第12話 私、本物の悪役になる
「つけられたんだよ、お姉さん。憲兵にこの家の場所を突き止められ、僕やお姉さんはもう直ぐ捕まってしまうよ。
僕は罪人女を匿っていた件で捕まり、お姉さんは処刑かな」
と言われて
「そ、そんな!トイレを作ろうと思っただけなのになんで死ななきゃならないのよ!!」
「トイレどころじゃないよ!バカ!!だから動くな、何もするなって言ったのに!!」
と怒られた。
私のせいでラルフが捕まり、私は処刑なんて冗談じゃない!
こうなったら!
「ラルフくん!私と愛の逃避行しましょう!」
とキラキラして言うと死んだような目で
「1人ですれば?」
と言われる。
「私は至って真面目よ?」
「なら尚更だ。僕は犯罪者に加担したと思われたく無い。捕まった方がマシだね」
と真面目なラルフは言う。
「何言ってるのよ!ラルフくんみたいな美少年が捕まったら何されるかわからないわ!!男でも好きにされそうだし!」
「何創造してるか知らないけどお姉さんが気持ち悪いのは伝わったよ」
と言うラルフに
「ごめんなさい!ラルフくん!私の事恨んでいいわ!」
「えっ?……うっ!!?」
ドスッと私は拳を握り可愛いラルフのお腹を殴り気絶させた。その場で崩れ落ちてしまうラルフをなんとかおんぶして私は立ち上がる。
外に出てピュイッと口笛を吹くとソロソロとブラックウルフ達が顔を出した。
「あんた達、私達に協力なさい!憲兵達の足止めをしなさい!!じゃ無いと1匹残らず私の力でこの森は死に絶えるわよ!」
と一応脅すとブラックウルフ達は村への道の方へ走っていく。
「よし!今のうちだわ!」
ラルフをおんぶしたまま私はなんとか森の奥へと逃れた。ブラックウルフ達が言うことを聞いてくれて良かったわ。
*
「う……」
目を覚ますと外が暗くなっている。
ここはどこだろう?森の中?
と見ると手を布で縛られていた。
そして木の根に持たれるようにお姉さんが眠っている!
「やられた!」
お腹を殴られ気絶したことを思い出した。これで僕も犯罪者!?
いや、誘拐?
どうする?
幸い足は縛ってないし逃げるなら今しかないけど。
……。
呑気に寝ているお姉さんはバカだ。こんな直ぐに僕が逃げ出せれる状況なのに。
それでもここに1人お姉さんを置いて行くことができなかった。
何故?
「う…うーん…。ラルフ…」
とお姉さんがムニャムニャ寝言を言い始めた。
僕ははらりと落ちたお姉さんの顔の上の髪の毛を避け、綺麗な寝顔をマジマジと見つめ、気付くとおでこにキスを落としていた。
ハッと我にかえりブワッと赤くなりズザーっと後ずさった。
ぽ、僕は今!な、ななな何を!?
「ふみゅーん?」
お姉さんがやっと寝ぼけ眼を開きボーッとしていた。
「られ?ここどこ?」
と寝ぼけて周囲が森なのを確認していきなりハッとして僕を見て
「ら、ラルフくん!?」
「な、なに!?」
と、僕はドキドキしていた。
*
「ラルフくん!!ごめん!!」
ババっとラルフの側に駆け寄りお腹をなでなでしてあげると
「ひゃっ!?な、なに!?」
と驚くラルフ。
「さっき私が殴って気絶させたし、誘拐したし!ご、ごめんね?」
と眉を寄せると何故か赤くなりそっぽを向き、
「ほ、ほんと酷いです!こ、この極悪人!!」
と罵られた。まあ、流石にそうよね。緊急事態だったし。捕まって処刑されたり牢に入れられた美少年を犯されたりしたら大変だし。
「だからごめんー」
「ここ、これからどうするんですか!?僕達お尋ね者になるし、一文無しだし!!薬の道具もないしっ!」
と怒りながら不安を言うラルフ。
そう、ノープランで誘拐してしまったから何も持ってないし!!
「ご、ごめん。そこまで考えてなかった」
と素直に言うとチョップをされた。
「全く!!そんなことだろうと思ったよ!!全くお姉さんは全然ダメな極悪人だね!」
「すいましぇぇん…」
と謝るとラルフは、
「ここにいたってしょうがないから移動しますよ。知り合いの魔女の家に行き事情を話してみましょう。上手く行くと協力してくれるかも」
と言うラルフ。
「え、知り合いいたの?」
「まあ、1人くらいなら。師匠の昔からの知り合いの魔女でババアだけど若く見える魔法をかけているし、ババアとか言ったら半殺しにされるけど、一応はいい人だから頼っても良さそう」
と言う。
若作りのババア魔女か。うんうん、よくあるわねぇ、ファンタジーものでは定番よね。
「まあ…、僕を誘拐したお姉さんがどんな目に遭うのかはわからないけど?」
と言うラルフ。
ま、まあそうだけど。
「その魔女さんに私は殺されたりしないよね?」
「さあ?どうだろうね?」
と言うラルフは立ち上がりスタスタと歩き出す!
「あっ!ま、待ってよ!ラルフくん!!」
私は本物の悪役令嬢になってしまったが、誘拐した?ラルフの後に付いてしばしの旅をすることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます