第8話 シャッター街

僕の会社の最寄り駅前から大きな赤い鳥居が見える。

駅とその鳥居の間に妙な商店街がある。

昼間はそこそこ人通りも多く賑わっている。

明るい声で八百屋のおばさんや精肉店のおじさんが、呼び込みをする。

しかし夜の八時になる頃には慌てて店じまいを始める。

商店街のすべてのお店はシャッターで閉ざされてしまう。

そして潮が引くように人も途切れる。

たまに駅に向かう人、駅から出てくる人たちがいる。

彼らは足早にシャッターの前を通り過ぎる。


なぜ?それには理由がある。


「いらっしゃーい。」

「今日は〇〇が安いよー。」

「生きのいい〇〇が入るよー。」

「うちの〇〇は美味しいよー。」

「〇〇さん、美味しそうだねー。」

「新鮮な〇〇さん、こっちにおいでー。」

「新鮮で美味しそうな〇〇さーん。」


シャッター声が聞こえるのだ。

何を言っているのかはよくわからないわかりたくないが、返事をしてはいけない。

まっすぐ前を向き、だまって早足で通り過ぎること。

それが決まりらしい。

もしも決まりを破ったら?

それは誰にもわからない。

なぜなら決まりを破った人はからだ。

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