幕間 怪人たちの日常

怪人たちは会議していた

この世界には怪人もいれば魔人もいるし未確認生命体もいる

言葉が通じないやつもいるが一応、各々の敵は違うのでなんとかすみ分けている状況だ

怪人たち、タヌキ団の目的は地球侵略、そしてそれを阻むコスモレンジャーの抹殺だ。いつの間にか地球には怪人たち以外にも現れていて、仮にコスモレンジャーを倒しても魔法少女や強化人間やらを倒す必要がでてくるのかもしれない。


「マキさん、なんだかここの空間ピリついてないですか?」


骸骨のお面のようなものを付けた戦闘員が話しかけてくる。基本的に戦闘員は「イィン」としか発言できないはずなのでこの戦闘員は突然変異を起こした少しばかり力をもった存在なのだろう。幹部に対していきなり話しかけてくるのは無礼だと思うが、はかなく散ってしまう命。まぁいいだろ。


「これからタヌキ団のボスがくるからな」

「ボス? もともとのボスは倒されたって聞いてますが」

「どれくらい前だったか・・・・・・あの方は突然現れて、我らのボスを一瞬で蹴散らし、トップに立った怪人。トップに立つに相応しい力をもっておられるお方だ」

「急にボスが変わって納得しているんですか?」

「・・・・・・」

「ねぇマキさん! 急なポッと出の奴に支配されるなんて怪人としてどうなんですか! 我ら戦闘員は怪人様たちに付き従う存在。そして怪人たちは群れない孤独な集団だったはずです」


 こいつは感じ切れていない。存在を観測できていない。少しばかり有望な突然変異の戦闘員だと思ったが、あくまで戦闘員は戦闘員だったのだ。もうあの方はこの空間に存在している。ワタシだって観測しきれていない。存在があるのはあかるがその姿をとらえようと視認しようとしてもできない。もやがかかったような、黒い大きい影としか認識できない。黒い影だからこそ恐怖を感じるのかもしれない。タヌキ団を支配した『怪人タニ』は視認できない。ふと、思ったがあの外身の小僧に名前がださいと言われてしまったことを思いだした。もともと怪人に名前なんてなかった。かつてのボスが見た目から、ハサミ男だったり、トラックマンだったり名前をつけて地球人を襲わせていた。今もなおそれはかわらないが、力あるものは怪人の名前をつけるにあたり人間らしい名前があてがわれている。理由はわからない。ださいという感情を持ち合わせていなかったが、なぜこの名前を付けてくださったのか疑問が湧いた。


「そこの戦闘員、僕がトップであることに不満か?」


 突然話しかけられ、それまで戦闘員に見えていなかった存在が観測できたのであろう。『タニ』が接触することによってもその存在を観測することができる。『タニ』は観測しようとしなければ存在せず、向こうから干渉してくれば観測できる存在。


「・・・・・・う、うわぁぁぁぁぁぁぁ」


 その戦闘員も存在を観測したのだろう。腰が抜けたように倒れる。その存在から遠ざかるように逃げようとするが、『タニ』が逃がさない。


「黒い、黒いなにかがぁ。あぁぁあああ」

「話せる戦闘員だから、少し見込みがあると思ったが、僕をみて錯乱してしまったね。貴重なサンプルとしてとっておくよ」


 そう言って黒い影は手のようなものを上げると、その戦闘員は一瞬にして圧縮され赤黒い球体へと変わった。


「なかなか濁っているけれど、赤みが少しある。これはいい」


 我らは地球侵略と同時に自身の力の増幅も目的としている。力を与える赤い石を求めて日々怪人たちの幹部は原石となる人間を集め、研究している。


「マキこの前はコスモレンジャーをあと一歩のところまで追い詰めたらしいな」

 身をかがめ跪き首を垂れる。

「追い詰めた・・・・・・だけでございます。最終的にとどめはさせておりません」

「まぁいい。マキを見て、ある程度幹部たちはコスモレンジャーに対抗できることがわかっただろう。ただ、あいつらは複数人で戦いを挑んでくる。だから、こちらも複数人でということで戦闘員を派遣しているが、これが使いものにならない。尺伸ばしにしか使えない」

「尺伸ばし・・・・・・ですか」

「そこでだ。この赤い魔水晶を幹部たちには持たせてやる。怪人を生み出し、その魔水晶を使うといい。より強い怪人が生み出せるはずだ。戦闘員たちに使って、尺をさらに伸ばすもよし、使い方は君らしだいだ」


「さぁコスモレンジャーを叩き潰そうじゃないか!」


 うぉおおおぉおお!


 怪人たちの歓声が空間に響き渡った。


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