第10話 曲がり角のおじいさん
「おはよう」毎朝通るたびに声をかけてきた。
「おはようございます。今日もいい天気ですね。」いつも普通に挨拶を返した。
曲がり角にある家の玄関先にいつも座って外を見ているおじいさんがいた。
おじいさんは、ニコニコと街を眺めながら曲がり角を通る人に声をかけた。
ある人はにこやかに返事をした。
ある人は黙って会釈をした。
ある人は笑いながら手を振っていた。
ある日の朝、おじいさんはその曲がり角に座らなくなった。
翌日もその翌日もおじいさんはいない。
僕は毎朝おじいさんを目で探しながらその角を曲がって駅に向かった。
しばらくして、おじいさんが亡くなったことを知った。
僕の街には変わったことがよく起こる。
その後しばらくすると、おじいさんはまた曲がり角に座って街を眺めていた。
「おはよう。いい天気だね。」
「曲がり角の向こうから人が来るよ。ぶつからないように。」
「後ろから車が来ているよ。あぶないよ!」
「電柱の影に注意して。」
「おまえはその子から離れなさい!」
「不幸はここにはいらないよ。」
おじいさんはそうやって、曲がり角を通る人や〇〇に声をかけていた。
でも、曲がり角を通る人たちにはおじいさんの声は聞こえない。
でも、〇〇たちは消えていく。
おじいさんは道行く人に声をかける。
曲がり角でおじいさんは声をかける。
たとえみんなにおじいさんの声は聞こえなくても。
おじいさんはニコニコしながらみんなを見守る。
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