魔道具師ですがゴーレム以外興味はありません

@karisettei

第1話 夢を見た。


 夢を見た。


 それが前世の記憶だと何となくわかった。

 何処にでもいる平凡な男性サラリーマンだった俺は、ロボットが大好きで時間さえあればプラモを作ったり、ロボットアニメ鑑賞やロボットゲームに費やした。

 それ以外の記憶は朧気だ。名前すら思い出せない。死因や享年も分からないが、多分恋人や嫁はいない孤独な人生だったと思う。

 それでも、大好きなロボットに囲まれた人生はそれなりに幸せではあったような気がする。







 「……ゃん!坊っちゃん!!」


 誰かの声で目が覚める。


 「……痛っ!」


 頭が酷く痛い。


 そうだ思い出した。


 今日は俺。アーバン=グランシェルドの7歳の誕生日で、誕生日プレゼントの入った箱が頭に直撃して、それで多分気絶したんだ。

 

 アーバン=グランシェルドはグランシェルド伯爵家の嫡男で、遅くに生まれた子、それも男子であることから、それはもう甘やかされていた。とんでも無く甘やかされた結果、アーバン君(7歳)はとんでもないクソガキに育った。(自分の事だが)

 気に入らない使用人がいると折檻し、それでも気が済まなければ両親にいって解雇させた。

 そしてアーバン君(7歳)はとんでもないエロガキだった。男性は全て配置替え又は解雇し、自分の周りは好みの女性で固めた。

 現在は自分付きのメイド6人と女性の家庭教師2人に囲まれてハーレム生活を満喫しているようだ。本当に7歳か?アーバン君。


 頭に誕生日プレゼントの入った箱が直撃した原因も、幾つかのプレゼントを重ねて抱えていたメイドのお尻を触ったところ、メイドが驚いてプレゼントを落としてしまい、それが直撃したのだ。自業自得だぞアーバン君。


 「おお!お目覚めになられましたか、坊ちゃん!すぐに治癒魔法が使える者が来ますので、痛みはもう少しの辛抱です」


 俺を床に寝かしたまま、メイドがそう言って安堵の表情を浮かべる。

 ちなみにアーバン君はメイドの顔は覚えていても名前は憶えていない。顔と体にしか興味が無いようだ。最低だぞアーバン君。


 「それと、坊ちゃんに無体を働いたあのメイドは地下の折檻室に閉じ込めております。今すぐ仕置きをしたいでしょうが、治癒魔法を掛けるまではどうかこのまま安静にして下さい」


 折檻室は元々物置だった部屋を、アーバン君の指示で改装した部屋だ。

 鞭やら枷やらが置いてある。主に男性相手に使っていた部屋なのでここ最近は使われて無かった部屋だ。アーバン君が5歳ぐらいまで使っていた。5歳の振るう鞭とは言えかなり痛い筈である。ちなみに、貴族が使用人に折檻するのはこの世界では割と普通な事らしい。最低すぎるぞ貴族諸君。


 「いや、折檻とかは別に……」


 俺の言葉にメイドがギョッとした顔をした。

 しまった、余り性格や態度が急変すると、この世界では悪魔付きとかって騒がれる可能性があるんだった。しかし、前世の記憶が蘇ってしまった以上、今までの様には振舞えない。


 「えっと……折檻は飽きちゃったんだ。別の仕置きを考えておくよ。くくくく」


 咄嗟に出た適当な言い訳に、メイドの表情が困惑から恐怖に変わった。

 それにしても、俺の笑い声って悪役っぽいな。


 「か、畏まりました。それと、伯爵様と奥様にも連絡を取りたいのですが、何せ本日は建国記念のパーティで国中の伯爵以上の爵位の貴族が一堂に会す日。警備も厳重に行われているため、中々連絡が取れずに申し訳ございません」


 そう、溺愛する息子の誕生日に両親が屋敷にいない理由がそれだ。流石に国王主催のパーティに参加しない訳には行かないようだ。毎年ぶつぶつ文句を言いながら出席している。


 「気にしないよ。むしろメイドのお尻を触ったせいで事故って気を失ったなんて、恥ずかしいから内緒にしておいて欲しいんだけど?」


 報告されると親バカ両親がどんな行動をとるか分からないし。


 「し、しかし本日の出来事はどんな些細な事も報告する様にと旦那様が……」


 「連帯責任で君までお咎めがあるかもよ?」


 これは脅しだが、ただの脅しでは無い。実際にアーバンの両親ならやりかねないのだ。


 「そ、それは……」


 「解雇ならまだマシで、拷問とか、最悪、死……」


 「わ、分かりました!この事は他のメイドたちにもキツく口止めをしておきます!!」


 「うん、よろしくね」


 何度も頷くメイドに多少罪悪感を感じつつ、彼女から目を逸らすと床に散らばった誕生日プレゼントが目に映った。

 なんとなく俺の頭に直撃した箱が気になった。気を失う程の重量のある誕生日プレゼントの箱。中身は一体何だろうか?


 「ねぇ、ちょっとその箱を取って中身を確認してみてくれないか?」


 俺がメイドに頼むとメイドは直ぐに指示に従って箱を持ってくる。


 「私が開けてもかまわないのですか?」


 「うん」


 「かしこまりました」


 メイドは丁寧ね包み紙を剥がしていく。包み紙の中からは金縁で舗装された木箱が出て来た。


 「それでは、蓋を開けさせてもらいますね」


 メイドが徐に木箱の蓋を開ける。

 そこに入っていたのは――――


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