この時やっと僕は今東京にいるんだと実感できたんや

悪本不真面目(アクモトフマジメ)

第1話

 上京。実家におりたくなく、どうせならと東京に住むことにした僕は今東京駅にいた。と言っても大阪も都会な方で、そんなに差を感じなかった。


 もっと人が多いと思っていたが、言うてこれも大阪と大して変わらなく、それでも車内はギュウギュウなのだろうと思い、僕は山の手線へ乗った。


 これも又、車内の混み様も大阪と大して変わらず座れはしないが、まぁ別にギュウギュウではない。


 後に調布に住む友達の家へ行き、朝帰りで6時頃の出勤ラッシュに乗った新宿方面の京王線電車で東京の恐ろしさを味わうことにはなるとは、この時の僕には知る由もなかった。


 大阪にも山手線に似た電車があって、それは環状線である。山手線同様ぐるぐると一周する電車だ。しかし山手線と違い、環状線は他の路線の電車も入ってくる。そのうちの一つがJR桜島線、通称JRゆめ咲線だ。この路線にはユニバーサルスタジオ駅があり、文字通りあのユニーバーサルスタジオジャパンの最寄り駅となる。だから環状線を乗ろうとするとユニバーサルスタジオジャパンのデザインされた電車によく乗れる。車内にもよくユニバーサルの広告も貼られていた。


 山手線の車内を見ると、ユニバーサルの広告が壁に貼られていた。なんやねん。と僕は思った。全然東京感ないなぁ。車内の混み具合もJR環状線と同じやし、ここホンマは大阪の環状線とちゃうの?・・・・・・でもさすがユニバやな。東京でもやっぱ人気なんやな・・・・・・じーっと広告を見ていた。しかし、よく見るとだ。


 「これユニバーサルスタジオやなくて、ユニバーサルスタジオやんか!」


 大阪では考えられへんかった。わざわざ近くにあるユニバーサルスタジオを差し置いてユニバーサルスタジオの広告を出すなど・・・・・・


 僕はこのユニバーサルスタジオの広告を見て、やっと今自分は大阪やなくて東京に来たんやなと実感できた。


 車内をよく見たら吊革広告や他に貼られている広告なども、どこかの旅行代理店のシンガポールフェアで、みんなでシンガポールへ行こうと宣伝しまくっていた。


 僕がいた車内はシンガポールで染められていたんや。


 きっと僕はシンガポールへ行ってマーライオンを見ながらこう言うだろう。

「ああ、東京に来たんだな」と。

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この時やっと僕は今東京にいるんだと実感できたんや 悪本不真面目(アクモトフマジメ) @saikindou0615

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