第11話 交通事故

派手に甲高いタイヤのブレーキ音に、お腹に響く衝突の激しい音が続いた。

歩道を歩く人たちは、音のした方を見た。

顔を上げる人。

視線を向ける人。

振り向いた人。

昼食後会社に戻ろうとしていた僕も、真後ろで響いた大きな音に驚き振り向いた。


しかしそこには何もなく、静かに信号待ちの車が停止していた。


ああそうか。今日だった。


僕の住む街には不思議なことがある。

五年前の交通事故。

多くの車を巻き込んだ追突。

炎上した車もあった。

奇跡的に亡くなった人はいなかった。

でも毎年事故のあった同じ日の同じ時間に衝突の音が聞こえるようになった。


それは街の記憶だろうか。

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