第7話 カラザルとギルド

ソラ「ここがカラザルか……大都市と言われるだけあって大きな街だな」



千代「ええ。沢山のヒトとモノが、今まで見てきた街より行き交っています」



ソラ「ここなら、いろんな情報を得れるだろうな」



部下から部隊運用や武器の使用方法などを教わりながら、約一ヶ月の北上を続けていくつかの町を越え、たどり着いたのはダンジョンで有名な大都市カラザル。



大きなダンジョンが街の中央にあり、そのダンジョンから産出される素材や資源、武器防具に希少資源を求め、多くの冒険者がカラザルを訪れる。さらに、武器屋や鍛冶屋、宿といった冒険者を標的に店が出店され、さらに人を呼び込む。そうやって大都市までカラザルは発展した。



二人がそのカラザルを訪れた目的は、なにも情報収集のためだけではない。



千代「それと、冒険者ギルドへの加入も、ですね」



ソラ「ああ、そうだったな」



冒険者ギルドへの加入、これも目的である。



その理由は至極単純。冒険者となり、資金調達をしようとしていた。



ソラ(物資は能力で召喚可能だが、無限というわけではない。なるべく、能力を使わなくて済むようにしたほうがいいな。いざという時に備えておいて損はない)



『物質召喚』で物資は召喚可能だが、何かあった時に備えて召喚可能な量を確保しようとしていた。しかし、それには資金が必要であるため調達しなければならない。そこで思いついたのが冒険者の道である。



近代武器を持ち火力は十分。一個師団の人員もあるうえ、人員はまだ召喚可能。冒険者はまさしく天職であった。



加えて、この世界の魔物に対してどれほど自分たちの武器が有効なのか試したこともなかったため、その確認も兼ねている。



ソラ「じゃ、まずは冒険者ギルドへ向かおうか。冒険者カードがあればいろいろ便利らしいからな」



千代「ええ」



二人がギルドの方へ向かって歩いていると、様々なものが目に入ってくる。例えば……



ソラ「ん?あの人は……エルフか!」



千代「ええ、耳が一般的な人よりも長いので恐らくは。あっちにはドワーフもいますね」



ソラ「本当だ。……他にも色んな種族がいるな」



耳が長く、魔法の行使に長けた種族であるエルフ。小柄なのにもかかわらず力があり、鍛冶に関して右に出る者はいないドワーフなど、多様な種族が入り乱れていた。



そして、こういったものも目に入ってくる。



ソラ「……あれは……」



千代「首に首輪がついているのを見ると、恐らく奴隷でしょう」



『地球』にも、古代ギリシアから存在して社会を支えてきたもの、奴隷。現代では見ることはなくなった奴隷だが、『オストラント』ではいまだに存在する。



その奴隷を一瞥した後、何事もなかったかのように素通りして、二人はギルドへと向かった。








ソラ「……ここか。……人が多いな」



千代「ええ。冒険者が仕事を求めてギルドに来ているのでしょう」



二人の目の先には大きな建物があり、その前を多くの冒険者が通っている。



まだ朝ということもあり、仕事を求める冒険者がギルドを訪れているのだ。



二人はギルドの扉を開け、中へと入っていった。







中に入ると、右側には多くの机と椅子があり、そこには冒険者が座って朝から酒を飲んでいる。



左側には、大きな地図と何枚もの紙が木の板に貼ってある。



そして正面には、丸くなったカウンターがあり、そこに十人以上の女性が一定間隔で椅子に座っている。カウンターの奥と左側には扉がある。



女性たちの前には冒険者たちが列をなしている。



二人は、並んでいる冒険者たちが一番少ない列に並び、待つこと十分少し。ようやく、二人の番となった。



「今日は何用で?」



ソラ「冒険者カードの発行を」



「初めて冒険者になられる方ですね?では、手続きを行いますのでいくつか質問にお答えください」



受付嬢は、後ろにある紙の束から二枚の小さな紙を取り出して、傍にあるペンケースから一本のペンを取り出した。



「まず、お名前と出身を教えて下さい」



ソラ「……ヘフトです」



千代「!私も同じく」



「お二人ともヘフトですね。では次に……」



いくつかの質問に答え、受付嬢がそれぞれの情報を紙に書いていく。質疑応答が終わると、受付嬢は光る印を二枚の紙に押した。そして、刃の短いナイフをソラに渡し、ソラと千代の前にそれぞれ書いていた紙を置いた。



「質問はこれで以上です。最後に、この紙にお二人の血を一滴だけ垂らしてください」



ソラ「……わかりました」



ソラは、ゆっくりと、親指を少しだけ切り、血を垂らす。千代はソラからナイフを受け取ると、滑らかな動きで指を切り血を垂らす。



血を垂らした途端、紙が光りだした。光が収まると、驚くことにカードになっていた。そのカードには名前と出身地が書かれ、左下には黒いドラゴンが描かれている。





「こちらが、お二人のカードとなります。このカードはご本人がお持ちください。無くされると再発行は可能ですが、一回目の発行とは違い料金がかかります」



ソラ「わかりました」



「では、冒険者について説明いたしますが、お二人は文字を読むことは?」



ソラ「私は読めます」



「!そうですか……では、お手数をおかけしますが、こちらの本をお読みください」



そういうと、受付嬢はカウンターの下から一冊の本を取ってソラに渡した。



「この本に、冒険者やギルドに関することの説明が書いてあります。あちらの席でお読みください」



受付嬢は、ソラたちの後ろに並んでいる、壁際の椅子をさした。



ソラ「わかりました」



ソラたちはカウンターからカードを取り、椅子に座り本を読みだす。



その本にはいくつかのことが書いてあった。凡そ以下の点に要約する。



一つ。『ギルド大綱』及び各国の法を犯した冒険者はカード没収し、冒険者としてギルドから受ける支援の権利を剥奪する。



二つ。冒険者には階級があるものの、それによって不当に差別することを禁止する。



三つ。冒険者の階級である『冒険者ランク』はカードの左下にあるドラゴンの色によって表す。


色はランクの高い順に、金・銀・銅・赤・黄・青・黒である。


このランクは、ギルドに寄せられる依頼や魔物の討伐、素材の提供といった貢献によって上昇する。


ただし、金になるには強力な魔物『ネームド』を一体でも討伐する必要がある。



四つ。冒険者の活動範囲はギルドの展開範囲に絞ることを推奨する。ギルドの展開範囲外に行くと、ギルドからの支援が受けられなくなる。



五つ。冒険者は活動人数の制限を受けない。



六つ。冒険者はその活動人数で組を作ることができる。


一人組の『ソロ』。二人以上で組む『パーティー』。五十人以上で組む『軍団』がある。


七つ。冒険者は自分の得意とするところを他者に開ける必要はない。



八つ。依頼を受けた冒険者は、その依頼の達成に失敗した場合、過失の時を除き処罰される。



これが、本に書かれていた内容であった。



読み終わったソラは受付嬢に本を返すと、早速依頼を見に行った。



入り口の左側に貼ってある複数の紙には、多種多様な依頼が書いてあった。



猫の捜索、道の掃除、鍛冶場での運送手伝い、金を盗んだスラム街の子供の発見、素材納入などから、



軍への入隊、魔物の討伐などといった依頼まで、多くの依頼がギルドに寄せられている。



ソラ「……よさそうな依頼がないな」



千代「……そうですね。では、ダンジョンに行きますか?」



ソラ「そうだな。元からダンジョンに行くことが目的だったわけだし」



二人はギルドを後にし、ダンジョンへと向かった。








ソラ「ここか…………冒険者が多いな」



街の中央に存在するダンジョンの入り口前まで来た二人。ダンジョンの前には多くの冒険者が集まりダンジョンに入ろうとしていた。




『カラザルダンジョン』。大陸有数のダンジョンは、見た目は何の変哲もない洞窟であるが、侮る事勿れ、中は巨大な迷路となっている。その中では多くの魔物が際限なく出現し、侵入者を悉く抹殺する。冒険者は、その魔物を狩ることで得られる素材やダンジョン内で見つかる武器などを求めて探索する。



冒険者は、一定間隔をあけてダンジョンに入っていく。



ソラ「……しかし、不思議だよな。ダンジョンって」



千代「ええ。間隔を開けないと中に入れないとは……。間隔をあけないと見えない壁のようなもので妨害されるようです」



そうこうしているうちに、ソラたちの番が来た。



ソラ「……さて、行くか」



千代「ええ」



二人はダンジョン内に入る。すると、前方が光りだして目の前が真っ白になった。













?????? 首??? ?統??




ある一室にて、二十人ほどが机を囲み会議をしている。



?「波長が感じられない?」



上座に座る、緑の髪をした美しい女性の言葉に、眼鏡を掛けた男性が答える。



?「はい。初期段階で帝国東方へ移動したことは確かです。しかしながら、その時から依然として、閣下の波長を感じ取れません。我々が生きているため、閣下が生存していることはわかっていますが……」



?「はっ!閣下が自由奔放なのは昔からだ。恐らく、【移魂】先の奴を閣下が気に入っただけだろうよ」



夥しい数の勲章が付いている軍服を着ている男性が答える。



すると、白衣を着た豊満な体の女性が口を開く。



?「とはいえ、閣下の動向を知る必要がある。だが、技術省ではそれは不可能だぞ。探知機に充填するエネルギーは、現在の量ではとても足りん。他でもない『移魂』をしたばかりだからな」



すると、黒いフードを被った男性が口を開く。



?「……それと、別件で少し問題がある。あの『逸脱者出奔事件』で、帝国西方の国に『第膝FTL航法』の技術が伝わったことは周知だろうが、奴らはその技術を使って他の銀河まで進出。そこの国と陣営を形成しだしてるという報告が上がってる。……代行閣下、どうなさるおつもりで?」



男性は上座にいる女性を見る。



代行「……まず、西方を制圧しましょう。閣下にはしばらくお待ちいただいても問題はないでしょう。あの閣下のことです。なにかあっても、ご自分で対処なさるでしょうから」



会議はまだ続いている。彼らの上では、数々の星が輝いていた。

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