示された数字-2が点数となります。届くまで前に出て頂きますが、その度に白線が1つ増える度に-2とさせて頂きます」
4人の子供が前に出て、先ほどと同じ火球の魔法を使う。今度は4人中2人の火球がクリスタルに届いた。数字は010と009。-2で008と007だ。
残りの2人も次の白線でクリスタルに当てることが出来た。数値は010と008。-4で006と004だ。
半数程度の試験が終わり、最高点は033点。最低点は-004点。使われた魔法は火、土、風の3種類のみ。火が7割、土が2割、風が1割と言った具合だ。
ここまで見て来て俺は非常に悩んでいた。
どう見ても弱すぎるのだ。何らかの理由で態と威力を抑えているのではないかと思う程に。俺も威力を抑えた方が良い気がしてきた。同調圧力に屈する様で何か癪だが、ここで最大威力の魔法を放つと後々面倒になる予感がしてならない。問題はどの程度抑えるかだ。狙った点数が出せれば良いのだが、そんな訓練はしていない。高すぎても低すぎても問題になりそうなので出来れば平均点015点前後がベスト。
大丈夫、まだ試験を受けてない子供は半分程度いる、よく観察して015点の子の魔法を真似るよう心がけよう。
次の5人の内、1人はキール君だった。
めっちゃこちらを睨んできている。うーん嫌われたものだ。
キール君が選んだのも火球の魔法だった。他の子どもたちが野球ボールぐらいの大きさの火球なのに対してキール君の火球はソフトボールぐらいのサイズ、つまり気持ち大きい。それを見た周りの子供が小さく感嘆の声を上げた。
キール君はコチラにドヤ顔をして見せてから、その火球をクリスタルに向けてはなった。火球は途中で霧散することなくクリスタルに届く。
点数は009点。最初にギリギリ届いた子供より点数が僅かに低い。
これに納得しなかったのがキール君だ。
「なんでだよ!明らかに俺様の火球の方が大きかっただろうが!!インチキだ!!」
声を荒げて抗議するキール君に、試験官が静かに首を振ってこたえる。
「魔法の威力は必ずしも大きさと比例するわけでは御座いません。小さくても良く魔力が練り込まれていれば威力は増すのです」
そうなのだ。単純に大きさで点数が決まるのならば俺がこんなに悩むことはない。ギリギリクリスタルに届いた火球よりほんの少しだけ大きくすれば良いのだ。
ただ、俺が普通に野球ボールぐらいの火球を作って放てば100点は越えてしまいそうな気がしている。自意識過剰であって欲しい。
まだ納得のいっていなさそうなキール君が憤慨しながらも列の後ろに戻って行く。
しばらくして、遂に俺の番が来てしまった。
まいった。全くどのくらい加減したら良いのか分からない。
「≪水球≫」
とりあえず、威力が出にくそうな水の球を作る。大きさは野球ボールより少し小さいぐらい。それを見て周りの子供がクスクスと笑い始める。
そういえば、水の魔法を放った子供はいなかったな。
威力が出にくい水球ならばある程度本気を出してもそこまで可笑しな数字は出ないだろうとの算段だ。
俺は半分ぐらいの力でクリスタルに向かって水球を放った。
水球は勢いよくクリスタルに飛んで行き、直撃した。
「「おおっ!」」
声を上げたのは試験官のみで、記録係と子供たちは静かだった。
水球が四散し、少し窪んだクリスタルが数値を表示した。
表示された数値は144。
あかーん!失敗した!!
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