第20話

 入学して3年が経った。貴族学園の卒業式はパーティーで終わる。俺とミリアはドレスを着て卒業パーティーに出席していた。


「お姉さま、綺麗です」

「ミリアも可愛いよ」


 この3年間は平和だった。ミリアの護衛だったがミリアが危険にさらされることはなかった。3年もメアリーの姿で過ごしていると女になるのも慣れてきたものだ。


「ミリアもそろそろ婚約者決めないとね」

「私はお姉さまがいればいいです」


 ミリアはレズっ気があるようだ。俺がいるせいで婚約者が決まらないようだ。


「ミリア、メアリー、俺も婚約者がいないんだ。どっちかうちの王妃になってくれないか?」


 バッカスが話しかけてきた。最近は俺だけじゃなくてミリアにも婚約をお願いするようになった。


「お断りします」

「お断りします」

「ははっ、そうか。じゃあ今日でお別れだな。じゃあなミリアとメアリー!」


 バッカスは去っていった。もう会うことはないだろう。


「ミリアは婚約してもよかったんじゃないのか?私はいつかいなくなる」

「私はお姉さまがいなくなったら私も家出します」


 ミリアは冒険者ギルドに出入りするぐらいだし。一人でも生きていけるのだろう。


「そうか、それは困ったな。だが今日で護衛は終わりだ。さらばだ」


 俺は飛翔魔法フライを唱えた。このまま山奥に逃げてしまおう。


「お姉さまー!行っちゃやだ!」


 ミリアの声を背中で浴びながら俺は山奥に消えていった。

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