第三話 新たな神ガネーシャ!!

 結局俺がいた国は悪魔が2229体倒され、ヴァーユ、そしてかけつけた神、合わせて22人がやられたという。




 ルシファーは、俺が転移したことを知り、撤退したそうだ。




 今はヴァーユの国の復興に力を入れていて、いろいろな国から神が集まってきているという。


 そんな情報だけが、1枚の手紙で送られてきた。


 文字はしっかりと日本語だ。


 綺麗な字で書かれている。


 差出人不明は、___ガネーシャ…?と書かれている。




 俺は転送された砂漠で、1枚の手紙を握り締め、目的もなく泣きながら彷徨い続けた。


 砂漠なのに暑くはなかった。


 もしかしたら悲しみで暑さすら忘れたのかも…。




「あんな強そうな神ですら22人もやられるなんて。神は残り8人。こんな世界で俺は、生きていけるのかな__蓮…」




 っていうか、手紙を出すって事は俺の居場所を知ってるってことだよな…。


 とうとう見捨てられたか…。




 果たして蓮を失ってしまった俺は、こんな世界で復讐どころか生き延びることができるのだろうか。


 今にでも叫び出したい、と思ってると急に隣から声がした。




「お気の毒にな。遺体すらなかったらしいぞ。まあ、ルシファーのエクストラ魔法をくらったんじゃあそうなるにきまってるか」




 俺の横にすっと現れたのは、体格がよく金髪で剣を背中にしょっている若い男だった。




 気配すら感じなかった。




 感覚でわかる。




 ___こいつは強い。




 ヴァーユよりも強い感覚がある。




「お前は誰だ?」




 俺は怒りで気が立っているからか、初対面のやつだが睨んで話しかけた。




「まあまあ、そんなに警戒するなよ。俺は福の神のガネーシャだ。お前の護衛を任された。お前は今、悪魔たちに狙われてるんだから」




 神?後8人しかいない神が俺の護衛?俺を見つけ出したのか?


 っていうかガネーシャって手紙の差出人…。




「お前、復讐したいと思ってるだろ」




 奴は俺の目を見て唐突にそう訊いてきた。




「ああ」




「俺もだ。俺の大切なもの全て、奴らに奪われた。許せねえ。あんた、俺と悪魔をこの世から消滅させるっていう目標をもとに協力しねえか?あんた、名前は?」




 まだあまり信用はしていないが、ガネーシャとやらの目は、確かに怒りや復讐に近いようだった。それに、このまま一人ってのも危ない。ここは素直に協力しといた方が良さそうだな。




「津狩霧斗だ」




 ザザザア




 すると、砂漠の砂の中から何かが10匹くらい現れた。


 雰囲気的に悪魔ではなさそう。




 魔物か何かか?




 見た目は、目は紫色で3つある。


 牙が特徴的な大きいイノシシみたいだ。




「ありゃあスナイノシシ達だ」




 あ、まんまだ。


 っていうかスナイノシシって俺がこの前食ってたやつか。まさか、こんな化け物を食っていたなんて信じられないな。




「俺はまだお前を信用してねえ。神ってことを証明して見せてくれ」




「任せろ。スキルを使わなくてもこんな雑魚 一発だ」




 そう言ったとき、既にガネーシャは俺の横にはいなくて、スナイノシシに向かって剣を振り下ろしていた。




 バシュッ




 気づくとスナイノシシはぶっ倒れていた。


 ガネーシャは、襲いかかってくる他のイノシシにも余裕な様子で剣を振り下ろし、1匹ずつ倒していった。




 ___これが、神の力か。やはり、ガネーシャは本物の神のようだな。まだ完全に信用してないが、


 どっちみち俺一人だとああいう魔物の餌食になることが分かった。これは一緒に行動していった方が安全か。




「とりあえず、こんなところにいても飢え死にするだけだから、もっと食料が取れる森とかに行くぞ」




 俺は黙ってガネーシャに付いていった。


 ガネーシャはここら辺の地理に詳しそうだ。


 しかし、一体この世界はどれだけ広いのだろうか。やっぱり地球と同じくらい広いのだろうか。




 俺がこの世界の広さを考えていると、ガネーシャが立ち止まって言った。




「これは厄介だな」




 ガネーシャはさっきまでの余裕な顔ぶりではなくなって、真剣な顔になっていた。


 


 一体何が厄介なのだろうか。もしかして道に迷ったのか?


 おいおい、頼むぞガネーシャ。俺を護衛するんじゃなかったのか?




「あいつは魔物と言えど、一般悪魔並みの力を持っている。しかも飛行するタイプだ。俺も一応空を飛ぼうと思えば飛べるが、いちいち飛ぶのが魔力消費もするし、めんどくさくてな」




 ガネーシャの目線は、よく見ると上へいっていた。だが、首は傾けてない。


 首でも痛いのだろうか。


 俺は気になってガネーシャの目線の先を見る。


 


 __鳥だ。


 めっちゃでかい化け物並みの鳥。


 俺達が転移してきたときに一番最初に見た化け物だ。




 その鳥は俺達を獲物を見るような目で見ていた。




「駄目だ!そいつは目が合うと襲ってくる!」




 もう遅かった。俺は完全に奴と目が合っていた。それをもうちょっと早く言ってほしかった。




 その瞬間化け物の目が光り、同時に俺の体は動かなくなった。と思うと、すごいスピードで俺たちのところへ突っ込んできた。




「しょうがない、やってみるか」




 ガネーシャはそれだけ言うと剣を素早く抜き、叩く姿勢に入った。


 そしてさっきみたいな凄いスピードで、鳥に突っ込んでいった。




 化け物は巨大な口を開けガネーシャを食べ、空へと戻っていった。




「ガネーシャ!嘘だろ、俺が目を合わせてしまったばっかりに」




 やっと信用できそうな奴に会えたのに…...




 だいぶあっさりだった。


 やっぱり神とは言え、こんなでかい鳥にはやられるのか…...




 何だ?


 俺は何か悪いことでもしたか?


 何故俺はいろんな人に置いてかれるんだ?




 完全に絶望しかけていたその時、化け物はそこら中から血のような物を噴出し始めた。と思うと、化け物はギリギリのところで俺に当たらずに落下して地面に叩きつけられた。


 そして化け物の口からガネーシャが当たり前のように出てきて、




「ふぅ~~。こいつの体の中に入るのは初めてだったが、かなり汚ねぇな。もう二度と入りたくねえ」




 と言った。もしかしたらコイツと居たら......




「___なあ、ガネーシャ」




「なんだ?」




「__俺もいつかは、お前みたいに強くなれるのか?」




「それはお前次第だが、俺と修行したらこんくらいは強くなれる」




「悪魔に復讐できるか?」




「ああ、約束する」




「俺に、修行をつけてくれ」




「わかった」




 俺は握手のポーズで右手を前に出した。それに便乗してガネーシャも右手を前に出した。




「よろしくな。弱虫異世界人さん」




「ああ」




 こうして俺達は握手を交わした。俺の第二の人生が始まる。

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