2話:占奈さんの占い結果【傘】
太陽が照り付け、夏の青空が広がる。蝉の鳴き声が遠くから聞こえ、校門までの道に陽炎が揺らめいている。
歩きながらふと、今日は水晶玉が壊れてしまったから占いが無いのではないかと気づく。既に、毎朝の日課になっていたから、寂しさを感じる。
あれ、いつも占いのことばかりで、
「おはようございます。
「おはよう。
(もしかして、我慢できずに一人で買いに行ってしまったのか!)
その瞬間、心臓がドキリと音を立てた。胸の奥がギュッと締め付けられるような感覚に襲われ、頭の中が真っ白になる。
昨日の
「あんなこともあろうかと、水晶玉は家にストックしているんだよ!」
嬉しそうに元気に答える
「え、家にまだあるの?」
という事実に少し引いてしまった。その驚きは表情にも現れ、目を見開いてしまった。それを見た
「あ、でも壊れちゃった水晶玉はお気に入りの水晶玉だったから、買いに行くの付き合ってね」
がっかりしていたように見えていたのだろうか。
でも、その訂正はとても嬉しい。水晶玉デートが確約されたものだ。
僕は胸の中でホッとしつつも、同時に戸惑いも感じていた。正直、水晶玉の見た目の違いが判らない。今日のもいつものと同じものにしか見えない。
それでも、彼女と一緒に過ごせる時間が増えることに、やっぱり嬉しさがこみ上げてきた。
椅子に座ると、
「今日の
水晶玉に手をかざし、真剣に見つめている。
「えーっとね、見えたよ! 傘! いいことあるよ~」
傘?雨でも降るのかな。置き傘をいつもしているから、雨が降っても大丈夫。予報では1日晴れだし、外の様子を見ても雨が降る気配はない。
今日は何が起こるのかわからないこの感じ、考えているこの時間が意外と楽しい。
「ありがとう、
いつも通りお礼を言って、授業の準備をする。
授業中の
僕は
(僕の気持ちとか占いでは、わからないよな……)
ふと、不安に感じた。こんな失礼なこと思ってしまったのがばれたら、嫌われちゃう。
もし
心の中で祈るように、
(どうか気づかないで)
と繰り返す。そんな自分が情けないと思いながらも、やっぱり
昼休みになると
今日こそは占い以外の話をしたいと思ったが、
午後の授業が終わり、帰りのホームルームが始まると突然、想像以上の大雨が降りだした。窓の外は灰色の空が広がり、大きな雨粒が次々とガラスに打ちつける。
置き傘しておいて良かった。
占いが当たったよと
「
「うん。雨予報じゃ無かったので」
そこは占いで分からないんだなと思いながらも、僕の心は一瞬で高鳴った。
これは一緒に帰る絶好のチャンスだ。勇気を振り絞って言葉を続けた。
「僕、置き傘しているから、その、嫌じゃなかったら送ってあげるなんて……」
一瞬の沈黙が僕には永遠のように感じられた。心臓がドキドキと音を立て、手のひらが汗ばんでくる。
「いいの!やった!」
僕たちは教室を出て、廊下を歩き始めた。窓の外を見ると、雨は勢いを増している。廊下の床には雨で濡れた靴跡がいくつも残っていて、僕たちはそれを避けながら歩く。
「あれ、傘が無い……」
朝には数本刺さっていたはずの傘立ては、すっかり空っぽだった。驚きと失望が一気に押し寄せる。
「ごめん、
「占いで傘がいいこと出たのに、また外れちゃった、ごめんね」
僕の胸には深い落胆が広がった。
一方、
「
人が多くて込んでいたので、人がいない静かな場所に移る。
教室の窓から、どしゃぶりの雨を二人で眺めていた。
(何か、話さないと……)
「う、
占い以外の話題を考えていたのに、とっさに出てきたのが、占いの話だった。
さっきまで占いが外れたことに落ち込んでいた
「占いってすごいんだよ。私のお祖母ちゃんが占い師でね。みんなが幸せになっていくの。落ち込んでいた人には、希望を与えたり。警告を出して失敗しないようにしたり。そんなお祖母ちゃんを見て、私もいろんな人幸せにしたいなーって思ってね。お母さんにはほどほどにしなさいって言われてるけどね。ほとんど当たらないし。ごめんね、人に話すの初めてで、テンション上がっちゃった」
「
「ふふ、ありがとう。
いつもより少し静かに、外を見続けながらしゃべっていた。
気が付くと、外の雨は上がり、大きな水たまりに反射して、太陽が煌々と照りだした。大きな虹がかかる。
「
「い、いいんですか!」
またもや敬語になりながら、スマホを出した。
心臓がドキドキと音を立てる。彼女との距離が一気に近づく予感がした。
「
「土曜日の予定、考えなきゃだしね。これからもよろしくね。
傘はなくなってしまったけど、いいことあったよ!
占い当たっているよ!
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