幻想の月と真実の疾風

塚本 季叡

暑いからこそ……

 数日前、京都も遅ればせながら梅雨に入った。何となくだが夏の始まりを感じる。

 ご存知の方も多いだろうが、京都は三方を山に囲まれた盆地だ。そのためか湿気や熱がこもりやすい土地柄となっている。最近では日本全国どこでも暑いと思うけれども京都の暑さは質が異なる。ちょっと陰険な気がするのだ。そんな陰険な暑さを誇るこの街で私はもう30年以上も暮らしている。それにも関わらず暑さにめっぽう弱いのだから洒落にならない。

 思えば私が子供の時にはいくら暑いと言ったって40℃近い気温を記録することなんて無かったし、朝からエアコンが効いているなんてことも無かった。それが今では昼夜問わず空調の管理が行き届いた部屋で生活していて汗をかくことは殆どと断言して良いほど無くなっている。まるで温室育ちの野菜みたいに暑さや寒さに敏感に反応するようになった。大人になったことでその気になれば24時間・365日同じ気候で過ごせるわけだ。

 しかしその弊害として身体が暑さに適応出来なくなってくる。ここ数年暑さのせいで通勤途中に具合が悪くなって帰る羽目になることもある。そこでなるべくそうならないように日傘を差し、首元にはネッククーラーを巻くなどちょっとした工夫をこらしてみる。それにプラスして食事と睡眠はしっかり取るように心掛け、体力作りのためにジムに行ったりしている。これで今年は少しでも楽になれたら良いのだが……。


 話はガラッと変わるが、我が家は夏になると食卓にカレーがよく出てくる。もちろん年中食べているとは思うけれども、“夏=カレー”という公式がすっかり定着している。しかも辛い方が美味しく感じる。夏はスパイシーなものが恋しくなるのだろうか?

 そして涼を感じられる冷奴も多い。まあ、これは父の影響もあるかもしれない。父は暑くなるとすぐに冷奴や魚そうめんを提案する。実に京都人らしい考えだ。

 確かに京の夏らしいがどうしてもいささか淡白なイメージになってしまう。まあ、美味しいのであまり文句は無いのだが。きちんと口の中もさっぱりするし、涼しげだし。


 とまあ、色々と言ってはみたものの、要するに暑いからこそ対策をしながら夏を乗り切ろうとしている話をしたかっただけだ。皆様も熱中症にはお気を付けてすぐそこまでせまり来る良い夏をお過ごし下さい。

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