廃倉庫へ

 Side 辻沢 風花


 =夜・謎の人物Kが教えてくれた埠頭=


 そこに愛車のピンクのバイク、ターボスカッシャーを走らせる。

 辿り着くと潮風の香りが漂う埠頭に辿り着く。

 そこには怪しげな廃倉庫があった。

 遠くにはタンカーが見える。


(またですか――)


 ここでスマホが鳴り響く。

 相手は恐らくKだ。

 風花は律儀に連絡へ応じた。


『辿り着いたようだな』


 謎の人物、Kから連絡が来る。

 

『その倉庫はかつて、切り裂きジャック事件で犯罪の偽造工作のために使われた事もある倉庫だ』


「切り裂きジャック事件――」


 辻沢 風花も聞いた事がある事件だ。

 大阪日本橋で起きた切り裂きジャック事件。

 二度起きているが、有名なのは大阪府議会の議員が関わり、裏社会の人間まで関わった一度目の事件。

 この事件で闇乃 影司は探偵として全国に名を馳せることになった。


『それにしてもこんな怪しい情報と情報源を信じるとは、スタンドプレイは辞めたと思ったのだが』


「私ぐらいの正義のヒロインになればスタンドプレイは問題ないんです!」


 昔の調子で言った。

 風花が言った通り、そう言う部分もあるが罠だと分かって飛び込むのに道連れを作るつもりはなかった。

 電話を切り、 変身してピンクのレオタード型衣装を身に纏い、暗い倉庫の中へと足を踏み入れようとした。

 

「警察?」


 そこに車両がやってくる。


「レイガンスリンガーだね? 私は明智 誠二、警察の人間だ」


 そう言って警察手帳を見せる。

 白髪で眼鏡。

 背もある。

 一見すると刑事ドラマに出て来るの警察エリート刑事と言った感じだ。


「どうしてここに?」


「匿名の通報があってね。ここが怪しいと言う人間がいたんだ」


「そうなんですか?」


 Kが漏らしたのだろうかと考えてしまう。


「ことがことだから、大々的に動けず、私が単独で来たと言う事さ」


「成程」

 

 そう聞くと辻褄が合うようにも聞こえる。

 

「それにしたって不用心です。一人でここに来るなんて」


「まあね。でも君がいるから大丈夫だよ」


「もう――」


 そう言われると悪い気がしない風花だった。

 それにしてもこれだけ話し込んでいるのに廃倉庫が静かすぎる。

 手掛かりがあると言うのは嘘だったのか?

 そう思った時だった。

 

「なに!?」


 廃倉庫から突き破るようにロボルガーXが現れる。

 生体反応なし。

 オートボーグである。


 火弾 竜吾は警察に捕まっている。

 相棒であり、意思を持つバイクでもあり、パワードスーツに変形するロブもだ。

 

 つまり日本橋で現れたのと同様の偽物である。

 レイガンスリンガーとして、辻沢 風花は戦闘態勢を取る。


「下がってください明智さん!!」


「しかし――」


「相手はオートボーグなんです!! 一般人が生身でどうこうなる存在じゃないんです!! 退いてください!!」


 そう言ってロボルガーXとレイガンスリンガーの激しい戦いが始まる。

 中距離ぐらいに距離を保って、手に持った黄金銃を持ち、激しい戦闘を繰り広げる。

 ロボルガーは腕を変形させて大砲にさせ、エネルギー砲を発射していた。


 日本橋に現れた個体は一般人が倒したと聞いたがそれも本当かどうか怪しいものだ。

 オートボーグは人の形をした殺戮兵器で、本来相手にするにはオートボーグかそれに準ずる存在でないと相手にならないのだ。


 世に活躍しているヒーローでも相手にするのは難しい。 

 それは辻沢 風花にとっても同じことだ。 


「やはり本物には及ばない!!」


 辻沢 風花は光線銃で応戦しつつ、避けた相手の腕から放たれた光線による爆風を感じながら空に舞う。

 風花は思う。

 本物のロボルガーには及ばないと。 

 所詮は一般人(?)に殴り倒されるようなポンコツ品なのだと。

 背中のウイングバインダーを巧みに操り、滑空する様にして至近距離に近づき、光線銃の最大出力の一撃を見舞う。 


 ELEGANT-SQUASH!!


 極大の閃光が銃口から放たれる。

 ロボルガーXの頭部を吹き飛ばす。

 頭を無くしたロボルガーXは力なく倒れる。


「どうにか倒したーー」


 ハァハァと呼吸を荒くする。

 ロボルガーXが現れたと言う事は、何か見られたくない物がこの倉庫の中にあると言う事だ。


 すると遠くからサイレンと共に、パトカーの群れが現れた。

 同時に明智刑事が話しかけてくる。 


「凄い戦いだったね。自動操縦式とは言え、ロボルガーに勝つなんて」


「こんなのガワだけが同じの偽物ですよ」


 そう言って倉庫の中へと踏み込もうとする。


「ここから先は僕に任せてくれないか?」


「いえ、この程度疲れたうちに入りません」


 そう言って風花は薄暗い倉庫の中へと入る。

 軽く清掃がなされているのか埃っぽい感じがしない。

 床には足跡の痕が複数見える。

 人気は感じない。

 何処かで息を殺して奇襲の機会を伺っているのだろうか?

 中にあったのはロボルガーが陳列され、整備用の機材に難しそうな雑多な機材が置かれていた。


「ここでの手掛かりを追えば無実を――」


 そこで明智刑事に止められる。


「流石に無理し過ぎだ。ここは我々に任せて休んでくれ。その代わり捜査情報は後日こっそりと教ええてあげるからね?」


「本当ですか?」


「本当だよ。信用ないな」


 疑問に思いながら風花はこの場は警察に任せることにした。



 =夜・大阪日本橋近辺のホテル=


 泊まり込んだホテルで辻沢 風花は捜査が思ったよりも順調に進んでいる事に喜びつつも謎の人物、Kについて不信感を持つ。

 情報は間違っていなかった。

 相手は何者だろうか?

 

 そんな時に風花のスマホに電話が来た。

 相手は青峰 せいなだ。

 きっと単独行動に走ったことに愚痴を言われるのだろうと思った。

 

「どうしたんですか? こんな夜中にーー」


『どうしたじゃないですよ!! 大変です!! 警察がロボルガーに襲撃されたんです!!』


「なっ!?」


 衝撃を受けながらも風花はホテルの部屋を後にした。

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