第11話 タヌキ団幹部マキと初めて多田くんは顔を合わす
引きずられていたコスモレッドは二人の手を振りほどき臨戦態勢をとる。コスモソードがいつの間にか現れていた。コスモブルーが叫ぶ。
「多田くん! 早くこっちにきて! そいつは危険なの!」
「え、コスモブルーも僕の名前知ってくれているんですか?」
多田くんは怪人を前にして恐怖していたが、名前を呼ばれて少し嬉しくなっていた。ここまで怪人との戦いに巻き込まれてばかりだったが、巻き込まれたおかげでヒーローたちから名前覚えてもらえたらしい。
「そんなこといいから! ちなみに名前を知っているのはレッド呼んでいたからよ!」
一気に目の前の怪人に対しての恐怖が溢れてきた。一歩も動けずにいた。
「いやいや、ワタシはコスモレンジャーたちに用があるんですよ。この方ではございません」
ゆっくりと歩き始める怪人。歩いてはいるが、どこか宙に浮いているように多田くんの横を通り過ぎていく。一瞬会釈したような動作を見せるが、その怪人はコスモレンジャーに向かって歩き続ける。
「オレがやってやるよ。この前はまともに戦ってくれなかったからな!」
「グリーン! 一人で戦うのはやめて! この前二人でやっても全然敵わなかったじゃない」
「あれはあいつがまともに戦ってなかったからだろ、ふざけた動きでのらりくらりしやがって。今回は正々堂々戦ってもらうぞ」
コスモグリーンが言い終わると怪人は歩みを止めムンクの叫びのような顔抱えてしゃがみこんだ。
「・・・・・・ははは、いやぁ。ふはははは・・・・・・」
「なにがおかしいんだ?」
「いや正々堂々戦っていれば勝てたみたいなことを言うので、なんて面白い冗談を言うのかと思いまして」
「そうだろ! のらりくらりやりやがって真正面からこいよ!」
「これだからヒーローは嫌ですね。正面からぶつからなきゃいけない理由でもあるんですか。敵であるわたしたちの目的を達成するのにあなたたちは邪魔なのです。あらゆる手を使って倒すのは普通でしょう。ですが、そもそもこの前はのらりくらりしていたわけではなく、コスモレンジャーの攻撃がチープすぎて反撃する気になれなかっただけです。実力差というものを教えて差し上げましょうか」
そう言うとムンクの怪人は音もたてず瞬時にコスモグリーンの目の前に移動した。
「なっ・・・・・・」 ドォン!!!
コスモグリーンは一気に後ろに吹っ飛ばされる。ムンクの怪人はなにか動いたようには見えなかった。見えなかったがなにかしたのだ。コスモグリーンは地面にたたきつけられ悶えている。
「グリーン! 許さねぇ。名前も名乗らない怪人! 許さんぞ」
(許さないポイントそこかよ)と多田くんは思った。
コスモソードをあらゆる方向に振るうコスモレッド。怒りに我を忘れているかと思えばその動きはいっさい無駄のない動きであった。ただ、その刃は届かない。
「いい動きですね。さすがといったところでしょうか。当たっていないですがね」
「なんであたらないんだ・・・・・・」
「これならどう! 援護するわレッド」
コスモブルーも参戦しムンクの怪人に対し絶え間なく攻撃し続ける二人。それでもなお攻撃はあたらない。
「遅い! 遅いですね! これでもヒーローなのですか。いままでの怪人たちはなにに手間取っていたのか意味不明ですね」
「こいつは別格の強さだ。名を名乗れよ!」
(まだそこ気にしてるのかレッド。それに僕のこと忘れ去られている気がする。逃げないとまずいかな)
「うるさいヒーローですね。戦いながらでいいので名乗らせていただきましょう。わたくしはタヌキ団幹部マキと申します」
「ムンクみたいな仮面、全然関係ないじゃん! あんだけ引っ張ってたのに普通の名前じゃん!」
思わず多田くんは口に出してしまった。戦っていた三人は一様にこちらをみて動きが止まっている。
「ひねりがないといわれましても、タヌキ団創設者により授けられた名前ですので」
「まぁいい! 幹部マキ! お前とやりあうためには力が必要だ。ブルー! コスモソードを渡してくれ」
「あれをやるのね。わかったわ」
コスモブルーのソードを受け取ったレッドは二つのソードを空に向かって交差する。
「ソードフュー・・・・・・」
「させませんよ」
ドォォン!
「がはっ・・・・・・」
レッドは下から突き上げられ、宙に舞った。地面から衝撃波がきたかのようだった。
「卑怯よ! 幹部マキ! フュージョン中に攻撃するなんて」
「卑怯? これがもとより怪人の本質ですよ。いちいち変身している過程をみる義務なんてありませんのでね。毎回聞かされる名乗りも同様です。聞き飽きたんですよ! 怪人の数だけ聞かされるなんてね!」
(たしかにそうなんだけど、後半は苦情だな)
「じゃあこれも許してくれるよなぁ!」
幹部マキの後ろから突然グリーンが現れ攻撃を繰り出す。しかし、その刃も届かない。二本の指でその刃は受け止められた。
「許します許しますとも。攻撃は許しませんけどねぇ。いちいち声にだすからばれるんですよぉ。意味のない攻撃!」
「くはぁっ・・・・・・、く、そがぁ・・・・・・」
コスモソードはそのまま折られ、真正面から反撃を受ける。またも飛ばされ、地面にたたきつけられる。一言残し、動かなくなるグリーン。その上には葉が数枚落ちてきていた。多田くんは自身を中心として繰り広げられる戦いをただ震えながら眺めていることしかできなかった。
「いや、意味ならあったぜ! この隙にフュージョンだ」
「いやなんで声にだしちゃうかな!」多田くんは思わず叫んでいた。
案の定、幹部マキは攻撃を繰り出す。衝撃波のようなものかまたダメだ。
「させないわ!」
「ばか、ブルー! 援護だけでいいって言ったろ!」
「レッドは出たとこ勝負で自分が傷つくことを気にしないんだから、もっと協力させてよね。倒しなさいよ」
衝撃波で飛ばされるコスモブルーは体に力が入っていないかのように飛ばされる。攻撃によって意識を失ってしまったのか。
「あぁぁああ! あとは任せろぉ!」
「コスモフュージョン!」
「だから遅いんですよ! 会話の前から準備しておくべきでしたね」
(これは本当に終わった・・・・・・)
ブオォォオンっ!!!
突然強烈な風が吹き、幹部マキを襲う。近くにいた多田くんも巻き込まれたかと思ったが、多田くんの周りにはなぜか風が巻き起こっていなかった。
「な、なんだこれは身動きがとれない・・・・・・」
「コスモレッド・デュアルブレードモード」
(いやなんか剣両手に持っているだけな気がするけど、中身がパワーアップしてるのか?)
多田くんはほぼかわらぬ見た目に疑問を持っていたが、ひとまず戦況をみつめることにした。
コスモレッドは流れるように攻撃を繰り出し続ける。余裕をもって避けていた幹部マキもだんだんと表情に焦りがみえる。先ほどまで見えていた歯はみえず真一文字にかみしめるような表情になっている。
「さっきまでの余裕はどうしたっ!」
「少しばかり力をいれないとだめみたいなんでねぇ。それに邪魔も入りましたから、ここらで退散としましょうか」
「邪魔? なんのことだ?」
「頭がお花畑ですねぇ。助けられたというのに」
「ついでにおまけもしてあげましょう」
タヌキ団幹部マキが指をパチンと鳴らすと多田くんは意識を失った。
────翌日
炎魔はどこで見つけたのかわからない大きな絆創膏を頬に張り、水連寺は学校を休んだ。隣のクラスの風岡は無断欠席したらしい。
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