第3話 深夜の仔猫

とたたたた・・・畳の上を素早く歩く。

とんっととと・・・本棚から飛び降りたな。

ちりん・・・ちりん・・・走る度に鈴が鳴る。

子猫が騒ぐ音で真夜中に目が覚めた。

布団の中でため息をつく。

まだ深夜一時じゃないか。

鈴の音が消えた。

どこかで僕をみてるのだろう。


うとうとしていたら、指先にざらざらした感触。

軽く噛んだので思わず手を振り払う。

そして布団の中に手を引っ込める。

どこからか、抗議でもするかのような鳴き声がした。


がりがりがり・・・壁をひっかく音がする。

がさがさがさ・・・あれは昨日の買い物の紙袋か。

ばさっばさっ・・・本棚から本を落としたな。

アパートの壁は薄いので近所迷惑にならないかと心配になったがそれでも起きる気にはならない。


布団の足元に子猫が来た。

布団の端に乗ったのを感じた。

わずかな重みだが、そのせいで布団が引っ張られる。

僕は内側から布団をつかみ動かないようにする。

足の上に乗った。布団の上の重みでわかった。

腹の上まで来たのがわかる。

胸の上で足踏みをする。

爪を出しているのだろう。布団が引っ張られる。

僕は頭まで潜り込んだ布団が取られないように、白くなるほど手を固く握りしめる。

甘えるように子猫は鳴く。

でも、このアパートはペット禁止だ。

はやくどこかに行ってくれ。


そもそも僕は、猫なんて飼っていない。

部屋に入れるわけがない。

猫なんてここにいるはずがない。


ばりばりばり・・・

にゃあ・・・

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