蛇隠し編 part3 「憑異者」

「悪い蛇…?な、なんのことですか、何かの冗談じゃ…」

心が恐怖に支配され、足が震える。

「人間に取り憑き魂を喰らう怪異、それが憑異…。私達は憑異の力を自在に操ることの出来る憑異者…、どう?分かりやすい説明でしょ?」

まことさん達も、憑異の力を…?わからない…

「憑異に取り憑かれた人間には身体に動物的部位が確認される、けど普段は通常の人間には目視できない。でもね、唯一ある特定の条件でそれを見ることができるの。なんだと思う?」

頭が回らない。私はその質問に答えることができない。

「わからない…です」

でも、私がまことさんと接触した時…明らかに何かを感じた…あれは一体何…?

「っと、いけないいけない…あんまり怖がらせちゃダメだね、人に説明する度にこれやんなきゃいけないの疲れるね…まったく」

かんなちゃんがため息をつきながら答えた。

「答えは恐怖、心が恐怖に支配されること。まったくだよ…それで研究会の皆全員離れちゃったんだよね、お姉ちゃん」

まことさん達には、まことさん達にしかわからない特異な体質があるんだ…。

「あ、あの…憑異とかよくわかんないですけど…私にも手伝えることがあったら力になります!手伝わせてください!」

そういえば、名前を名乗っていない。

「私は2年1組の津雲みほろです!、今日からかくれんぼ研究会に入会します!よろしくお願いします!」

こうして、私の研究会での活動が始まった。


「これが、みずちの目撃された場所、今回事件が起きたホテルとは別に、3箇所で目撃されてる。でも襲われた人達は皆軽傷で済んでいる」

旧校舎跡、古ぼけた教室の中で私たちは蛇の憑異、通称〈螭〉の調査結果を纏めていた。

「襲われた人達にその時の様子を伺って、わかったことがある」

それは…。

「三叉の蛇…尻尾と頭が三つに分かれていたこと…これがどういうことかわかる?みほろ」

三つ…。憑異は人間に取り憑いて魂を喰らう怪異…。まさか…!

「一人の人間に、三つの憑異が取り憑いている…ということですか?まことさん」

そんなことしたら…取り憑かれた人の肉体が持たないんじゃ…

「それもね、どれも凶悪な憑異だよ。襲われた人達の傷跡を確認すると、鱗のような跡が付いている。近づくだけでも危ない」

かんなちゃんが、メモ帳を取って今回の内容を整理していた。

「最初の目撃場所は商店街、その後は酒場通り、その次が公園広場…そして、遺体が発見されたラブホテル…次に現れるのはどこだと思う…?」

どれも法則性がない。螭の考えていることが分からない。そもそも、三つの憑異に取り憑かれて、意識は残っているの…?

その時、頭の中に声が聞こえた。

『迷っているのか、ミホロ』

私だけに聞こえている…?貴方は誰?

『我の名は白狼ハクロウ…君の道を指し示す者、君の運命を導く憑異…』

憑異…?貴方、私の頭の中から聴こえてるって事は…

『我はミホロの中で、何時か必要になった時に目覚めるようにと、纏聖王ツクモに託されていた』

纏聖王…、そういえば聞いたことがある。私の先祖に、そう呼ばれている槍の使い手がいた事を。

『だが、まだ我には目覚める為の力が足りない。ミホロ…君の魂を喰らわなければ、我は目覚めることができない。我に差し出す覚悟はあるか』

わからない…私の魂を…。無理だ…私にはそんな覚悟はこれっぽっちもない。

『そうか、ならば一つ教えてやる。次の標的は…マヒロ、お前の兄だ』

「まひろ兄…!?」

ふと、意識が戻った。

「どうしたの、みほろ…ずっとぼーっとしてたけど…」

私の…私達の日常が…。

「まことさん、かんなちゃん。行こう、次の標的は…」

絶対に止める…!なんとしてでも!


part4に続く。


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