第14話 魔女と対価
「う……」
朝日を感じて目覚めると知らない天井があった。
部屋の中で、隣のベッドにラルフが寝ていて驚いて起きる。
「ラルフくん!?」
駆け寄るが起きない。
するとドアが開いて昨日のボサボサ頭のメガネ女と子供の女の子が出てきた。
髪は2人とも白い。肌の色は褐色に赤い目をしている。
「目が覚めたかい?」
と幼女が言う。
「えと、うん…」
「ラルフは魔力切れでしばらく起きない。禁忌の時魔法を少し使ったから。この世界でも重罪に値するね。
バレたら処刑ものさ」
と幼女が言う。
「ええ?そんな魔法だったの?…もしかして、私を助ける為?」
「さあ、知らないけどね。あの無口で誰にも心開かなかったラルフが人助けするなんてあんた…なんだい?」
と聞かれるがメガネ女が
「おししょー!あたいは知っております!先日ビラに似顔絵が描いてあった淫乱犯罪者ヴィクトリア・フォン・マーテラかと!」
と言う!
「誰が淫乱よっ!」
「書いてあるし」
確かにデカデカと書いてある!
「その犯罪者をラルフが助けた?そしてうちに来るとは…困ってるんだね?」
「めちゃくちゃ困ってます!!」
と言うと幼女は
「私は魔女アルファ。こいつはアデリナ。私の半身。分身みたいなものさ。ラルフの育て親の魔女ベータの親戚みたいなもんでね。あいつはもう死んじまったけど」
「ベータさんは普通の魔女だから歳もとるしね!」
と言う。この人達は歳取らないのかな?幼女も見た目とは違い口が幼女ではないし。
「ラルフの魔力を戻したけりゃ対価を払っておくれ」
「え?対価?でも私お金も持っていないわ」
「ふむ、ではその髪をおくれ。このままだとラルフは死ぬし」
と言われて焦った!!
「な、し、死ぬ!?」
と言うとメガネ女がケタケタ笑い
「時魔法の反動だよ!禁忌とされてる所以が極端な魔力枯渇に繋がるからね!魔力が切れたら普通は死ぬからこの世界の人間」
と言われて青ざめる!さっさと使えとか思ってごめん!ラルフ!
「わかった!髪でいいならどうぞ!」
と言うと一瞬で私の髪はショートになり、大量の髪の毛は一括りになり、それが紫の光に変わりアルファはラルフの胸の中にそれを押し込んだように見えた。
するとラルフが
「うっっ…ゲホ!」
と気づいた!
「ラルフくん!!?」
再び駆け寄る。
「それじゃ何か作ってくるよ。ほら行くよアデリナ」
とメガネ女を連れ出ていく。
ラルフは私を見てホッとしたが髪の毛を見てギョッとした。
「え?お姉さん?髪は……?」
「ラルフくんを助ける為の対価だってアルファさんが言ってたよ?」
と言う。
「…アルファ様…」
キョロキョロと見渡し
「そうか、アルファ様の家か。ようやく…。ここは安全です…」
「ラルフくん、良かった!死んじゃうかと思ったよ…」
と言うとラルフは
「それはこっちの台詞です!お姉さんがドラゴンに食べられると思ったから!僕は…わっ!」
感極まり抱きつき胸にラルフを埋めると
ジタバタしブハだとようやく肩から顔を出す。
「ちょっと!窒息するから!毎回毎回!」
と赤くなりながら抗議するが私が泣いているのがわかると大人しくなって背中をポンポンされた。
「あの…心配かけてごめんなさい…。時魔法は確かに禁忌だし使うと死んじゃうリスクあった…から…その、助けていただきありがとうございました…」
「うぐっ!こっちこそ!そんな魔法使わせてごめんね!!私は死んでもラルフくんを助けたかったんだよ!」
「な、な、何でそんなリスクを!僕なんかの為に!!?」
と聞かれる。答えはわかっている。
「ラルフくんが…しゅき…好きだからあああっ!」
と言うとビクっとしてラルフはさらに赤くなった。
「あの…僕…僕は…」
としどろもどろだ。
それを制して
「いいの、言わなくて。お姉さんフラれるのわかってるから!」
「え?」
「お姉さんの一方的な気持ち悪い感情だもの!いいのよ!私だけがラルフくんを愛していればそれで満足なの!」
「はあっ!?ち、ちょっと!」
ようやくラルフは私を押し退けて綺麗な顔で怒ったように見つめ、ガッと私の顔を少し下から掴む。
「あ、あのですね!何でいつも一方的なの!?勝手に決めて暴走しないでほしい!!
ば、僕は…!ぼく…も…」
と言うとラルフが綺麗な空色の瞳で私の銀の瞳と合うと、顔がゆっくり近付いてきてなんとキスされた!!
ふええええええ!!!?
と驚いてドキドキしていると
赤くなりながら顔を離しボソッと
「僕も好き…」
と呟かれ私は…ブハッと鼻血を出し倒れた!!
「うわっ!!ちょっと!!大丈夫!?」
と声が聞こえた。
*
それから数日アルファ様の家で過ごした。不思議と騎士団は尋ねてこない。アルファ様の魔法で嫌なものは寄せ付けないらしい。
「ここは助けを求めてる人が辿り着く場所だからねぇ。本来ならがっぽり金取る所だけど、ベータの大事にしていた弟子のラルフの為だよ。
ま、あんたは文無しだから追い出してもいいけど、ラルフの将来の嫁なら仕方ないからね」
将来の嫁だなんて!!ぽっとしている私を置いてラルフは照れながらも
「ゴホン、あの、アルファ様。それでそのご相談が」
「わかっているよ。いつまでもここに世話になっちゃいけないと思っているんだね。
仕方ないほら」
とアルファ様が鍵を渡す。
「!いいんですか?」
「ああ。ベータの墓参りにたまにこっちにきてくれりゃいいよ」
訳がわからないがラルフは感動して頭を下げた。
「ありがとうございます!アルファ様!」
「ふん、ちっとはマシになったね!昔は人を信用しなかったあんたがこの娘のおかげだね。惚れた弱みか」
「う…」
とまた赤面するラルフ。
「では荷物をまとめます。お世話になりました!」
と言うが
「あの、どこへ行くの?私達外へ出たら追っ手が…」
と言うとラルフは笑い
「もう必要ないですよ?アルファ様から扉の鍵をもらいました!」
「は、訳わからないんだけど?」
と言う私に
「ゴホン、まあその…別の世界に行ける鍵と言うか、誰も追ってこれない都合のいい世界というか………お姉さんが僕と2人で生きてくのが嫌なら使わないけど…」
え?そんな世界に行ける鍵なの?凄くない!!?
それに
「ううん、ラルフくんと2人きりならどこでも嬉しいよ私は!!」
「…はい、では行きましょう…」
とアルファ様達と扉に向かう。
何か神秘的な感じで扉光っている。
「何これ凄い!」
「じゃあ、ラルフ、元気でね。子供が生まれたらまた顔を見せにおいで」
と言われてまたも赤くなるラルフ可愛すぎて死ぬ!
「ううっ、そんなすぐじゃありません!!」
と真っ赤になり鍵を回す。
「ではアルファ様、アデリナさんお元気で!」
「はいよ!」
「じゃーねーお幸せに!くくくっ」
とアデリナさんに笑われて私とラルフは手を繋ぎ扉をくぐった。
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