第3章 ふたりのTURNING POINT 第十話
アルホース「な!太刀が溶かされている!」
ベクター「体を覆う粘液は攻撃を防ぐと同時にその武器を溶かしてくれる!合理主義な私にピッタリだろう!」
ベクターは相手の攻撃が通らないのを良い事に前脚と尻尾を振り回し二つの頭からはスプリンクラーの様に毒液を撒き散らしていた。
そんな中でもアルホースだけは毒液を躱しつつ牽制するが太刀は既に使い物にならず只の鉄の棒と化している。
ラヴ「ぐぬぬっ!アタシの鉄小手までブニョブニョじゃないさ!」
アンフィスバエナ(以下アンフィス)「どうした!戦闘経験の乏しい私などに手こずるとは暗部と言っても高が知れると言うものですぞ!」
ラヴ「粘液に隙間が出来ても水が戻る様に直ぐに閉じてしまう、これじゃあ本体にダメージが与えられないじゃないのよ!」
突破口の見つからない混合チームは既に満身創痍だった、毒液を避けるのにいたずらにスタミナを消費し手持ちの武具もボロボロ、ラヴ等は落ちている瓦礫で叩く始末である。
白蛇「ジリ貧で御座いますな……」
レディ「何でぇお前さんが此処に居るんだぁ」
遠巻きに戦況をみつめるレディの背後から白蛇が話しかけた。
白蛇「よく言います、
レディ「邪魔するなら今回は容赦しないよぉ」
其処には牢獄の前でレディに討ち倒された筈の白蛇が居た、レディからすれば白蛇如きはいつでも亡きものにできるのだがやはり美しいと認めた者は手に掛けたく無かったようである。
白蛇「毒蛇に毒攻めとは恐れ入りました、毒同士が反応して新たな毒で失神してしまいましたよ……」
レディ「反応して……お前さん私に貸しでも作りに来たのかいよぉ……」
白蛇「
レディ「アルホース!!」
白蛇と話し終えたレディがアルホースを呼びつけるがその間にもアンフィスの容赦無い攻撃が混合チームを追い詰めていた。
レディ「……ただ私の毒も限りがある!あのデカブツ全身は無理だし攻撃が通るのもコンマ数秒だろう……」
メアリー「待ってください!私に考えが有ります…………」
ロキシーからポーションを渡され回復に専念しながら戦況を見極めていたメアリー・ジョンがレディとアルホースの話に割って入ってきた。
レディ「ホォ面白いねぇ、只のお荷物かと思ったら……」
メアリー「私も部隊長ですから!やられっぱなしでは国に帰れません!」
アルホース「よし!その案に賭けるしかない、合図は俺が出す!」
そう言うとアルホースは降り注ぐ毒液を避けながらチーム全員に耳打ちをしてまわった。
アンフィス「何かを企んでいるようですが、満身創痍の貴方達にいったい何が出来ましょうか?喰らいなさい!
アンフィスは上半身を大きく上へと立ち上げ竜頭の口を上へと向ける、腹が膨らみ巨大な何かを吐き出そうとしているのだ。
アルホース「今だ!」
アルホースの合図にチームが反応する、個々の力では敵わなくとも(力を)合わせれば(願いは)
ビレイ「結界!」
メアリー「サンドストーム!」
レディ「ワイルドバラエティ!」
アンフィスとチームメンバーをビレイの結界の中に閉じ込める。
メアリーのサンドストームで粘液に砂を含ませ粘度を上げる。
そしてレディのワイルドバラエティで粘液の毒とレディの毒が干渉しあい別の毒へと変化する、ただレディの毒容量にも限りがある。
レディ「だからぁ!狙いはそこだよぉ!」
ラヴは呼吸を整え終わっていた、ここまでの若人達の頑張りを無にする事は出来ない、眼前には空を向き今にも何かを吐き出さんとするアンフィスの胸の核がみえる!
ラヴ「無双流・
レディのワイルドバラエティによってアンフィスの核の周りの粘液だけが只の猛毒へと化学変化させられていたのである、そこへラヴの技お弾き(一点に力を集中させる技とは真逆で点から四方八方へ力を爆散させる技である)が粘液を爆散させる、粘度の上がった粘液は隙間を閉じようとするが先程までとは違い素早く閉じる事が出来ないようだった。
真っ白のキャンパスに黒い線だけの景色、その中で
アルホース「ベクターお前の敗因はな……メアリーを生かしておいた事、メアリーに気を取られロキシーを見逃していた事、アスルの存在に気付き逃げる選択を捨てた事、アンフィスの能力に溺れ油断した事、言い出せばきりが無いくらい出てくるが……何よりの敗因は俺達がチームになった事だ…」
アルホースはアンフィスの核がみえる正面に立ち鉄の棒と化した愛刀を鞘に収めて気をためる。
アルホース「お前さんさっき『私はホトホト運が良い』て言ってたよな!訂正しておいてやる、ホトホトの後に続くのは『今日のお前はホトホト運に見放されていた』だってな!」
白一色の世界が終わり周りの人達に色が付き始めると次第に歓声が沸きはじめた。
アルホース以外にはラヴの技からあっと言う間にアンフィスが霧散したのだから。
レディ「お前のヒントのお陰だよぉ」
白蛇「これで貸し借りは無しと言う事で」
レディ「借りを返したところで今後はどうするんだいぃ」
白蛇「そうですね…貴女様の眷属にでもして頂きましょうか」
レディ「…フンッ私より年寄のくせに……勝手にしな」
白蛇は無事にレディの眷属と認められた。
アルホースとラヴはどちらがとどめを刺したかで言い合い、その間でローサが笑いながら二人をなだめている。
メアリーはパンに背負われたロキシーに飛びつき、バランスを崩すパンをビレイが必死に支えていた。
ヴィンス「終わったのか…みんな無事か…」
アスル「安心して!ベクターは霧散したみたい、皆が力を合わせて倒してくれたのよ」
ヴィンス「良かった…すまん…眠ってしまいそうだ…」
アスル「ちょっと!アタシの膝はお高いんですからね……て(寝てんじゃん)………ヴィンス…今日だけだからね…」
ノーマン・ベクターは混合チームの結束の前に敗れた。
メンバーは戦いの傷を癒し其々の帰路につく。
※※※
ムーア帝国・帝都アレキサンドロス、魔族戦争時には魔王城(現在は改修されている)が有りその殆どが魔王の死と共に崩壊した魔族軍の元本拠地である、その皇帝執務室には皇帝アレキサンドロスとアルホースが居た。
アルホース「以上で報告を終わります……」
アレク皇帝「…おいアルよ!ベクターの事等どうでも良いと言っておろう!なんの為に人払いをしてると思う!」
アルホース「伯父貴……やっぱり気になるのかい?あの娘の事が…」
アレク皇帝「…………!」
齢40を越えたとは言え魔王を討ち滅ぼした元勇者の殺気とも取れる闘気には流石のアルホースも緊張せざる終えなかった。
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