捜査

 Side 辻沢 風花


 =翌日・朝・大阪日本橋のホテル、風花が滞在しているホテルの部屋=


 捜査は振り出しに戻った。

 詳しい状況は分からないが、明智刑事によると警察が押収した証拠は全部ブラッドスペクターに証拠を隠滅させられたそうだ。

 相手が相手とはいえ、警察の大失態である。

 風花が踏み込んだ倉庫の方も爆発炎上して証拠隠滅させられたそうだ。

 ロボルガーX、火弾 竜吾がブラッドスペクターの黒幕説をひっくり返すには至らない。


どうしていいか分からず、どうしようかと悩んだ時、スマホが鳴り響く。

相手の名前は不明だ。


「もしもし」


『Kだ。昨日は散々だったな』


 相手は謎の情報提供者Kだ。

 前回と同じく声に機械の手が加えられている。

 捜査が手詰まりな風花は警戒しながらも「用はなんですか?」と話を聞く。


『日本橋で偽ロボルガー事件が起きる前に発生した、同じく日本橋近辺で起きた刑事殺しの事件を追ってみるといい』


「それが今回の事件とどう言う関係があるんですか?」


 刑事殺しと偽ロボルガーの事件。

 どう関りがあるのか掴めなかった。


『殺された刑事、白井刑事はブラッドスペクターを追っていた』


「なんですって!?」


 思わず声を荒らげる。

 殺された刑事がブラッドスペクターを追っていて、それが偽ロボルガー事件が起きる前に殺された。

 無関係とは思えない。


『伝えるべき情報は伝えた。私はこれで失礼する』


 言うだけ言ってKは電話を切った。

 

(気になりますが刑事殺しを追った方が得策ですね)

 

 そう思って風花は明智に連絡をとる。 

 ブルーセイバー、青峰 せいなは無視する形だ。



 =朝・大阪日本橋・ホテルのロビー=


 ホテルのロビーと待ち構えていた青峰 せいなにバッタリ遭遇した風花。

 せいなは「探しましたよ!!」と言って近づいてきた。


「よくこの場所が分かりましたね?」


「SNSって凄いんですよ?」


「へ、へぇ~SNSで――」


 辻沢 風花は自分が変身ヒロインである事を思い出す。

 今回の偽物騒動といい、自分を探し当てた事といい、SNSって恐いなと風花は思った。

 せいなは「感心している場合?」と言ってこう尋ねて来る。


「私と組むって言ったじゃん。これでも私、正義のヒロインなんだから頼ってくれないと悲しいんだぞ?」


「言ってもデビューしたの確か最近の話でしょ? つまり私が先輩です」


「まあそう言う細かい事は置いといて――」


 と、せいなは話を逸らす。

 

「風花は昨日大手柄だったけど、何か掴んだの?」


「――今回の事件、ブラッドスペクターの残党が絡んだ大事件です。私のような経験のある正義のヒロインはともかく、アナタのような新米ヒーローには荷が重いです」


 風花は普段の自信満々な態度でせいなに突き放すように言う。

 

「じゃあこの事件解決すれば私たち大手柄じゃん!」


 だがせいなは恐ろしさではなく、捕らぬ狸の皮算用をしてはしゃぐ。

 一瞬風花は呆気に取られるが慌てて風花は、 


「じょ、冗談のつもりで言ったのではありません! 本気ですよ!?」


 と、返すがせいなは


「私これでもヒーローに憧れてこの世界に入った口なんだよね。ここで実績をあげれば、ヒーローになれるかもしれない」


 そう語るせいな。

 風花は折れて「痛い目見て後悔してもしりませんよ」と先輩ヒーロー風を吹かす。


「んじゃあ認めて頂いたところで早速お互いの情報を纏めましょう」


「それなんですが――」


 風花は持っている情報を話した。


 

 =朝・大阪日本橋近くの公園=


 朝方。

 人よりもヒーローや警察、自衛隊のパトロール。

 時折ホームレスの姿もあった。

 日本橋の店は大体11時から12時に開店なので人気は少ない。

 

 そんな街中を見て、賑わっている街から少し外れた場所にある公園で明智刑事と合流した。

 公園を指定したのは明智刑事だ。

 

 公園に到着すると明智刑事がいた。


「君達二人かい?」


 そう尋ねる明智刑事に風花は「せいなと知り合いだったんですか?」と返す。

 風花の言葉に「まあね」と明智刑事は言って、「私これでも友達が多いですから」とせいなは何故か胸を張って自慢げに言う。


「で、刑事殺しの事について聞きたいんだってね?」


「ええ、今回の事件と繋がりがあるらしいんです」


「ブラッドスペクターだね?」


 明智刑事はブラッドスペクターを話題に出す。

 

「僕もその事件を追っているんだ」


「と言うと?」


「殺された白井さんは――僕の相棒だった」


「――すみません」


 風花も、せいなもどう言えば良いのか悩む。

 

「白井さんはブラッドスペクターを追っている傍ら、ある人物を調査していた」


「ある人物とは?」


「堺 タカトシ、大阪府の知事だ」


 その名が出て「大物が出て来ましたね~」とせいなは呑気に言っていた。

 

「堺知事はブラッドスペクターが残党化する前から繋がりを持ち、組織内でもそれなりの地位にいるとされる」


「詳しいですね」


 風花が尋ねる。


「白井さんに聞いたのさ」


 と、答えた。

 せいなは「悪の組織と繋がっている権力者って本当にいるんですね」などと言う。


「つまり堺知事を追えば火弾 竜吾を嵌めた理由も分かるんですね」

 

 せいなは置いておいて、風花は話を進める。


「そう言うと思って、スケジュールを調べておいたよ。彼は黒ヶ崎コーポレーションの視察に向かうらしい」


「手際がいいですね」

 

 風花は明智の手腕を褒める。


「黒ヶ崎コーポレーションって確かヒーローを前面に押し出した会社でしたっけ?」


「私も名前は聞いたことがあります。だけど最近名前を聞かないような?」


 せいなの解説を聞いて風花はふと疑問が湧き上がった。

 その答えを知っているらしく、せいなは「実はですね」と前置きして語る。


「宇宙人騒ぎでヒーローたち成果出せなかったせいか、今経営不振とか聞いてます」


「ヒーローを押し出した商売の弊害ですね」


 ヒーローを押し出した商売はヒーローが何らかの失態をするとそのままスポンサーへ諸にダメージを受ける。

 黒ヶ崎コーポレーションは肝心のヒーロー達が一番活躍しなければいけない場面で活躍できなかったのだろう。

 もしくは残酷な人気商売化の弊害かもしれないがと色々と考えたところで風花は思考を切り替える。

  

「善は急げです。黒ヶ崎コーポレーションに向かいましょう」


 先導する様に風花は言った。 


 

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