辻沢 風花、日本橋へ
=数日後=
Side 辻沢 風花
――はぁ!? 火弾 竜吾がブラッドスペクターの残党の通じていた!?
――そんな訳ないじゃないですか!? ありえないですよ!?
――もういいです!! 一人でも私、日本橋へ行きます!!
相方の荻田誠史(おぎた せいじ)にケンカ別れする様にそう言い残し、辻沢 風花は流線的なピンクの専用バイク、最高時速300kmの愛車、ターボスカッシャーに跨り、一人大阪日本橋に向かう。
栄光のナンバー1ヒーロー、火弾 竜吾がブラッドスペクターの残党と繋がっていた。
逮捕したのはあのいけ好かないヒーロー、レッドセイバーこと赤城 レツヤだった。
テレビで「人々の模範となるべきナンバー1ヒーローがこんな悪事をしていたかと思うと、逮捕した僕自身も残念に思います」などと言っていた。
辻沢 風花は火弾 竜吾とはあまり関係はよろしくはないが、そんなちゃちな悪事に手を染めるような人間ではない事は分かっていた。
辻沢 風花は逮捕の発端となった大阪日本橋での偽ロボルガー事件を探るために大阪日本橋へ乗り込むのであった。
火弾 竜吾の心配はしていない。
どうせ何時もの調子で「煙草を吸いたいんだけど、火でも寄こしてくれね?」とか取り調べの警察相手に言ってるんだろう。
それよりも許せないのはこんな陰湿な手で火弾 竜吾を追い込んだ何者かだ。
きっとこの展開を何処かでほくそ笑んでいるに違いない。
それが風花にとって許せなかった。
☆
=夕方・大阪日本橋オタロード内=
カーナビ技術の発展で慣れない土地でもある程度時間通りにつく事ができた風花。
(ここが噂の日本橋――ヒーローだけでなく自衛隊や警察の姿も多いですね)
繁華街で宇宙人が撃退された街。
何かと話題が多いこの街。
偽ロボルガー事件など知った事かと街は賑わいをみせている。
平日だろうと休日だろうと半ば歩行者天国と化しているオタロードにゆっくりと愛車を入れて事件現場を見るが特に変わった様子はない。
偽ロボルガーは近くのレンタル駐車場のトラックから降ろされ、事件現場から消えたのが確認されているが、それ以降の足取りは途絶えている。
が、風花はその線から探るべく調査する事にした。
「アナタが辻沢 風花――レイガンスリンガーね」
捜査開始しようとした時、待ち構えていたように一人の少女が現れる。
「誰ですかアナタは?」
「私は青峰 せいな。アナタと同じ正義のヒロイン、ブルーセイバーよ」
青峰 せいなはそう言って胸を張る。
年頃は女学生だろう。
髪の色はブルー、髪型はツテール。(ツインテールとロングヘア―の組み合わせ)。
カジュアルな上着にミニスカート、ブーツ。
今風の垢抜けた女の子と言う感じだ。
胸も大きい。
ヒーローネーム、ブルーセイバーと言うからにはチームヒーローの一人なのかと思う。
「あのレッドセイバー、赤城 レツヤと同じチームだよ」
「げえ……」
それを聞いて風花はゲンナリとした。
火弾 竜吾を逮捕して今人気が最高潮になっているであろう人気ヒーローの名前だ。
まさかその名前を聞く事になるとは思わなかった。
「もしもこの街で見かけたら手を貸してやれってレツが言ってたの」
レツとは名前のレツヤからとった愛称だろう。
親しい仲かもしれない。
「どうしてはるばるこの街に?」
「この街は今、ホットスポットだからね。大事件が多く起きるし、先日偽ロボルガー事件が起きて、遠いところからも名を挙げるためにヒーローが来てるの」
「そう言うことですか」
言わんとしていることは分かる。
現代においてヒーローと言うのは認めたくはないが、芸能人と同じく人気を売り物にする世界だ。
大きな事件を解決すれば有名になれる。
そう思って今の日本橋にやってくるヒーローは多いのだろうと風花は思う。
「でねでね? 手を組まない?」
「手を組む? 私と?」
「そう、あのアウティエルやリンディ・ホワイトと肩を並べて戦ったことがある次代のエースなんでしょ? 手を組むしかないでしょ?」
「それは――」
自分はまだエースの器ではない—―と言いかけた。
だが心の中では褒められて嬉しく感じる自分の姿もあった。
「それに見ず知らずの街を何のアテも無く一人事件を尋ねて回るつもり?」
「うっ」
痛い質問だった。
客観的に見て無鉄砲な試みなのは風花も分っている。
だがジッとしてはいられずここまで来てしまった。
☆
とりあえず駐車場を借りて、バイクを止めて聞き込みをはじめる。
手掛かりはないが、メイド喫茶ストレンジや美少年探偵(本当は何でも屋)、闇乃 影司、谷村 亮太郎の事務所などを紹介してくれた。
この3つは大阪日本橋の一種の駆け込み寺らしい。
そこまで聞き込んで、風花は何でも屋のどちらかに尋ねようかと思ったその時だった。
「誰でしょうか?」
着信音。
スマホの画面の表示を見ると見た事もない番号からだった。
『もしもし、レイガンスリンガー辻沢 風花かな?』
「誰ですか?」
『君のスマホに位置情報を送信しておいた。場所は埠頭の廃倉庫だ。そこに今回の事件の手掛かりとなる場所がある』
「ちょっと待ってください。アナタ誰なんですか?」
『私はKとでも呼んでくれたまえ』
Kと名乗る人物。
音声変換ボイスで男なのか女なのか判断がつかない。
正直言ってとても怪しい。
見え見えの罠ですと言っているようなものだ。
(だけど手掛かりはないし、怒られるけどここは単独行動と行きましょう)
そう思い切って辻沢 風花は罠である事を前提でKの話に乗る事にした。
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