第七話 秘めし能力
「俺、魔法とか能力とか使えんのか?」
「この世界に来たってことは、そりゃあ結構大きめのものを使えると思うぞ」
大きめのものかぁ。まあ異世界から来たんだし、異世界人特有の特別な技とか使えるのかな?本当に使えるとしたならだいぶ助かる。剣だけじゃ遠距離攻撃ができないし、魔法を使ってくる魔物は対処に困る。やっぱり、使えるとしたなら爆破とか炎とか攻撃的なのが理想だな。
「だがな、この約2年間半で何も変化が無かったのはおかしい。俺も色々なところに目を凝らし、あらゆる霧斗の能力を予測したが変化はない。普通、1年間も魔物と戦い続ければとっさに能力が発動しているはず」
も、もしかして、俺に魔法は使えない?
憧れであり、頼りの綱だったのにぃ。
「となると爆破とか炎とか、発現魔法ではなさそうだな。本や武器はお前の周りにいっぱいあったのに変化がなかったから、物体を移動させたりする、念動力的な操作魔法ではないことも確か」
どんどん選択肢が減っていくが大丈夫だろうか。
でもよく考えてみれば、普通の男子高校生が、転移してきただけで魔法使いになる!なんて良い話ないよな……
「となるとも残るは変化魔法かもな。物体を何かに変化させる。戦闘系に向いている能力じゃないのが多い魔法だな」
え?
もしかしてまだ希望はある⁉
結構使える能力を期待してたのだが、この際使えれば何でもいい。
「で、どうやって何の能力かを確かめるんだ?」
「リスクは高いが、発動の石を使う」
「発動の石?」
「発動の石っていうのは本来生まれたばかりの神や悪魔の能力を調べるために使うものだが、 まあお前も使えるだろ。発動の石を使うと使ったお前の能力が勝手に発動しだす。かなりリスクはあるが、これしかない」
「なんでリスクがあるの?」
「お前の能力が強すぎたら最悪自爆することになるからな。もしかすると、俺まで被害が及ぶことになる。つまり、俺の判断次第でこれからの修行を全て棒に振ることになし、お前を失うことになる。まあ変化魔法ならそこまで危険じゃないけどな」
最初は軽いノリでその石を使う気満々だったけど、最悪自爆⁉冗談だろ。
まあ、確かにルシファーが使ってたみたいな能力だった時、あの雷みたいなのが自分に直撃するかもしれない。だからといって、手段は選んでられない。
「ガネーシャ、俺にその発動の石を当ててくれ」
「分かった。これだけ言っておく、魔法を使えたなら使えるという意識がある。だがまだ、制御はできないからな。もしかしたら暴走する可能性もある。そうなったら体から魔力をとにかく放出させろ」
「分かった」
俺がそう言うとガネーシャはポケットからエメラルドのように綺麗な緑色の滑らかそうな石を出し、俺のほうに向け、
「発動」
ガネーシャが呪文みたいなのを唱え始めた。その瞬間石が光りだして、ガネーシャのポケットからもう一つの謎の石が出てきて、俺のほうへ近づいてきた。
「待て!それはヴァーユの魂の石!。だがここで止めるのは……」
ガネーシュは焦っている。
____ヴァーユって確か俺がいた国の神だよな。
魂の石ってなんなんだ?
でもヴァーユの何かをガネーシャが持っていたということか。
ヴァーユの石が俺の手のところまで来ると、魂の石の動きが止まった。
え、これだけ?俺の能力って、自分の近くに物を移動させるだけ?なんかショボすぎない????
そう思っていたら、石の形が粘土みたいに変形し、カマっぽい形へとだんだんと変化している。
すると、さっきまで魂の石だったのに、綺麗な宝石がたくさん埋め込まれていて、全体が銀色に光っている豪華なカマへと変化した。
「分かったぞ。お前の能力は魂の石を武器に変化させる能力だ。多分このカマを使えばヴァーユの能力である風魔法が使えるぞ」
「その魂の石って何なんだ?」
「神っていうのは死ぬと魂の石っていう石になっちまうんだよ。でも危害もないし普通の石ころだ」
まじで?それっていつかは、全ての神の能力を使えるってこと?
チート級魔法じゃね?このスキルがあったら悪魔に無双できるんじゃね?
やっぱり俺って才能有りしものだったんだな。
「魂の石を変形させるってことは、悪魔の魂の石の変形させれるかもな」
カマの長さは悪魔と同じくらいあり、刃も大きく鋭くとがっていた。なんといっても、刃が光輝いているところと、黄色のロープが巻いてあるところが何というか、中二心をくすぐった。
「「ガオォォォ」」
俺が魔法の余韻に浸っているところに、ブルドーザーみたいな騒音を立てて近づいてきたのはスナドラだ。多分トラみたいだからスナドラだろう。もうスナ〇〇はこれで、コンプリートしたと思う。
俺はいつも通り剣を取り出し、倒そうとした。だが、ガネーシャが止めた。
「どうせならそのカマでやってみたら?」
「ナイス提案」
俺は意気揚々と襲い掛かってくるスナドラに向かってカマを振り落とした。カマを振り落とすと同時に緑色の空気?みたいなのが周りに出現した。
バシュッ
___驚いた。
こんなにあっさりと……っていうか強すぎて地面も一緒に切れてしまった。
今まで散々俺をボロボロにしてきた魔物だが、それが全て嘘のように、スナドラは俺の目の前で切れていた。さすがに強すぎなんじゃ......
カマは自分と同じくらいの大きさなのに全く重さがない。魔物も気づいたら切れていたほどの切れ味だ。
だが、何故か力が抜けて、
バタンッ
「なん…で……力が…入らない........」
俺は地面に倒れこんでしまった。
「ああ、言い忘れていたが、それは魔力切れってやつだな。お前の魔力が少なくなりすぎた。というか元々の魔力が少なかったんだな。カマを召喚して使っただけで魔力切れとは、霧斗もだいぶまだまだなようだな。もっと修行をしないとな。たとえチートスキルを習得したとしてもそれを扱えるようになんないと使えねえからな」
そうか。つまり、魔力量というものを上げれば、ぶっ倒れないで済むわけね。
ところで、地面ってこんあに温かかったっけ?何か、もうずっとこの状態でも良い気が…
ズズズ
ん?何だ?
俺の体が宙に浮いた⁉
ガネーシャだ。俺を担いで丸太の家に向かっている。
取り合えず、魔力を多くしなきゃな。
◇◆◇
次の日___
俺は魔力も回復してすっかり元気になった。
でも昨日の魔力切れでだいぶ自分の弱さを感じた。というか実感した。
もう、自分の弱さなんて思い知らされていたはずだったのに……。
そんなことを思いつつ、家の扉を開け、あたり一面の緑がある森に行き修行を始めた。ガネーシャも後から来た。俺も魔力量を増やすためにもっと修行しないとな。
すると、上空で何やら声がする。
「「「キィィィィィ。キキキキキ。キガー!!!」」」
その姿を見て、一気に目が覚めた。
大きな黒い羽を広げ、空の真っ青な色とは対照な漆黒を帯びて、不気味な笑みを浮かべている。ヴァーユの国の戦争であった時の悪魔のことを思い出す。
「お前は、下級悪魔か?!」
下級悪魔⁉大丈夫なのか?
でもそっかぁ。下級悪魔一体と神一体は神のほうが圧倒的に強いのか。
よし、ガネーシャなら勝てそうだ。
「よし霧斗、お前がやれ。悪魔は心臓部分と憎帽筋あたりだ!!」
「……応!!」
え?ガネーシャさんが戦うんじゃないんですか!?っていうか憎帽筋ってどこだよ!
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