第9話 首無し地蔵
僕の住む街には変なものがたくさんある。
けれど、さすがにこれはと思うことがある。
ある日の会社の帰り道、角を曲がったとたん飛び上がるほど驚いた。
道の真ん中に首のないお地蔵様が立っていたのだ。
たしかに僕の住む街には「首地蔵」がある。
だから「首なし地蔵」があってもおかしくないってことなのか。
とはいえ、道の真ん中にどんと立っているのはさすがにおかしい。
通行のじゃまだ。
ぶつかったら危ない。
しかし、抱えて移動しようにも石のお地蔵様は重くて持ち上がらない。
諦めて、僕はその場を立ち去ろうとした。
そのとき。
ズズッ…ズズッ…
なにかを引きずる音がした。
振り向くと、角を曲がって消えていく首なし地蔵の姿が見えた。
でも、さすがにそれを追う勇気はなかった。
僕の住む街ではその日からある噂が立つようになった。
いくつもの首なし地蔵が街をさまよっている。
自分の首を探しているのだと。
気がつけば後ろに立っているらしい。
首のありかを人に尋ねるらしい。
それでも自分の首が見つからないのだろう。
今日もあちこちに首なし地蔵が立っていた。
「わたしの首を知らないかい?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます