第5話 美少年と暮らす日々

【ヴィクトリア・フォン・マーテラー】


 私の転生した後の名前。ここは小説の中の世界で私は追放され、処刑され死んだ事になっている元悪役令嬢だ。


 私は美少年魔法使いの弟子(師匠はもう死んだらしい)ラルフ・シェンケくん、15歳に助けられた!



 ラルフくんはそりゃあもう美しかった!陶器の様な白い肌に透き通った空色の瞳!黒髪サラサラな美少年で見ていて飽きない!


 そんな彼と二人暮らしスローライフとか処刑されて良かったなぁ!


「ゲッヘッヘッヘッ!」

 とニヤニヤ笑いながら私はラルフくんが朝食を作るのを見ていた。


「ううっ!後ろから邪気を感じる!!」

 と言いながら、コトリとお皿を置いた。



 ベーコンエッグの様だ。

 それに新鮮なサラダにパン、豆スープだ。


「わあ!美味しそう!!」

 と言うと


「普通だよ。て言うか、あんた早く食べて出てってよ」


「えー!ここに置いてくださいよ」


「なら働きなよ!掃除とかして……」


「うんうん!するよ!なんでも!!箒とかゴミ捨てる場所とか色々教えてね!!」

 とにこにこしながらラルフくんを見つめる!


 美しい!!やはり!


「はあ。それじゃ、お風呂の掃除から。もう傷も治ったしできるでしょ?」


「ガッテン!!」


「何それ?掛け声?」


「へい!前世でよく使われてたわ」


「……はあ、もう一回死んで、別のとこに生まれ変わったらいいのに。ウッザ」


 とラルフくんは顔を逸らした。


 ラルフくんの為ならとお風呂をとにかくピカピカに磨き上げる!元々綺麗に掃除されていたが、更に磨いた!!

 ラルフくんは掃除や料理もしっかりしていたからあまり汚れは無いみたい。

 凄いわ。


 15歳でちゃんとしてるなんて!


 でも親がいないラルフくんは寂しいんじゃ無いかしら!?

 と思い、風呂掃除を終わらせて、魔法薬を作っているラルフくんの調合室をコンコンと叩く。


「はい」

 と返事がした。


「ラルフ様!お掃除終わりましたよ!!」



「あ、うん。じゃあ適当にくつろいでたら?」

 と返事が返ってきたのでガチャッと

 扉を開けた。


「え!?」

 手になんかかき混ぜる棒を持ち、鍋に薬品を入れているラルフくん。


「なんで入ってきたの?」


「適当にくつろいでって言うから、ラルフ様を見ていようかと!」


「それ、くつろぐ事になるの?」


「なりますよ!!美しいものを見るとリラックスできるんです!!」


「ウッザ!!邪魔だから出てってよ!!」


「何作ってるんですか?」

 とかき混ぜ中の物を見る。


「風邪薬だよ。街で売るんだ。生活費も必要だし」



「何か手伝いましょうか?」


「いいよ、何も触らないで欲しい!てか出てってよ」

 と言う。

 うーん、いまいち仲良くなれないな。やはり元悪役令嬢だから人から嫌われる様になっているのかも!!



 小さめの本棚を見つけた。調合本かな?



「ラルフ様、ここの本読んでいい?」


 と聞くと、


「え?それ薬の調合本だよ!?」


「暇なんで」


「勝手にしたら?破かないでよ?」

 と言うからひとつ手に取った。


 パラっとページを捲るとこの世界の文字が読めた。転生しても言語は読めるのね。



 本には色々な調合の作り方が書いてあった。


 風邪薬から蕁麻疹を治す薬に、疲労回復、睡眠薬といった物だった。


 薬草が挿絵として描かれている。


「ラルフ様。この薬草とかこの森に生えているの?」



「まあ、大体は生えているよ。高価な薬を作る時は遠出して手に入れないといけないけどね」

 と言う。

 なるほど。この森に。


「私、採取して来ましょうか?」

 と言うとラルフくんは


「えーっと……。ブラックウルフも倒せないあんたが採取に行くの?また喰われたいなら良いけど」


 おっとそうだ!あの狼達が森に潜んでるんだ!!この家はなんか魔除け結界で魔物は入って来れないらしいけど。


「そもそも私、魔法が使えるわよね?元公爵令嬢だし……。ヒロインをいじめてた時に使ってた様なこと小説に書いてたはず。



 いや、呪いとか陰険な魔法もあったけど、授業でヒロインを怪我させるためにわざと炎魔法を使ったりしてたはず」

 と言う独り言を聞いていたラルフくんは



「なるほど……。炎魔法に呪術。まあ、確かにこの世界の人間は皆マナを持ってるから魔法くらい使えて当たり前だよ。


 君は元貴族だからマナの量も多いね」


「わかるんですか?ラルフ様!流石美少年!!」

 と褒めると


「魔女の弟子だからね。見たらわかる。貴族は元々多いし」


「魔法使ってみたいな」

 と言うとラルフくんは


「それならブラックウルフを倒して来たらいいのに」

 と言う。


「倒す……。あの黒い狼を……」

 そうだな、あいつら私を食おうとしたし!よし!魔法で倒すか!!


「ラルフ様!魔法教えて!!私の胸揉んでいいから!」

 と言うとラルフくんはうんざりした顔をして、


「バッカじゃないの!?」

 と言った。

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