大事件発生
Side 藤崎 シノブ
=昼・大阪日本橋、オタロード=
異世界帰りの勇者で現在高校一年生の藤崎 シノブと谷村 亮太郎の二人。
童話に出て来るお姫様のような容姿をした男の娘の闇乃 影司と同じく何でも屋をやっている。
「まさかヒーローがマッチポンプしてたとは――」
「今はヒーロー飽和時代だからだね。こう言う事件も起きるよ」
毎度の事ながらドラマのように戦闘に発展してトラブルを解決しおえて、オタロードにある喫茶店で軽く打ち上げ会をしていた。
今回関わった事件はヒーローのマッチポンプと言う大事件だった。
ヒーローが肩書きになり、職業にもなった今の時代、誰かがやるであろう犯罪をよりにもよって自分達が引き受けた依頼で関わる事になった
「そう言えば影司君は何してるんですか?」
「ああ、影司君は前嶋刑事と一緒に刑事殺しを追っているそうだよ」
「刑事殺しですか――ネットで記事になってましたね。影司君はそれを追いかけてるんですか?」
話題は同業者の闇乃 影司が追っている刑事殺しについてになる。
「影司君によるとこの事件妙だって言ってましたね」
「妙とは?」
「真正面から銃で頭をズドンとしたらしい」
「殺し屋の仕業ですか?」
谷村から聞いた状況を聞いてシノブは殺し屋の線を挙げる。
銃でヘッドショット。
それも刑事殺しになると生半可な小悪党では無理な所業だ。
シノブは殺し屋の線を疑う。
「それが妙なんだよね。争い合った形跡もなく、真正面から弾を至近距離で撃ち込み、さらには殺害現場も人気が寄り付かない――命を狙われる程の危険なヤマを抱えている刑事が一人不用心に何の用もなくその場所に行くとは考え辛い」
「確かに妙ですね。それに前嶋刑事と影司絡みってことは日本橋近辺の事件ですよね? 遂先日宇宙人騒動が起きたにも関わらず、日本橋でそんな事件起こしますか?」
更に付け加えるなら切り裂きジャック事件が二度も起きている。
特に一度目は大阪府議会の議員が絡む大事件で裏社会の住民も関わっている程の規模だった。
そんな大事件を起こすにしては不用心過ぎるようにシノブは感じた。
「犯人は刑事の周囲の面識のある人間の犯行だろうね」
谷村はそう推理した。
「人気のない所での犯行、そこに何故刑事がいたのか? 争った形跡もなく、至近距離で撃たれたのも説明がつきますもんね」
谷村の推理をシノブは補強するように語る。
影司もこれぐらいの推理は働かせているだろう。
警察だってその線に行き付いていても不思議ではない。
問題は誰かになるが、そこは依頼を引き受けた影司や警察のお仕事だろう。
☆
=昼・大阪日本橋、オタロード=
会計を済ませて喫茶店から出たタイミングで二人はある騒ぎに直面した。
ロボルガーX(クロス)。
日本人で、ヒーローに憧れや興味、志す人々にとっては一度を耳にするナンバーワンヒーローだ。
なんと言ってもブラッドスペクターを壊滅させた実績が大きい。
そんなヒーローが大阪日本橋に現れた。
いや、出来の良いコスプレかもしれない。
本物か偽物か?
などと一般人やヒーローも戸惑う。
そんな現場に偶然居合わせた二人は瞬時に警戒体制にはいる。
シノブも谷村も鑑定魔法の結果が結果だったから。
ロボルガーが動き出したと同時に――たまたま傍に近寄った背の高い野性味が感じられる兄ちゃん工藤 怜治がヒーローに殴り掛かろうとしたロボルガーの腕を掴んで止めた。
「おい、お前がどうしてそんな格好しているのか分からねえし、実は本物かもしれねえが、これだけは言わせてもらうぜ」
そう言って彼は、装甲車を横倒しにする程の前科を持つパワーで、
「ヒーローを汚すようなバカな真似はすんじゃねえ!!」
ドゴォンと人間が出してはいけない、響かせてはいけない程の轟音と共にロボルガーXの2m近い巨体をアスファルトの地面へと殴り倒した。
「あん? 手応えが変だな?」
火花や黒い煙を噴き出しながらヨロヨロと立ち上がるロボルガーX。
工藤 怜治は「うん? まだやんのか?」と呆れたような表情をみせる。
そしてもう一回、ロボルガーを殴り倒す。
またもや人間が鉄の塊を殴る音とは思えない轟音を響かせて。
周囲はドン引きである。
「根性のない機械だな?」
今度こそ沈黙。
警察が駆けつけ、念のため工藤 怜治は事情聴取のために警察に連れていかれる。
「あれ偽物ですよね? 中身は機械ですよね?」
事件の一部始終を見ていたシノブは谷村に尋ねる。
「ああ機械だ。感覚麻痺して来ているけど、鑑定魔法の結果オートボーグ――バリバリ戦闘用のロボットだよあれ?」
若干顔を蒼褪めさせながら谷村は言う。
「それを殴り倒せる工藤さんって一体……」
ふとシノブはもうだいぶ前に感じる出来事を思い出す。
ライブラと言うテロリストと戦っていた事件だ。
その事件の時、工藤 怜治は2mの巨漢の大男を蹴り一発で蹴り倒し、そのまま装甲車を横倒しにした事があった。この時点で既に人間を辞めている。
ちょっと前の宇宙人事件でも事件に巻き込まれて、大量にいた戦闘用ロボットを殴り倒していたが――まさかオートボーグまで殴り倒せるとは思わなかった。
もう人間の人体の神秘の範疇を超えている。
実は異世界帰りとか、転生前に神様なる存在からそう言うチートを貰っていたとかの方が納得できる。
「工藤 怜治人外論は置いておこう。僕としては何故大阪日本橋にオートボーグの、偽のロボルガーが白昼堂々と暴れようとしたのかが問題だ」
「何かまた大事件が起きるんですかね?」
「ブラッドスペクターの残党がまだ活動しているらしいけど、どうして日本橋かな?」
そこでシノブは考え込む。
こう言う頭脳担当は谷村さん任せだったがシノブとしてはあんましそう言うのも良くないと思っているわけで――
「今回の事件はブラッドスペクター残党の犯行で、ロボルガーの名誉を傷つけるための作戦だった?」
「その線は僕も考えている」
シノブに推理に同意して、谷村はこう続けた。
「さっきも言った通り、鑑定魔法の結果はオートボーグだった。白昼堂々、オートボーグが無差別に人々へ危害を加えようとした。そうなれば当然、シノブ君の考えている通り、ロボルガ—の地位や名誉はどう言う形であれ、傷つけられる」
シノブの推理を補足する様に谷村さんは解説する。
「だけどそれなら日本橋でやる必要や、オートボーグを使う必要すらない」
「何か別の目的があると?」
「これは想像ですけど――怜治君に邪魔されず、オートボーグを使った無差別殺人及び破壊が行われたとしましょう? 世間はどう思うでしょう?」
「――宇宙人事件や切り裂きジャック事件とかありましたし、物騒な街だと思われるでしょう」
「その責任の追及は?」
「警察やヒーローや自衛隊――うん?」
そこまで言われてシノブは谷村が何を言いたいのか理解できた気がした。
「この事件妙ですね。リスクがとんでもなく大きすぎる」
「うん、そこなんだよ。悪事をする悪党の思考回路はまともじゃないと言えばそれまでだけど、リスクが大きすぎる。今の日本橋で事件を起こすと言う事は警察署の前で事件を白昼堂々と事件を起こすようなものだね」
そこなのだ。
今の日本橋は宇宙人事件だけでなく、切り裂きジャック事件や完全武装したテロリストの事件なども起きてしまった。
だから警察やヒーローの常駐も以前とは比べ物にならないし、自衛隊も復興作業のために常駐している状況だ。
にも拘わらず事件を起こすと言う事は自殺行為である。(まあそれでも、店への万引きなどはちょくちょく起きてるが)
谷村の言う通りにリスクが大きすぎる。
「それでも犯行を起こした。そのリスクを承知の上で。当然、警察やヒーロー、自衛隊は血眼になって黒幕を追い詰めるだろうね」
「それが罠だったとしたら?」
「シノブ君、冴えてますね」
「発想を転換したんですよ。自分達を追い詰めさせるために一見自殺行為のような真似をしたとしたら――正直自信の無い推理ですけど」
「いや、その推理は強ち間違いでもないと思うよ。これ以上は調べてみない事には――北川さん辺りに話を聞いてみよう」
北川さんこと北川 舞。(たぶん偽名)
いちおうはシノブと谷村、二人の先輩にあたる。
その正体は世界的な秘密組織、ディフェンダーズでそれなりの権限を持つエージェントである。
想像しにくかったらアメコミに出て来るヒーローを支援する秘密組織みたいなものだと思ってくれればいい。
そんな人に二人は念のため、偽ロボルガー事件について尋ねようとしていた。
数日後、この事件は思いもよらない展開を見せる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます