第34話 三人の聖女たち

「セシル!リラ!」


ベル様が私達に気がついて声をかけてくれた。それに気づいたランス様が頷きながら手を離す。ロイ様も同じようにリラの手を離してランス様と一緒にユーズ様の所へ向かっていった。


「ベル様、お久しぶり、なの」


リラがほんの少し嬉しそうに挨拶をする。


「久しぶりね、元気そうでよかったわ」


ベル様はリラをぎゅーっと抱き締めた。突然のことでリラは一瞬困った様子だったけれど、でもすぐに嬉しそうにベル様の胸に顔を擦り寄せる。


「セシルもこの間ぶりね。あれからランスとは話ができた?」


リラの頭を撫でながらベル様が話しかけてくる。リラったらまるで子猫みたいに目を細めて嬉しそうにベル様の手へ頭を預けている。可愛いなぁ。


「はい、おかげさまでちゃんと話をすることができました。ありがとうございます」


えへへ、と照れるとベル様もまぁ!と嬉しそうに頬笑む。


「リラも、セシルを見習ってロイとお話してみるの」


リラがそう言うと、ベル様はリラと私の顔を交互に見て嬉しそうに笑った。


「セシルに相談してみたのね。とても良いことだと思うわ。リラもロイとちゃんとお話できるといいわね」


ふわぁっと笑うその顔に心が軽くなる。リラも同じだったようで、嬉しそうにベル様に抱きついた。


「ベル様、聖女の誘拐についてですが……」


会議で聞いた話を詳しく知りたい。そう思ってベル様に言うと、ベル様は美しい顔を曇らせた。


「あなたたちも気をつけてね。すでに数人誘拐された後すぐに救出されてはいるけれど、記憶を一時的に無くしているの。白龍は何かに気づいているようだけど、まだ話してはくれないのよね」


ベル様は片手を頬に添えてうーんと悩む。白龍が気づいたことを言わないとは一体どういうことだろう。自分の聖女が拐われ記憶を無くしたというのに。


「まだ言えない段階のことなのかもしれない。もしくは白龍に関係する何か、なのか。わからないことだらけで困ってしまうわね」


ベル様はため息をつく姿でさえ美しい。


「ベル様も気をつけてくださいね」


「私みたいなおばさん聖女をたぶらかすような男はいないと思うんだけど……」


「歳は関係ないだろう」


突然後ろから声がして振り返ると、ユーズ様が渋い顔をして話に割ってはいってきた。すぐそばにはランス様、ロイ様もいる。


「いいか、虹の力を持つ聖女が狙われているんだ。確かに今のところはまだ若い聖女だけが拐われているが、今後どうなるかわからない。ちゃんと自覚してくれよ」


ユーズ様はベル様に向かって少し厳しめの言葉を投げ掛けた。でもそこにはベル様を心配する気持ちがちゃんと込められているのがわかる。何より、ベル様を見つめるユーズ様の瞳が……不安と同時に守り抜くという固い意志が感じられるのだ。


「セシルやリラも同じだ。ランスやロイが何があっても守るだろうが、そうだとしても二人がいない所で何かあれば対応が遅れてしまう。くれぐれも一人での行動は控えてくれ」





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