魔術師の起源

そして話は冒頭に遡る。


「...じゃあ説明するけど、これだけは約束してほしい」


「なんでしょう?」


「今から話すことは他言無用でね?それこそ話したら...飛ぶよ?」


彼は首に指を当てて言った、きっと言ってしまっては殺されるかそれに等しい罰を与えられるということだろう。

ゴクリ、と唾を飲み込んだ。


「えっと...何年前だっけな、まあとにかくすっごーく昔、キリストなんてまだ生まれてなかった時代、そうだ!5万年前だ!その時代に1人のヒトがいたんだよ、その人が確かムー大陸にたどり着いてとある穴を見つけたんだ」


「穴?」


「そう、とんでもない量の光が吹き出す穴、そこにその人は足を滑らせて落っこちちゃったんだ!穴の深さはおよそ300メートル!」


「さ、さんびゃく!?そんな深いの!?」


「でもその光を浴びた男性は覚醒して魔術師になったんだ、それで助かって、始祖になったってわけ」



「へえ...じゃあなんであなた達は魔術師に?穴におちたんですか?」


「いやいや、そんな光の吹き出す穴が何個もあったら世界中が大パニックだよ、ボク達が魔術師なのはね、皆始祖が血縁だからだよ、ボクも、龍我も」


龍我といって隣の少年を指さした、きっと彼が龍我という名前なのだろう。


「ん?てことは2人は親戚なんですか?」


「まあ、親戚っちゃあ親戚だけど赤の他人と同じぐらい血は薄いぜ?」


確かに5万年も昔の人物の血縁と言ってもそれはとんでもなく遠い血縁と言って

いいだろう、最早誰が血縁なのかすらわからないだろう。

 

「で、個人で別々の術式を身に宿してるからそれを固有術式、みんなが使えるように始祖が作ったのが基本術式ってわけ、術式の使用には魔力を消費するから元からなかったり切れてたりすると使えなくなるんだ」


「なるほど...じゃあなんでお二人はあんなことを?」


魔術師とヒトの違いはよくわかった、でも何故2人はあんな殺し合いみたいなことをしていたのだろう。


「ああ、編入試験だよ、学校の」


「試験、ですか?」


「そう、各国に一つだけ魔術学園ってのがあって、それの高等部の編入試験をやってたんだ」


「へえ...そんなのが...」


「まあほぼ受かんないから10年に1人いればいいほうだけどね」


「10年!?」


「うん、内容が同級生500人のトップ9名のうち誰かの血を手に入れること、この序列一桁がめちゃくちゃ強くてね〜、二桁じゃ刃が立たないんだよ、おまけに今年の一桁は過去最高レベルだからね、で龍我が序列第9席だからボクは合格ってわけ」


「はあ...俺負けちまったし落とされるかな...」


なんだか一気にすごい情報が頭に詰め込まれた。


「...あっ、そういえば」


「どうしたの?」


「あの“速化”って言った時にお二人の脚になんかちっちゃい光が見えたんですけど、あれってなんですか?」


2人は何故か黙った、なにかおかしなことを言ったのだろうか。


「やっぱりかぁ......確認だけどキミ魔術師じゃないよね?」


「じゃなかったらこんなに驚きませんよ?」


「......さて、キミって進路は決まってる?」


「どうしたんですか藪から棒に...まだ決まってませんよ」


少年は一気に明るいけどドス黒い笑顔を放った、なんか嫌な予感がする。


「ならよかった!キミの魔術学園高等部への編入が決まったよ!」


「...よく聞き取れませんでした、もう一度言ってくれませんか?」


「キミの魔術学園高等部への編入が決まったよ!」


彼はさっきと全く同じ顔で全く同じことを全く同じテンションで言った。


「はああぁぁぁぁ!?」


私の絶叫が駐車場に響き渡った。

突然決定された私の進路はまさかの魔術師の学校だった。


「なんで!?私ただのヒトだよ!?」


「言ったでしょ?良い眼をしているって、キミの眼、魔眼だよ、魔術師の200人に1人の確率で持って生まれるやつ、激レア、SSR、それをキミのようなただのヒトが持っているんだ、そりゃあ学園が欲しがらないわけ無いだろう?」


「ええ...ウソでしょ...なんで私そんな眼してるの...」


「知らないよ」


「いいなあ...俺が死にものぐるいで突破した入学試験を一瞬でスキップするなんて...」


ただのヒトだった私は、生まれ持っている碧眼のせいで、いろんな進路がなくなり、私立魔術師養成学園高等部、通称魔術学園高等部への編入が決まったのだった。



これが後に魔王と呼ばれる少年と、世界の命運を握る少女の出会いだった。





後書き

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