第13話 2人旅
それからその魔女の家を目指して私とラルフは歩いた。
魔物や虫除けの魔法を使い、夜は交代で見張り、川や池を発見すると水浴びや食事もできる。魚や果物をなんとか見つけてサバイバルだけどラルフがしっかりしてくれてるので頼りになる。
ラルフの寝顔も可愛くて襲ってしまいたくなるが警戒したラルフは眠る前にバリアみたいな魔法を張り近寄れなかった。
ラルフは途中で弓を器用に作って武器にしたり鋭利な石をナイフ代わりにして持ち歩いた。料理にも使えるしと逞しい!!
村や町の近くを通る時は変身魔法を使った。
森なんかで遭遇した魔物から魔石を取り、集めて村で換金してお金に変えて一晩は宿に泊まれた。眠る時はバリア魔法を張られたけど。
ある日村の宿で買った地図をテーブルに広げながらラルフは
「もう少し行ったら魔女の家に着きます。ここの森の丘を越えたら…。でもここ、結構強い魔物がいるので迂回した方がいいかもです」
と言う。
「えー!?迂回の道遠く無い?突っ切ろうよ?」
と反論するとチョップされた。
「人の話聞いてました?ここには強い魔物がいます!古代竜です!」
と言ったので私はおおおお!と変な声が出る。
ファンタジーものでつよつよモンスターのドラゴン!一度は見てみたい!
「ドラゴン見たい!!わーー!!」
とはしゃぐとうえって顔された。
「正気ですか?100%殺されますけど?」
「1%もないなんて逆に凄くない?」
と言うとラルフはため息をつく。
「はあ…。お姉さんてたまに命知らずな所あるよね。ドラゴンなんてS級冒険者がやっと倒せる上位の魔物だよ?」
「出た出た!S級!」
「は?」
「あはは、だって私の世界の本とかにはよく聞くしさ!でもいつも勇者とかチート冒険者が倒しちゃうし」
ラルフは半目になり
「お姉さんの前世の本の話でしょ?実際ドラゴンなんて僕達みたいなのは遭遇したらまず死ぬって事を覚えといてよ」
「うーん、私の暴走した魔力でも倒せないの?」
「…無理だね。ドラゴンだよ?暴走してる魔力はどこへ当たるかわからない。その点ドラゴンは僕達を確実に仕留めにかかるからね」
「そうだよね…」
「大人しく迂回しましょう」
「あい…」
筋肉痛確定だわ…。
としょぼくれていると宿にドヤドヤと人の声がした。
「下に冒険者たちが来たみたい」
「その人達ドラゴン退治してくれないかな?ね、頼みに行かない?」
「正気?僕達お尋ね者だよ?」
「あ、そっか」
「それにS級冒険者が運良くパーティーにいるわけ…ってお姉さん!?」
扉を開けて下に行こうとする私を必死で止めるラルフは
「グラビテイション!!」
と久々に重圧の魔法をかけられて床にベシャアとなる。
「グエ!」
潰れたカエル再びの図。
「言ったでしょ!とにかく静かにしてること」
「グエエ」
としか言えないがわかったと取ったのかようやく魔法を解く。
ラルフは水晶を取り出すと一階の様子を映した。え?こんなのあるの?
1階にはなんと王国の騎士団らしきものが私の似顔絵を持ち宿主に聞いていた。
「!?騎士団?ヤバい、僕たちというかお姉さんを探しにもうここまで!
さすが王国騎士団だ!優秀すぎる!」
「い、言ってる場合?とりあえず変装しなきゃ!」
「くっ…」
ラルフは呪文を唱えると私と自分に魔法をかける。宿の受付も変装していた旅の若者に化けた姿だ。
するとコンコンとノック音がした!
うわ!騎士団がきた!
青年姿のラルフは
「はい、何か?」
と対応すると
「お前達、こういう女を見かけなかったか?」
と私の似顔絵を出した。
「さあ?すみませんが見ていません。お役に立てず申し訳ないです」
「そうか、お前達は旅行者か?」
「はい。兄妹で叔母の家に行く途中でして」
と完璧な答えで特に疑わない騎士団の男は
「そうか。気をつけるんだぞ?この女を見かけたら王国騎士団まで連絡してほしい。
かなりの淫乱女らしく、男を利用して逃げているらしい」
「えーそうなんですか。気をつけます」
おいコラ、誰が淫乱女だ!酷くね!?
「では…」
と騎士団の男は次の部屋をノックして聞いて周り、しばらくすると宿から離れていった。
「はあ…何とかバレずに済んだ」
「ゆ、許せない!私が何で淫乱女とか呼ばれてんのよ!ちょっと胸がでかいだけなのに!きっとヒロインだわ!あいつが腹いせに広めたんだわ!」
「…レンガ職人さんに色仕掛けしようとしたことで噂が広まったんだよ!全く!」
「うがっ!」
そう言えばそんなこともあった様な。
でも偶然ガキにスカート捲られてバッチリ下着を見られたからなぁ。凄いの履いてるとは言われたし娼婦とも言われたけど!
淫乱て。酷すぎ。いくら私の元が美人な胸デカお姉さんだからって!
とにかくもう僕は寝るよ。
とベッドに横になりいつもみたいにバリア魔法張られた。
*
しかし真夜中のことだった。
「さん…起きて!お姉さん!」
小声でラルフが私を揺り起こす。
「………」
夢かと思い、ガッと掴みポスと胸に埋めると
「わっ、……!」
ジタバタと暴れるラルフの頭を撫でて
「ひゅふふふ…ラルフ…かわいい…」
しかしそこで胸から逃れたラルフにチョップされた!
「起きいいっ!」
「いだっ!?」
ようやく目覚めると真っ赤になり怒るラルフ。
「?どーしたの?こんな夜中にお姉さんを襲って…」
「襲ってない!、しっ、とにかく静かに!!誰かこの部屋に来るよ!!姿隠しの魔法をかける」
呪文を唱えると私とラルフは消えてラルフは私の手を取りドアの後ろになるように隠れた。すると乱暴にバンと扉が開かれドスドス音とバサっと布団をめくる音がし、舌打ちされた。
「いないだと!?ちっ!窓が空いている!勘づかれたかっ!あいつらまた逃げやがった!!」
と夕方の騎士団の男の声がして再びドスドス音を立てて階下の主人に怒鳴りつけている。
「どうやら騎士団の男に目をつけられていたようです。このまま逃げるのが得策です」
「わかった…」
ベッドの下に隠した荷物を取り、ソッと部屋から出て、消えたまま宿を出て騎士団の馬達の足跡とは少し反対に進む。
しかし私は気付いた。
この方向は…
「ラルフくん…不味いよ?この方向はドラゴンの…」
「ええ…仕方がないです。迂回する予定でしたが既に騎士団が迂回ルートを読んで行ってしまったので…。もう運しかないです!」
とラルフ!は少し震えている。
時折、邪悪な何かを感じた。
この気配なんなの?と思っていると
ラルフは止まる。カタカタと震え前を見ている。
私も見てみると青い大きなドラゴンが寝息を立て寝ていた。
「ら…もがっ」
無言で喋るなと睨まれた。
よほど怖いのだろう。ドラゴンが見れて私は満足でそろそろと消えたままゆっくりと横をすり抜け何とか後ろに回る。
それからゆっくりと歩き出そうとして
「ヴォ…」
とドラゴンの低い声がし青ざめたラルフは
「走って…」
赤い目がこちらを向いた。
それを機に走り出す!
「ゥオオオオオ…」
と地響きと共にドラゴンは私たちを追いかけてかる!木の根に身を隠し臭い消しを行う。
ラルフは震えていた。ぶつぶつと
「もうダメだ死ぬ…死んじゃう!」
と言い青ざめる。ここはラルフだけでも逃さないと!
「私が足止めするから、ラルフくんは逃げて魔女さんのとこに行って!」
「は、な、何言って…」
と言うラルフの顔を掴みじっと見つめ、私はえいっと唇にキスした。最後になるかもしれないしいいよね。
驚いているラルフに
「ありがとう!それじゃ、元気でね!」
と立ち上がり、
「おーい、ドラゴンここよーー!私を食べてごらんなさーい!」
ありったけの魔力と美少年を食べようとするこの青いドラゴンを挑発し逃げながら私は当たらない魔法を放つ。
ドガアアンとデカい音で木々が薙ぎ倒されていく。
破片がドラゴンに当たりドラゴンはこちらを睨む。おお、私の人生もこれまでか。ドラゴンが私めがけてブレスを放とうとする中、ピカっと光がして周囲が止まったようになる。
するとラルフの手が私を掴む。
「え!?なんで?」
「それはこっちの台詞だ!バカ!!死にたいの!?早く走るよ!!一時だけこの周辺の時間を止めたけど時期に動き出す!」
そんな便利な魔法あるならすぐに使えば良かったのにと思ったが、とにかく逃げ出しようやく遠くまで来ると時間は動き出したようだ!!
「も、少しで…」
と言うと心臓を抑えラルフが倒れる!
「ラルフくん!!」
はあはあ呼吸が荒い。あの時間を止める魔法は相当な魔力を使うようだ!!ヤバい!休ませないと!!
近くを見渡すと木々に隠れて赤い屋根が見えた!!私はラルフをおぶりかけ出した。ドアをどんどん叩き
「助けてお願い!」
と必死で叫ぶと中からボサボサの頭の赤いメガネの女が出てきて
「んん?誰だべ。こんな夜中に?」
「助けてください!あの、私達…追われて、あのドラゴンが!!騎士団が!」
と半泣きで言うと
「うわ、わかったべ、泣くなって…」
と中に入れるとホッとして私は倒れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます