第2話 首地蔵

僕の住む街には不思議なものがある。

それはお地蔵様の頭だけを祀った首地蔵だ。

大きなものは人の背丈を超え、小さなものは握りこぶし程度のお地蔵様の頭。

あるものは台座の上に飾られ、あるものは花に埋もれ、またあるものは野ざらしの首。

祠の中に納められたり、頭巾をかぶっていたり、道端に無造作に据えられたりしたお地蔵様の頭。

それが首地蔵。

それらは笑みを浮かべたり、目を閉じていたり、半眼で思いにふける表情だったりすると、みんなは言う。優しいお顔だとみんな言う。

でも僕は、真顔で眼を見開き僕をじっと見ている奴らしか見たことがない。


今日も会社帰りの僕を凝視するいくつものお地蔵様の首が、道の両脇にずらっと並んでいる。

何も言わずにただそこにある首地蔵。

ずっと僕を見ているたくさんの眼がそこにある。

通りを過ぎ角を曲がり、首地蔵が見えなくなるまで、背中に視線を感じる。

何かを言うわけでもなくじっと見ている、ただそれだけの首地蔵。


そして角を曲がった通りの先には大小様々な顔がまた並ぶ。

じっと僕を見ている。

アパートにたどり着くまで繰り返す日常。

それが首地蔵。


部屋のドアを開ける。


おかえりなさい。

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