第5話 「わ、わからん……」
「わ、わからん……」
父に買ってもらったゴーレム関連の書籍に目を通してみたが、残念な事にほとんど理解できなかった。魔道具の仕組みを理解するには魔法学と魔道具学の基礎があまりに出来ていなかったのである。
アーバン君は元々勉強が嫌いである。家庭教師の授業では美人な先生にセクハラするだけで授業などほとんど聞いていなかった。それを差し引いても7歳にはかなり難しい内容だと思われる。が、幸いアーバンは伯爵家の嫡男。勉強する機会には恵まれているのだ。これからどんどん覚えていけばよい。
「はい先生、質問です。同じ効果なのに複数の種類の魔法陣が存在するのはなぜですか?」
前世の記憶を取り戻してから初めての魔法の授業で、俺が質問すると家庭教師はポカンとしていた。
しまった、つい相手が先生なのでつい敬語をつかってしまった。
アーバン君は教えを乞う立場でも碌に敬語なぞ使えないクソガキだった。マナーの授業は8歳からでそういうのを覚えるのは8歳になってからでも良いと、両親に注意されたこともなかった。
「驚きました。まさかアーバン様から質問をいただくとは」
(あ、そっちか)
どうも家庭教師は俺の敬語では無く、真面目に授業を聞いていたことに驚いたらしい。ひょっとしたら両方かも。悪魔憑きとか言われてもこまるので、取りあえず敬語は止めよう。
「この前の誕生日に父さんからゴーレムを貰ってね。凄く気に入ったんだ。それでゴーレムに関する書物を取り寄せて貰ったんだけど、これが全然理解出来なくてさ。これからはちゃんと魔法の授業を受けようと思ったんだ」
「ゴーレム、ですか……」
家庭教師は微妙な表情を浮かべる。貴族令息に人気だと言ってもゴーレムは魔道具の中ではニッチな部類だ。まして大人の女性である家庭教師が興味を持つような物では無いのだ。
「何にせよ魔法に興味を持っていただけたのなら幸いです。魔道具の授業はまだ先ですが、出来るだけ早く魔道具の授業に移れるようにカリキュラムを組んでみますね」
「本当!?ありがとう先生!………それで、とっても聞きにくいんだけど……先生の名前って何だっけ?」
家庭教師は呆れかえった後に教えてくれた。
「改めまして、アーバン様の魔法の家庭教師を務めさせていただきます、オリビエと申します」
その日から魔法の授業を増やして貰った。今までは週2回、1日3時間だったのを、週4回、1日4時間に。
オリビエ先生に都合を聞いたところ収入が増えるので大歓迎だそうだ。
魔法の授業は面白かった。
まるでゲームやアニメの世界が目の前で繰り広げられるのだ。
手から火が、水が、風が現れ、地面から石の壁を生やし、植物の成長を急激に早めるなんて魔法もあった。
これらをゴーレムに組み込めたら面白そうだ。
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