日常の、イラッとすること!
崔 梨遙(再)
1話完結:1800字
取引先の某人事課長(別の作品に出て来た採用力が半端じゃない課長ではない)から、合コンのセッティングを依頼された。逆だったのかな? 女性陣の方から依頼されたのだろうか? そこは思い出せない。とにかくどちらかから依頼されて、合コンをセッティングすることになったのだ。
その課長とは公私ともに親しい。課長に女友達の青子(女性陣のリーダー)の連絡先を伝え、青子に課長の連絡先を伝えて、課長と青子で連絡をとってもらい、次の土曜の合コンがセッティングされた……らしい。僕は知らない。僕は参加しなかったから。課長は自分の会社の若手スタッフを連れて行くと言っていた。課長は上機嫌だった。若手スタッフも上機嫌だったらしい。やはり、独身の人には出会いを求めている人が多いのかもしれない。草食系男子が増えて、結婚願望の無い人も増えていると言われているが。
しかし、僕は出席しないので、我関せず! と自分の仕事をしていた。課長が喜んでくれていたので僕の気分も良かった。だが、そこで青子から僕に電話があった。
「なんなん? 今、忙しいんやけど」
「あのなぁ、合コンの件やねんけど」
「僕は行かへんから何も知らんで」
「ちゃうねん、5対5の合コンやねんけど、女の子5人ともお金が無いから、男性陣に奢ってほしいねん」
「ほな、課長さんに正直に言うたらええやんか」
「私からは言いにくいやんか、せやから、崔さんから言うといてほしいねんけど」
「わかった、言うとくわ。僕は参加せえへんし、正直、面倒臭いけど」
「はい」
「崔です」
「おお、崔さん、どうしたん?」
「課長、合コンの件ですが、女性陣が『金が無いから奢ってほしい』と言うてますわ、それでもいいですか?」
「わかった、わかった、任せとけ」
「ほな、すみませんが、よろしくお願いします」
土曜日の夕方、青子から電話があった。
「何? 合コンは? もう終わったんか? 早いな」
「夕食の前に解散になったで」
「あ、そうなんや。てっきり夜までコースやと思ってたけど。夕食は無かったんやね。でも、ちょっと早い気がするけど」
「崔さん、私、奢ってくれって言いましたよね? なのに、食事もカラオケも全部割り勘やったんですけど、どういうことですか?」
「僕に言われても、知らんやんか」
「腹が立つから、課長にビシッと言うといてください」
「ちなみに、カップルは何組成立したん?」
「1組も成立してませんよ」
「あ、そうなんや」
「奢ってくれへんかったから、女性陣はみんな怒ってますよ」
「わかった、わかった。とりあえず、課長に電話してみるわ。それでええやろ?」
そこで僕も気を悪くした。課長には、事前に“女性陣の分は奢ってあげてほしい”とシッカリ伝えていたのだ。課長は“わかった、任せとけ”と言っていた。間違いなく言っていた。だから安心していたのに。女性陣からのクレームが僕の所に来たら、僕も気分が悪くなる。“電話しておく”と言いつつ電話をしないという手もあったが、腹が立ったので、僕は本当に課長に電話した。
「はい」
「崔です」
「おお、崔さん、どうしたん?」
「課長? 合コンの件なんですけど」
「何? なんかあった?」
「事前に奢ってほしいと言ってたのに、割り勘やったから女性陣がみんな怒ってますよ。なんで奢ってあげなかったんですか? ランチとカラオケやったら、奢ったとしても安いもんでしょう?」
「崔君、奢るかどうかは、僕等が決めることや。崔君には関係無い」
そう言われて、イラッとした。
「いやいや、実際こうやって板挟みになってるんですから、関係はあるでしょう? 僕が女性陣から怒られたんですよ」
「あのなぁ、崔さんは来なかったから知らんやろうけど」
「けど?」
「5人全員ブサイクやったんや!」
「え!」
「合コンが終わった後、男性陣からのクレームが俺の所に来たんや。みんなブーブー言うてたわ。俺も大変やったんや」
「ああ、なるほど! いやいや、それでも事前に“奢ってほしい”と言ってたんやから、ここは奢ってほしかったです」
「もう、過ぎたことや。もう、ええやんか」
やっぱり納得出来ない僕だった。めっちゃ男の都合だったから。僕はイラッとした。つまらないことで気分を害してしまった。やっぱり、合コンのセッティングなんかしない方がいい。
日常の、イラッとすること! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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