冬の夜の川の底にて、ソネットの十八、学童の夏、喪失の心構え
青さの遙か上で満月をぼやかす水
白く冷たい光で照らし出す川の岸
水は気道を塞いで私を苦しませる
岸は私を泳がせて更に溺れさせる
闇の真っ暗い冬の夜の川の底にて
光も人も届く訳ないのは当たり前
幾ら壮大な葉を広げ広げ育てても
海の底の花なき林は枯れ死ぬ定め
あなたと夏の一日を比べるとして
あなたの方が一層かわいく穏やか
吹き荒ぶ風を耐え抜く初夏の蕾が
花を咲かすには夏の日は短すぎる
輝いて燃え盛るお
金のひとみを毎日かげらせて沈む
すべての美しいものは失われゆく
不運な事件や自然の摂理によって
だがあなたの夏は永遠に霞まない
あなたの美しさは永遠に消えない
あなたの命を死神は刈り取らない
終わらぬ時の流れに閉じ籠る限り
人が息をし、目で光を見れるなら
この詞はあなたに命を与え続ける
私は夏の朝の幕開けが大好きなの
森の至る所で鳥さんが歌い鳴くと
遠くで狩人さんも角笛を吹き奏で
雲雀と私も一緒に飛び回って歌い
夏の朝の幸せな音楽隊になるの!
なのに私は夏の朝に学校に行くの
折角の朝なのに完全に台無しだわ
尊大な先生の古ぼけた目に睨まれ
私と子供達は1日を無駄にするの
退屈さと落胆のため息に包まれて
私はだらけた姿勢で席に束縛され
もう何時間も苦痛の中に幽閉され
別に勉強の面白さに興味ないのに
窮屈な教室に静かに座らされてて
降り注ぐ憂鬱で心は穴ぼこだらけ
どうして空に歌い遊ぶ幸せな鳥を
窮屈な籠の中に監禁してしまうの
どうして子供達は怖い先生に怯え
やわらかい羽の力を奪われ失って
自由に遊ぶ幸せを諦めてしまうの
お父様とお母様が蕾を摘むとして
花は花開く幸せを奪われてしまう
やわらかい草花を剪定鋏で切って
際限なく伸びる幸せを失わされる
心配性な大人には私ガッカリなの
どう夏の朝は常に幸せに始まるの
どう森の至る所で果実が実ったの
どう私の壊れた幸せを取り戻すの
どう秋や冬に夏の幸せを味わうの
暴力的な冬に襲われたら人は死ぬ
冬の名を持つ死神は君を殺せない
君は夏の束縛から逃れられないよ
君のいる所が夏に変化するからね
だから秋の別れに涙する事もない
寂しい冬に凍える心配も要らない
春の新しい出会いも失われるけれど
私は何かを失う事に慣れてるから
大抵の物事はその運命に置かれて
当然の如く失われ忘れられ消える
何かしらの喪失感を飲み込む毎日
例えば家の鍵を失うのは嫌だけど
私は何かを失う事に慣れてるから
喪失の修行は更に過激に加速する
故郷も旧友もまだ踏み見ぬ旅先も
当然の如く失われ忘れられ消える
お母様の腕時計を紛失したとして
家が1軒2軒燃えてる方が大変!
私は何かを失う事に慣れてるから
昔に住んでた2つの街々を離れて
私有してた小川も川2本も大陸も
当然の如く失われ忘れられ消える
思い返せば声も仕草も愛しい人と
別れる時の私の気持ちは明白なの
私は何かを失う事に慣れてるから
当然の如く失われ忘れられ消える
成程ね君はこういう形で話すんだ
中々揃わぬ波長と格闘していたが
由加、遂に私は君の言葉を掴んだ
今や私は君を
君の手で私を強く握り離さないで
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