第四話 秘密の修行Ⅰ

神であるガネーシャと手を組んだ俺はガネーシャとともにある場所へ向かっていた。




「着いたぞ。秘密の修行場、エリースに」




 ガネーシャに指を指され、顔を上げてみると目の前には自然が溢れていた。


 川が流れ、草が生い茂り、甘い果実のにおいもして、まさにジャングル。


 さっきの殺風景な砂漠とは別の世界のようだ。




「え?俺、修行するの?」




「ああ。だってこの前自分で復讐するとか言ってただろ」




 まあ、やっぱり復讐するには強くならなきゃだもんな。




「ここでは3つの修行をしてもらう」




 砂漠から退いて、一刻でも早くジャングルに飛び込みたい俺をガネーシャは止めて、説明を始めた。




「1つ目は基礎体力と身体能力の向上。体力と身体能力がなかったらなにもできないからな。2つ目は剣術の向上。3つ目はお前の固有スキルの引き出しだ。この中へ入ったら、霧斗は素質があるから5年もすれば、お前は少なくとも一般悪魔とはためをはれるぐらいに強くなっている。逆に言えば5年間ここから出られないという事だな」




 5年だと!?いやいや、聞いてないって。


 せっかくオアシスのように素敵な場所でゆったりできると思ったのにぃぃ!!




 でも、それさえ乗り切れば上級悪魔から身を守れるようになっているのか…...少し希望が持ててきた。




「よろしくお願いしまーす!」




 俺はそう告げると、ガネーシャと共に早々と森林に入っていった。


 そして、そのまま突き進む…つもりだった。正直、出鼻をくじかれた。


 俺の前にはさっきのスナイノシシと同じくらいの大きさのワニ?みたいなのが立ちはだかっていた。




「ちなみにこのワニみたいなのはなんていうんだ?」




「こいつはスナクロコダイルだ」




 あ、まんまだ。




「この剣でも使え!」




 そういうとガネーシャは俺に長剣を投げ渡してくれた。


 まじで?


 本気で戦えっていってる?


 戦闘経験0の俺が?


 ガネーシャは助けてくれる気……0だな。




 ___やるしかない。




 俺は覚悟を決めると、自分の運動神経を生かして、すごい勢いで木に飛びついた。


 そのまま木から木へ飛び移っていった。




 なんか体が軽くなってる?


 異世界に行くと運動神経までも変わってしまうのか。それとも俺の才能か?まあそれは良いとして......




 地上にいるスナクロコダイルは、木から木に飛び移る俺をもちろん攻撃できない。


 しかも、狭い場所で身動きがとれなさそうにしている。




 そんな事を繰り返していると、そのうちスナクロコダイルは俺の姿を見失った。


 多分、開けた場所だったらだいぶ危なかった。


 俺は待ってましたとばかりに木から飛び降り、俺を完全に見失ったスナクロコダイルにあらかじめガネーシュからもらっていた長剣を上から突き刺した。




 しかし、スナクロコダイルは暴れまわる。




 え?まじ?一撃で倒せないの!?ちょっと暴れるなって!


 俺は予想してなかった行動に対処できず、そのまま吹き飛ばされた。




「バコン!」




 木に強く叩きつけられたが、骨折ほどの怪我ではなさそうだ。




「痛ってぇ」




 だが、俺がひるんでいる間にスナクロコダイルは襲いかかってくる。




 ここで死ぬのでは?と焦ったが、すぐに気持ちを整理させ、落ち着いてガネーシャからもらった長剣で、さっき刺した傷口に追い打ちをかけるように秘密基地に置いてあったフルーツナイフを投げつけた。


 いやー、虫が出てきた時の為に持ってたけど、持ってきてて良かった〜。




 そのナイフは見事にスナクロコダイルの傷口に命中し、スナクロコダイルの動きがひるんだところでもう一度、長剣で傷口を刺した。するとスナクロコダイルは動かなくなった。


 討伐することに成功したのだ。




 今自分に言う。


 よくやった俺、頑張った俺。




「よくやった。まあ、お前は何の覚悟もなしにこの世界に来たわけじゃないって俺は信じてたぜ」




「応!!」




「とりあえずそろそろ日が暮れる。唯一魔物が近寄れない建物がある。寝るときはいつもそこだ。流石に睡眠と食事は取らせる」




「ああ、分かった。っていうか良かった。そんな場所があって」




 俺たちは川に囲まれている、丸太でできた居心地よさげな家へ行った。テレビやゲーム機などの娯楽はないが、椅子やテーブル、ベッドなどの日常に欠かせない用品はそろっていた。


 夜はちゃんと寝かせてくれるようだ。


 こんな魔物が出る場所で落ち着いて寝れるかどうかは置いといて。




「なんだ?眠れないのか?睡眠はとったほうがいいぜ。もしかして、腹を壊してんのか?」




 ベッドの横で窓から外を眺めていた俺の横に座って、そう言ってきた。




 今日の晩飯は、俺が倒したスナクロコダイルだった。


 ガネーシャが格好よく料理を始めた時は、こいつイケメンで料理もできるのか!ってなったけど、味を確かめたときに、ちょっと腹を壊した。見栄えだけの料理を食った俺はさっきまで下痢が止まらなかった。しかし、妙に親近感があった。




 別にそんなに不味くはないが、特別美味いわけでもなかった。まあそもそもスナクロコダイルが美味しくないって可能性やガネーシャの料理が見栄えだけという可能性も否めなくないが......




「違う。___夜寝ようとするとどうしても蓮のことを思い出してしまう」




「無理はない。俺が子守歌でも…」




「だが断る! ___なあ、聞きたいことがあるんだけどさ、俺はまだこの世界についていまいち分からないんだ。カーネリアンって何なんだ?エクストラ魔法っていうのも分からねえ。なあ、教えてくれよ」




「仕方ねえなぁ」




 ガネーシャはため息をついた後、座る体勢を変えて説明し始めた。






「この世界には現在8人の神と11体の最上級悪魔が存在している。そいつらはそれぞれ固有スキルというみんなが違う能力を持っている。人間も修行をしたら固有スキルを獲得できる。エクストラ魔法っていうのは神や悪魔にとっての奥義みたいなもんだ」




 つまり、蓮は悪魔の奥義をくらったのか…思い出すのはやめよう。




「しかしこんなすごい能力をもっていてもさらなる高みを目指そうとしている悪魔たちがいる。そいつらはカーネリアンっていう石を使って、強くなろうとしている。カーネリアンに自身の固有スキルをあてることで究極進化と言ってとてつもなく強くなれるんだよ」




 そんなアイテムがあるのか。そりゃあ悪魔も手を出すわけだ。




「あと、せっかくだし悪魔の等級についても教えてやるよ。この世界には低級悪魔、一般悪魔、上級悪魔、最上級悪魔の四つの級に分けられる。お前は低級悪魔までなら勝てる可能性はあるが、一般悪魔、上級悪魔と最上級悪魔にはまだ勝てない。もし最上級悪魔に出会ったら真っ先に逃げろ」




 ほお……この世界についてだいぶわかってきた気がする。でも分かる度、この世界の危険性も実感してくる。


 しかし、俺の中で一つの疑問が生まれた。




「じゃあなんでお前とかほかの神たちはカーネリアンを使わないんだよ」




「カーネリアンを使ったら究極進化はできるが、寿命が減っちまうんだよ」




 だからみんな使わないのか。


 納得いったわ。




「じゃあ今カーネリアンはどこにあるの?」




「現在、カーネリアンは時空神クロノスっていう奴が所持している。そいつは他の神よりもかなり強いから信用できる」




「へぇ~。じゃ、聞きたいことは聞いたしもう寝るか」




「まったく、良いこと教えてやったのに、お礼もないのかよ。あきれたやつだぜ。まあ明日も付き合ってやるか」




 俺はガネーシャと話したおかげで、気持ちが和らいだのか、思っていたより早く眠りにつくことができた。


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