第3章 ふたりのTURNING POINT 第11話
アルホース「伯父貴……やっぱり気になるのかい?あの娘の事が…」
アレク皇帝「…………!」
齢40を越えたとは言え魔王を討ち滅ぼした元勇者の殺気とも取れる闘気には流石のアルホースも緊張せざる終えなかった。
※※※
時は少し遡る、ベクターを打ち負かした混合チームはアルホース達の行きつけの酒場で打ち上げ会と洒落込んでいた。
アスル「嘘でしょ!エリクサーってそんなに高いの?!」
ラヴ「アンタ知らなかったの?そりゃどんな怪我や病気も治してくれるんだからべら棒な値段でも欲しがる人は後を絶たないわよ♡」
アスル「でもでも!こんな時なんだからお前に免じて!みたいな事にならないの?!」
レディ「うるさい娘だねぇ金貨40枚位でぇ……希少な薬が御値打ち価格じゃないかいぃ」
宴の場でベクター討伐の話に華が咲きヴィンスを助ける為のエリクサーの話題がでた、アルホース曰く『貸しだからな!』と言う事でエリクサー代をどの様に支払うかで盛り上がっているのだ。
アスル「金貨40枚ってアタシの1年分のお給料なんですけど!!」
アルホース「あ〜アスル嬢ちゃんには悪いけど、アレ借り物だからさ〜……ホント悪いな分割で良いから…」
アスル「ラヴさ〜ん!助けてお願い!」
ラヴ「自分の借りは自分で返す!これ我が隊の鉄則よ!」
アスル「そんなぁ〜……」
アルホースからすればエリクサー代の金貨等はどうでも良かった、偶然とは言え始まったヴィンス隊との関係を終わらせない為に手段を選ばなかっただけである。
アスル「こうなったらエリクサー分飲み食いしてやる!」
ローサ「アスルよく言った!今日はアルさんの奢りなんだから!ジャンジャン呑もう!」
アスル「よ〜し!メニューの端から端までジャンッジャンもってこ〜い!」
アスルは血の足りなくなった怪盗の孫の様に飲み込むのも忘れるくらいに頬張りホッペをハムスターの様に膨らませていた。
ローサ「アルさん!私にもっと剣の極意を伝授してくださいよぉ!自分だけ強いなんてズルいですよぉ、」
酔ったローサがアルホースに絡み酒である。
アルホース「俺は良いけどさ……そうだ何ならローサ嬢ちゃん!ムーアに来ないか!嬢ちゃんなら歓迎するぜ」
ラヴ「うちの娘に汚い手を出すんじゃないわよ!」
ローサ「う〜ん…やっぱ私はアスルが居ないと駄目な子だから無理で〜す!」
ローサは必死に食べ続けるアスルの頭を抱くと髪にキスをしながら笑っている。
アスル「ローサ駄目よ!この人は誰にでもそういう事言うんだから!それよりエールと蒸し豆まだぁ!」
アルホース「やれやれどれだけ食べれば気が済むのやら…それだけ食べれば大きくなりそうなもんだけどな!そのムネッ『ドンッ』」
アスルの容赦の無い渾身の一撃がアルホースのあの部分に炸裂し酒場の空気が一瞬で凍った。
アルホース・シュタイナーは後に自伝記でこう語っている『其れまで何千何万と出会った敵の時間を停めて葬ってきた俺が、相手に時間を停められたのは後にも先にもその一回だけだ……』と。
レディ「どいつもこいつも馬鹿だねえぇ」
あの部分に大きなダメージを負ったアルホースは夜風にあたるべくフラフラとバルコニーへ向かった。
アルホース「なんだ兄貴!こんな所で酔い覚ましかい?」
ヴィンス「アンタ等には感謝している、だがアンタ等と馴れ合いたくないだけさ…
アルホース「ほぉ〜……じゃあ馴れ合わないついでにひとつ聞いても良いかい?」
アルホース「アンタ等イリスはローサ嬢ちゃんをどうするつもりなのか!」
先程までとは打って変わりアルホースの周りの空気が張りつめた、ベクターとの戦いの
ヴィンス「…何のことだ…」
アルホース「おいおい俺をガッカリさせないでくれ!愛剣ローズウッド・燃えるように紅い髪・そして仄かに香る薔薇の香り……
ヴィンス「その時は俺達が命をかけて守ってみせる」
二人はフェンスにもたれ掛かっていて目を合わしている訳でもない、だがお互いに口にする言葉が本物である事を理解していた。
ヴィンス「それにローサには一般人として幸せになって欲しいと国王は願っている」
アルホース「……成る程、それが判って良かったよ!安心しな俺もローサ嬢ちゃんには幸せになって欲しいと願うひとりだから!」
アルホースがニカッと笑うと張りつめていた空気は夜風に流されていったかのように穏やかに変わる。
アルホース「よし兄貴!今日は朝まで呑むぞ!」
ヴィンス「だから俺は馴れ合わないと言っている!」
ローサ「隊長達!まだまだ呑みますよ!こっちこっち!」
祝勝の宴はアルホースの宣言通り日が昇り始めるまで続きヴィンス達は酒場のアチラコチラで寝落ちしていた。
食べ過ぎで気分が悪くなりヴィンス隊の内でアスルが1番に目を覚ましたがその時には既にアルホース隊の姿は無かった。
※※※
アレク皇帝「……あの娘が……これでアイツにも……」
アルホース「イリス国王も嬢ちゃんは平民として見守ると明言しているらしい、良い
アレク皇帝「…よかろうあの娘の事はチャールズに任せよう、だが警戒は怠るな!解っているな…」
アルホース「…………」
皇帝アレクは話が終わると暫くひとりで執務室に籠もっていたと言う。
ローサの過去に何があったのか、チャールズとアレキサンドロスの間には?そしてローサを交えた3人の因果関係と皇帝アレクが言う『アイツ』とは…。
第3章 完
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