第2話 「何だコレ?石で出来た人形?」


 「何だコレ?石で出来た人形?」


 木箱に入っていたのは高さ30cmぐらいの石製の人形だった。人形といっても目や鼻は無く、簡素な造りだ。胸部には赤い石がはめ込まれていて、鈍い光を放っている。


 「これはゴーレムですね。最近王都の貴族令息たちの間で流行していると聞いた事があります」


 何で王都の貴族男子本人は知らない情報をメイドがしっているだ?というか何で知らないんだ俺?ああ、同年代の令息との社交よりメイドの尻を優先していたからですね、すみません。そういうところだぞアーバン君。


 「ゴーレム?」


 「はい、簡単に言ってしまえば自律式の魔道具。つまり自動で動く人形だと思って頂ければ問題ありません」


 7歳児にも分かりやすいように気を使って言いなおすメイドをよそに、俺の眼はゴーレムに釘付けになっていた。


 自律する人型の魔道具、それはまるで―――


 「ねぇ、ゴーレムって全部こんな形なの?もっと人間に寄せたり、逆に足や手が4本だったりしない?サイズはどれぐらいまでの大きさが存在するの?家より大きなものもある?材質は?全部石?それとも金属の物もあるの?無いとして金属でも作れる?中はどうなってるの?魔道具が埋まってる?それともただの岩?それと――」


 「お、落ち着いて下さい坊っちゃん。そんなに一気に質問されても答えられません」


 「あ、ご、ごめん」


 しまった。ついオタクが出てしまった。そう言えば前世で会社の後輩の女性にロボットの話を聞かれて答えらドン引きさせれてしまったような記憶がある。そういうところだぞ前世君。


 「私が分かる範囲でお答えしますね。と言っても玩具とは言え魔道具ですから到底普通の平民が買えるような代物ではありませんからあまり詳しくはありませんが。まず形と大きさですが、ほぼすべてこの形でこの大きさだと思われます。多少バリエーションは有るかと存じますが。あくまで男児ようの玩具ですから、少なくとも家より大きな物を作ろうとは思わないでしょうし、技術的にも無理なはずです」


 「え~?そうかな、大きければカッコ良いと思うんだけどなぁ。技術的にっていううのは?」


 「ゴーレムを研究する魔道具師は多くないそうです。なんでもゴーレムは魔力効率が非常に悪い上に大した戦果も上げれない兵器で、ゴーレムを一体作るなら攻撃魔法を10発放てと言われていると聞いたことが有ります。一般的な兵器としてのゴーレムは人よりほんの少し大きいぐらいで、今の技術ではそれより大きなものは作れない……筈です」


 「なんだ!これより大きのあるんじゃん!それでも人より少し大きいぐらいか……」


 まぁ、それでも十分カッコ良い気がする。人が乗り込むのは無理そうだけど。


 「正確には有るでは無く、だと思います。兵器としてのゴーレムの研究は何十年も昔に凍結されているかと。そして当時の技術を再利用されて作られたのが玩具用ゴーレムです」


 「なるほど、つまりは今は存在しないけど、作ろうと思えば作れるって感じか」


 「はい。それと、手足が4本というのも聞いた事がありません。もしかしたら可能なのかも知れませんが……」


 「そっか」


 まぁ、それはついでだ。4腕や4脚も好きだが、あったら良いなぐらいなものだ。


 「中身は恐らく只の石だと思います。多分胸部にはめ込まれた魔道具で形を留めているのでそれを外せば手足などはバラバラに崩れ落ちると思います」


 「なるほど」


 ようは筋肉的なものは愚か間接すら碌に無いと。魔力がその両方の役割を果たしているのか?う~ん、魔法に関しては前世の知識が殆ど役に立たないのがもどかしい。


 「材質ですが、私の知る限りは石か岩だけですね。ただ知らないだけで他の素材の物がある可能性は十分あると思います」


 木製より石製の方が頑丈だから兵器とした場合は石の方が良いだろうけど、子供のおもちゃならば断然木の方が適している筈だ。それが石で出来ているのだから木でゴーレムは作れないのかもしれない。が、メイドの言う通り可能性はゼロじゃない、今度調べてみよう。


 「そうだ、後で父さんの書庫を――」


 「坊ちゃーん!治癒魔法が使える者を連れて参りましたぁ」


 メイドが廊下の向こう側から大声を上げながら走ってこっちに向かっている。

 メイドとして明らかにアウトだが、まぁ恐らく今回はお咎めは無しだろう。

緊急事態だし、なにより今回の事は内緒なのだから。

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