第4章 血族 第五話

マントさん「やっとみつけたのだ…やっと辿り着いたのだ…バレンタイン一族最後の血に!!貴様にバンパイアの王族としての誇りが欠片でもあるのなら!」


 魔族の裏切り者の血をバンパイア族の仇を前にマントさんの怒りは頂点へと達する。


マントさん「今直ぐに自らの意思で朽ちてみせよ!!!アスル・バレンタイン!!アスル・バレンタイン!!」

ヴィンス(!!)

クリス(!!)

パン(!!)

ローサ(!!)


ヴィンス「お前…今コイツの事をなんと呼んだ?…」

マントさん「アスル・バレンタイン!」

ヴィンス「だよ…な……お前の名は?」

パン「パンダ・コパンダ!」

ヴィンス「クリス…」

クリス「俺を巻込むな!…」

ヴィンス「お前の名は?」

ローサ「ローサ・フルニエ!」


ヴィンス「バンパイア王の忘れ形見の名は?」

マントさん「アスル・バレンタインだ!」

ヴィンス「お前の名は?」

パン「パンダ・コパンダだ!」

ヴィンス「クリス…」

クリス「だから俺を巻込むな!」

ヴィンス「お前の名は?」

ローサ「ローサ・フルニエだ!」


ヴィンス「バレンタイン一族最後の生き残りの名は?」

マントさん「何度も言わせるな!アスル・バレンタインと言っておろうが!!」

ヴィンス「最後に聞く!お前の名は?」

ローサ「何度も言わせるな!ローサ・フルニエと言っておろうが!!アスルの様に小っパイではない!アハハハ」


マントさん「…………!なっ!なにぃぃぃぃ〜!!」

 

 説明しよう!魔族は人族に比べ全般的に能力は高く物理・知的共に一騎討ちなら通常負けることは無い、だが!魔族と言えどもウッカリもするし間違ったり魔が差したりもするのである!!調査段階での確認ミスなのであ〜る!!


ベルハルド「待ってくだされ〜!クリス殿〜!待ってくだされ〜!!」


 迎賓館よりベルハルドがクリスを追って来たのだである。


ベルハルド「ぜぇ…ぜぇ…皆さんご無事ですか!」

クリス「ベルハルド陛下この様な場所に…不用心ではありませんか?」

ベルハルド「すいません…ですがお待ち下さい!」


 駆けつけたベルハルドは流れ落ちる汗を拭いながら呼吸を整え、一息つくとマントさんに向かって指を差し大声で叫んだ。


ベルハルド「オリビア・キャンベル!先ずはマントを取って顔を見せなさい!!」

マントさん「わ…私の名はオリビアなどでは…」

ベルハルド「アーノが間違いないと言ってます!」


 ベルハルドの傍らにアーノがいた、アーノは魔族領逃亡生活時代からオリビアに付き従っていた古参者故に例え首から上が無くとも血の匂いで嗅ぎ分けられるのだ。


ベルハルド「そして皆様には大変ご迷惑をお掛けしました…如何なる謝罪・賠償も厭いません!どうかこの場は私に免じて一旦収めて頂きたい!」


 此の世界に土下座はない、だがベルハルドは一国の王のとしては異例と言うべき程に頭を下げ此の場にいる全ての者に許しを請うのだった。


オリビア「へ…陛下!おやめ下さい!これは私個人の…」 

ベルハルド「馬鹿者!!話しはアーノから聴きました、しかし今のソナタはコールスの民であり騎士である!そして何より私の大事な友であり家族である!これ以上の狼藉は私の生命に変えても許しません!」

オリビア「………陛下…」


 ベルハルドはオリビアを叱るがまだ尚クリス達に頭を下げ続けていた。


ヴィンス「陛下…我々はオリビア殿に稽古をつけてもらっていただけですから」

ベルハルド「ヴィンス殿…」

クリス「ヴィーそれは駄目だ!…陛下、今後一切イリスの者に手を出さないとその女に誓わせて下さい」

オリビア「そんな話がのめるか!」

クリス「オリビア・キャンベル貴様が聞くに堪えない過去を背負っているのは理解した、だが自らの出生すら知らない者に全てを押し付けるのは論外だ」

ベルハルド「オリビア…私もクリス殿の言う事は最もだと思う、すべてを水に流すなど出来ないのかもしれない…だがオリビアがその努力をしてくれると言うのなら私は私の全力を持って君の支えとなろう!…どうだい?オリビア…」

 

 オリビアは嗚咽を堪えていた、辛い過去・散っていった友の顔・今尚苦楽をともにしてくれる同胞達の笑顔・支えてくれるコールスの人達、そして自分達バンパイアの全てを優しく包んでくれるベルハルド、喜怒哀楽全ての感情が心の奥底から溢れ出す。


オリビア「……ゴメンナサイ…」

ベルハルド「よく言えましたね、オリビア…」


 ベルハルドはオリビアにそっと近づくと右手をオリビアの頭にのせた、オリビアは堰をきったように涙を流し号泣した、その涙は薄暗い地下牢で決心した日より胸の中に溜まっていたすべてを洗い流すかのようだった。



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