~相人(あいじん)~(『夢時代』より)

天川裕司

~相人(あいじん)~(『夢時代』より)

~相人(あいじん)~

 苦労の絶えない虚無の内にて、虚構を根深(ねぶか)に具えた孤独の空間(すきま)が俺の眼(め)に在るあちらこちらに頭(くび)を擡げて震々(しんしん)して在り、挙動を抑えた俺の〝恐怖〟は、この後(ご)に纏わるひ弱な保身を強靭(つよ)く握って放さなかった。終ぞこれまで、虚遁(きょとん)として在る人間(ひと)の〝間抜け〟に明かりを灯せぬ病の源(もと)から、一匹上がった宗教なんぞがその実(み)を翻(かえ)してほっこり微笑み、俺の元まで辿れる事など一回足りとも在り得なかった。自然(じねん)に象(と)られた透った気色を模索する内、端正(きれい)に通(とお)った鼻を呈したか細い女が、俺の家から少し離れた空地(あきち)の周辺(あたり)を、行ったり来たり、右往左往に耄碌する内、自分の成し得ぬ〝光〟の古巣へしっかり返って躰を尖らせ、そうして辿れる〝自宅〟の内では誰かに見られて丁度好い程、背中を丸めて小さく畳める身分の小柄を気に入って居る。陽(よう)の光を空から眺めて、つとつと辿れる俺の虚無への妄想迄には、彼女の歩ける一通路(いっつうろ)が立ち、俺の自宅と彼女自宅を〝空地〟を通じて対(つい)として行き、彼女の身内(からだ)に暫く通せる男性(おとこ)の従順(すなお)は、彼女の脳裏へ暫く上がった弱気な雰囲気(ムード)を喝采し果てる人間(ひと)の孤独へ相対していた。相続人から下僕人まで、彼女の足元(ふもと)に幾つも空転(ころ)がる〝未知〟等生れて哄笑(わら)って在ったが、俺の心へ遠く根付ける彼女から成る微かな温度は、俺の眼(め)に在る脆(よわ)い暗(やみ)へと暫く活き得る具象(かたち)を呈して巣立って在った。空気色(もぬけいろ)した彼女の下肢(あし)には暫く現行(ここ)では見受けられない不屈の桎梏(かせ)など黒い成形(なり)してずんぐり佇み、哀れな女(ひと)への仄かに延び得た男性(おとこ)の情(じょう)など、〝愛〟にも成り得ぬ気高い胡乱が人の身を借り透明色して、俺と彼女の〝二人の館〟を散策しながら発掘して活き、俺と彼女は現行(ここ)で活き得ぬ〝固さ〟を晒して呑(のん)びり佇む。我が身を制して自律に象る人間(ひと)の感情(きもち)を如何(どう)にか斯うにか解放して行き、彼女の自宅へこっそり忍べる無形の形を愛して止まずに、彼女から鳴る〝あやしの唄〟には俺の情(こころ)へひっそり忍べる〝猫の眼(まなこ)〟が夜気へ冴え行く光を発して俺を照らした。僅かな光で自分を立たせる技能の程度はそこらに転がる凡(ぼん)の女性(おんな)に抜群である。

 ときの波間にこっそり漂う人の生命(いのち)は人と人との静寂(しじま)の内にて自分の在り処を快楽(オルガ)まで引く、一種、打たれ強さを遮二無二写した人間(ひと)の延命(いのち)を逆手に見上げ、男は女に、女は未知へと、自然に操(と)られる機能の許容(うち)にて機敏と相(あい)する。彼女の想いも俺の想いも、暗(あん)に塗れる自然の許容(うち)にて一体分らぬ誰かに対して追想している。眠り続けるこの身に宿った覚醒部分は横殴りに咲く雨の如くに情(こころ)を象り、明日(あす)に活き行く思考の派生(つづら)を根絶やしにした。事実を観るまま何かへ記(き)さねば満足出来ない俺の衝動(うごき)は個室(へや)を飛び交い、自分の気色の細かを言えない失くなる人への残念を観た。腹から湧き行く沸々煮えたつ人の怒りが、何かへ目掛けて突進して行く孤独の衝動(うごき)が色めき立った。何処(どこ)かの空間(すきま)に丸味(まるみ)を拵(こさ)えた未知への穴など、俺に知られず在るのか知れない。現行(ここ)に歩いた、俺の元へと流行(なが)れた男女(すべて)は、皆が皆して同じ表情(かお)して生きて在ったが、行く行く話せる内容(こと)も無くなりそわそわし始め、或る日を境にぷっつり暗(やみ)へと消えて仕舞える流動(うご)く体を大事とした儘、多少に動いた顔の形も無表情へと固まり始めて、一人静(ひとりしずか)に空気(もぬけ)の内にて見えない欠伸を盛んにして行く。暗さの籠った彼女の自宅は、俺の家から少し離れた道程(どうてい)からでも時折り見得出し活気を灯し、それでも見慣れぬ景色の内からひょいと飛び出た後光を拡げて俺の背後(あと)へと、未熟に光れる自分の気配が何処(どこ)か遠くでするのだけれども、俄かに落ち行く雨の滴に、彼女の影など仄(ほ)んのり仕上がる超然(ちょうぜん)など見て、俺の心は、妙に楽しく愉快を着飾り、誰に問われる訳でもないのに、暗(やみ)に向かって「彼女」に対する感想なんぞを揚々説き行く俺の灯(あかり)は華やかを知り、一人で在っても二人で在っても、彼女に添い得る自慢を呈して綻び始める。揚々豊かな俺の気色は初春(はる)に漂う長閑に揺らいだ身軽な景色と、空気の内にて同化して行く融合過程を程好く見せ付け、俺と「彼女」の今後の行方を、ドラマ仕立てに再現して行く。白雲漂う陽気を煎じた獣の気色は、俺の心中(こころ)を隈なく徘徊(ある)いて愛想(あいそ)を振り撒き、何時(いつ)しか見て来た連動(ドラマ)の形成(なり)など、〝灯籠仕立ての俺への燈火(あかり)〟と、季節の奏でる陽(よう)の仕掛けに矛盾を来せず囁いて来る。俺の精神(こころ)は幻想(ゆめ)を掲げて〝仄か〟を羨む「彼女」の居場所を捜して廻り、ああでもない等、こうでもない等、凡庸豊かに茂みを作った俺への日毎を用意して活き、「悲しまないでも必ずお前の小さな麓へ彼女の化身はほろほろ降り立ち、無駄の無いほど季節を飾れる人間(ひと)の温身(オルガ)が存在しよう。それまで生育(そだ)ったお前の無力は、恐らく化(か)われぬ初春(はる)の軒先(さき)にて〝司春(ししゅん)〟を頬張り、誰へ対すも決して解(と)けない雪の断氷(はへん)は遺り続ける。これから出会える女性(おんな)の妙味は宙(そら)へ返らず〝古巣〟へ生き立ち、お前を着飾る何等の悪しきを空気さながら水にも解け得ぬ私断(しだん)と成り着き、慌てる乞食は貰いが少ない…、お前の正体(からだ)をはっきり照らせる、放射状にて噴散(ふんさん)され行く幻想(ゆめ)の木の葉は、未知の曇りを一層晴らせる記文(きぶん)の経験(かて)へと落ち着くのである。心して、行け!誰もそこまで辿れた者も、況してやお前が見て居る幻想(ゆめ)の妙味を憂える者も、この世に降り立つ景色の内にて存在し得ない。『明日(あす)』に掛かった全ての事象をお前の精神(こころ)へ繋いで置いて、幻想(ゆめ)を語れた〝白紙〟の思惑(こころ)を〝無像(むぞう)〟を称する今日の灯(あか)りに辿り着かせよ。遠くに輝(ひか)れる心中(こころ)の共鳴(なげき)は、お前の肢体(からだ)を大きく縁取る満月である。〝無意味〟を称して他(ひと)との熱意に交響し得ないお前を象る緻密の衝動(うごき)は、宙(そら)へ漂う気楼(きろう)の欲する熱意と成り得る微熱の成体(からだ)だ。現行(いま)から大きく廻転(かいてん)して活き、お前が見上げる宙(そら)の彼方に輝彩(ひかり)が湧いても、他(ひと)の形成(かたち)はお前に似合わず、遠い死地にて終末を問う。お前が愛せる無機の延命(いのち)は、決して彼等と同調しながら『今日の文句を準(なぞ)る行為』を模倣(まね)ては成らず、憤悶(ふんもん)漂う〝新たの主観(あるじ)〟を追い駆け始める虚無の背中へ付かねば成らない。行く行く愛せる架空の女性(おんな)が月の夜にてお前を訪ね、お前から成る見事の景色は、『彼女』に問われて失跡されよう。そうする最中(さなか)にお前に彩(と)られた『彼女』より成る愚問の妄想(ゆめ)には、如何(どう)にも落ち着く〝木の葉〟が舞い降り、お前が辿れる〝未知への帰路〟へと『二人』を誘(さそ)える不毛の灯(あか)りが形成され行く。そうした過程をお前に具わる無欲の慧眼(ひとみ)は見逃さずに在り、『彼女』を連れ添うお前の理性(はどめ)は凡庸豊かな緑に内包され行く。そうした転機がお前が踏み行く小さな〝麓〟で必ず起(おこ)る。〝白紙〟に飾れる彼女の幻想(ゆめ)には、お前の象る可笑しな妙味が散乱するのだ…」それだけ語った俺の身元を好く好く束ねた「モルグの導師(どうし)」は、初春(はる)の芳香(かおり)に包まれながらに、俺から見知らぬ異空(いくう)の土地へと足場を失(け)しつつ独歩(ある)いて行った。止めども無い程哀れな狭地(きょうち)へ踏ん反り返って堕ち行く〝理性(はどめ)〟は、俺の心地(ふもと)をふっと飛び立ち、何処(どこ)へ向くのは遥かに識(し)らない孤高の空虚へ還って行った。後(あと)にも先にも、「彼女」に対して「彼」を観たのは現行(ここ)に居る内これが最初で、野平(のっぺ)り暑がる〝初春(はる)の生徒〟は、「彼」から離れて自由を愛せた。ほっかむりをした初夏(なつ)の主観(あるじ)が凡庸から咲く〝新たな成就〟を捜し廻って、俺から還れる魅惑の園(その)へと、一歩行っては三歩退(さ)がって、四歩行っては五歩目に佇む、奇怪な能体(からだ)を見せ付けて来た。俺の口から初春(はる)に吃れる〝木の葉〟の模様が幾分舞い散り地に投げ込まれるのに、能体(からだ)を晒した初夏(なつ)の主観(あるじ)は潔癖症ほど自分を洗わず、身分を問われぬ不思議な滑舞曲(サンバ)をいとも容易く自由に孤踏(おど)り、小躍りして居た〝私のモンク〟は、修道院から少し出て来た陽(よう)を着飾る眩しい表情(かお)して、先程識(し)り得た不思議な「モルグ」の廻った在り処を空転(ころ)がしながらに朗笑して行き、俺が気取れる現行(いま)を彩(と)り得るお堅い主観(あるじ)に、形成(かたち)の化(か)わらぬ虚無の光を揚々照らして伝えて来たのは、「彼」と別れて六歩独歩(ある)けた小さな記憶の経過であった。〝家主〟にも似た〝経過〟を操(と)り得る固陋の紳士は、俺の麓(もと)から多少離れた四季の最中(うち)へと独歩(ある)いて行って、〝最中(さなか)〟に問われる未覚(みかく)の模倣(ならい)に暫く準じて自体(おのれ)を知り得る遠い感覚(いしき)を望遠して生(ゆ)き、具形(かたち)の無いのを暫く懊悩(なや)んだ行為(あと)など見せ付け、俺から始まる「彼女」の描写を、事細かな程、柔く緻密に独歩(ある)きながらに問い始めていた。

 固体を見せない空気(もぬけ)を彩る孤独の〝紳士〟は、俺と「彼女」に脚色され得る主観(あるじ)の気色を調べ始めて素早く動き、都会を識(し)れない〝田舎御殿〟に長らく住み行く無垢の彼女を、先ずは俺から奪って軽く燻(くす)ませ解体して行き、彼女の具形(かたち)を辿れない程淡い月へと返して行って、俺の麓(もと)から宙(そら)を隔てて離れた「彼女」は、無限に拡がる黒さの内(なか)へと素早く透って拡がり出した。「彼女」から吹く柔い吐息は宙(そら)の涼風(かぜ)にて具体を取り消し、甘さを識(し)れない脆(よわ)い記憶は「彼女」の麓(もと)から雲散霧散(うんさんむさん)に消滅して活き、見得ない無形(かたち)に彼女が降り立つ白地を晒した帳面(ノート)が見付かり、月の夜には季節の吹かない清閑(しずか)な〝夜〟だけ漂っていた。

 俺の文句(ことば)が「彼女」の胸中(うち)へと届く時(ころ)には、何時(いつ)まで経っても虚無の咲かない人間(ひと)の主観(あるじ)が表情(かお)を覗かせ、見知らぬ温身(ぬくみ)を宙(そら)から落せる超然豊かな技量を立たせて〝狂い〟を分かち、連動(ドラマ)を衒える光の温度を端正(きれい)にすっかり片付けて行ける気丈の有利を囁いていた。俺に相(あい)した〝固陋の虚構(ドラマ)〟は、自分が着飾る清閑(しずか)な装飾(なり)など脚色され行く小さな温身(ぬくみ)へ着替えさせ活き、初めから無い〝虚無〟の雰囲気(ムード)を大きく放(ほう)って〝宙(そら)〟へと掛けた。掛けてから成る〝彼等〟を取り巻く〝経過〟の渦には、他(ひと)の知れない僅かな事実が幻想(ゆめ)を擡げて開局(かいきょく)して居り、「俺」と「彼女」と「モンク」と「主観(あるじ)」を、一つの経過へ運び去るのに長日(ちょうじつ)使った無益な苦労が徒労を呈して立脚していて、何も見得ない他(ひと)の見知れる虚構の〝刹那〟は現行(いま)と変らず以前(むかし)と変れず過去から生れず未来へ咲かない、暗雲(あんうん)豊かな牧羊地を象(と)り、他(ひと)から延び行く端正(きれい)な定めを宙の下(もと)にて仕上げて行った。

 俺が現行(そこ)にて時計を見たのは午後の見えない三時であった。「おやつの時間!」と燥いでお道化る俺の周りに、彼女から咲く不思議な青葉が散乱しており、煙たい天気を黄砂の振り撒く泥濘へと観て、俺から仕上がる無色の蜃気は限界(かぎり)を知らずに蔓延していた。如何(どう)にも解(と)けない快感(オルガ)の真価は、人間(ひと)の温身(ぬくみ)に端を発さず、「彼女」より成る〝未知〟の麓(もと)にて実(み)を成らせていて、俺から曇った慧眼(ひとみ)の視野(さき)には、「彼女」の未熟に相当し得ない儚い温度が寝そべってもある。端正(きれい)に象(と)られた現行(いま)の畑で、何処(どこ)からともなく「彼女」の擁せる微かな寝息が空転(ころ)がり始める。「彼女」から成る微かな吐息は俺の良く知る人間(ひと)の〝寝息〟に程々似ていて、〝寝息〟が呟く〝人間(ひと)〟の発声(こえ)には「彼女」に宿った見知らぬ文句(ことば)が積み込まれている。〝寝息〟の余韻(あまり)に薄ら化(か)われる彼女の寝言は、俺の身元(そば)へとこそこそ来る儘、〝畑〟へ照らせる陽(よう)の明度(あかり)と程好く飽和し、昔語りを断片ながらに一々説(はな)せる不思議な音頭を醸して行った。〝畑〟の真中(まなか)で神秘を被(かぶ)れる「彼女」の独気(オーラ)は、俺を呑み込む壮大豊かな涼風(かぜ)を連れ添い〝宙(そら)〟を観(み)せ付け、何事さえなく、旧い牛舎を隠して仕舞える「彼女」の腕力(ちから)を誇大に掲げ、未熟に生育(そだ)てた俺に居座る常識(かたち)の柵(さく)には、曇天模様に雨の咲けない〝苦労知らずのカウボーイ〟等を畑の隅へと徐々に追い遣る自然(じねん)の脚力(ちから)を有してさえ居た。

 曇った心で彼女を観ていた俺の脚力(ちから)はこれまで一つも、精神的潔癖(ノイローゼ)に識(し)る夢遊の主観(あるじ)に出会わず内にて、「彼女」と相(あい)せる虚無の夜会(うたげ)に呑み尽せる程「彼女」を愛せる美味の居所(いどこ)を識(し)れずにあった。それであるから、現行(いま)の瞬間(いま)まで自分の虚構(ドラマ)が生長して行く以前(むかし)の〝畑〟の〝紳士〟に会っても、自分を脚色撮(いろど)る不思議な技腕(わざ)など露とも知れずに、感嘆極まる「彼女」の〝発声(こえ)〟には雨音など知り、孤高に従う旧い寵児は宙(そら)を見上げて悶々した儘、〝不思議〟を識(し)れない虚無の孤踏(ダンス)に胡坐を掻きつつ努力を訴え、自分に着飾る脚色(いろ)の〝意味〟さえ露ほど知れずに共鳴(なげ)いて居たのだ。「彼女」から成る、虚構へ向かった足取り等無く、他(ひと)が具える小さな〝記憶〟へ傾倒して居た軌跡(あと)さえ見得ずに、「彼女」の保(も)ち得る微妙の妙味は、人間(ひと)の感覚(いしき)へ程好く隠され、俺の足元(もと)から空間(すきま)へ失(き)え得る小さな実力(ちから)を表してもいる。「彼女」の肢体(からだ)をどれ程丈夫に洗った後でも、恐らく「彼女」を象る〝妙味〟の外見(そとみ)は、誰にも見取れず固く成り立ち、唯々白壁(かべ)を呈せる美白を講じて立ち得るのである。俺へと宿れる〝可笑しな余力〟は、畑に居ながら宙(そら)を睨(ね)め付け、宙に浮べる「空間(すきま)」の奥から「彼女」にも似た堕天使を観て、俗世へ徘徊して行く小さき〝歩幅〟を、彼女へ向け得た〝愛〟を消すほど愛撫していた。涙で燻(くす)んだ〝彼女〟の姿態(すがた)が、雨情(あめ)に燻(くす)める畑の奥へと過ぎ去っていた。

 白い体が彼女へ付せられ、俺の相(あい)した宙(そら)の空間(すきま)が陽(よう)の照射を顧みる頃、両腕(うで)に持てない、「彼女」へ対せた〝小さき懊悩(なやみ)〟は靴の履けない二足の蛇足(あし)へと薄ら灯って変貌して活き、〝今日(きょう)〟を限りの可笑しな連想(ドラマ)にのろのろ辿って忙しさを知る。「彼女」の気持ちと俺の思惑(こころ)に薄ら止まった奇想の程度は、〝意味〟の在り処をはっきりし得ない陽(よう)の照射を顧みながら、端麗(きれい)に仕上げた「彼女」の在り処を、他(ひと)に彩(と)られた脚色(いろ)の最中(さなか)に揚々観ていた。畑が織り成す旧い景色に、何時(いつ)か何処(どこ)かでくっきり知り得た。オークの木が在る暗い林が見え隠れして、結局、畑は暗(やみ)を沈める林の姿を切り取れずにおり、行く行く〝林〟は暗(やみ)を従え畑の内へと立脚していた。蛇の姿が陽(よう)の照射を素早く嫌って逃げて行く程、俺の心身(からだ)も光を嫌って茂みを探し、畑に宿れた林を見付けて安心した後、旧い景色の裾から出て行き、現行(いま)に通(とお)った〝通路〟を独歩(ある)いて暗(やみ)へ這入った。陽(よう)の届かぬ暗い道には、都会に見取れる路地に生れた暗雲(くらさ)が在って、茂みに紛れた蛇の居場所は俺から離れて〝恐怖〟と成り着き、発音(おと)を出せずに温身(ぬくみ)を保(も)てない吊られた気色を器用に象り、そうした景色は俺の胸中(うち)へとすうっと吹き込み見得なくなった。俺の足元(ふもと)の周辺(あたり)はそれから旧い景色を遠目に見定め、唯々ひたすら〝新たな陽光(ひかり)〟を求め、「彼女」の居場所をやっきり報せる〝俺に向けられ、見合った適地〟を、好く好く気取れる柔い場所へと赴き出した。沢山独歩(ある)いた〝路地〟の上では〝はぁはぁ〟息巻く〝俺〟が在るのに、ふとした辺りで興味本位で心身(からだ)を覗けば、上気させ得る汗の一つも見付からない儘、俺の心身(からだ)は「理解」を求めて独歩(ある)いて在った。独歩(ある)いて行く内、余り清閑(しずか)な生気に問われて振り向く間に、誰かに追われる奇妙な余心(こころ)がちらほら咲いては宙(そら)へ返った。何分(なにぶん)気休め程度の華が咲いても彼女から出る文句(ことば)の限度(かぎり)は幻想(ゆめ)の中へとほっそり居座り、透明色した身軽の内(なか)にてくっきり浮き立ち燥いで廻り、俺が掌(て)にした初春(はる)の光明(ひかり)は所々で「彼女」の芳香(におい)を打ち消していた。形成(かたち)の違(たが)えた連想(ドラマ)の線路は俺の側(がわ)からひっそり浮き立ち、凍える儘にて彼女の言動(うごき)を精神(こころ)に灯した上気を逸して散々伸ばされ、「明日(あす)」に華咲く文句(ことば)の多さに以前(むかし)の「彼女」が白体(からだ)を透して現行(いま)へ居座る逆境(かがみ)に準(なぞ)らせ黒味(くろみ)を落せば、俺の〝未熟〟にすっぽり宿れる「彼女」の潔白(しろ)さは昨日から観て「華やかさ」を識(し)り、昨日に生き得た小さな主観(あるじ)は、俺の足元(ふもと)で大きく朗笑(わら)えて光明(ひかり)の内へと佇むのである。自分の記憶に何を描(か)いても唄を歌えど〝古巣〟を吊っても、心の中には常に吠え行く「彼女」の余韻(あまり)が過去から仕上がり重きを装い、常識(かたち)を外せる器用の記憶(きろく)を以前(むかし)に仰げた桃源郷から白煙(けむり)の立ち得ぬ幻想(ゆめ)の足元(ふもと)へ具に降り着き虚無を牛耳り、「彼女」の抜け身は「茂み」の麓へぽつんと落ち込み、俺から生れる端正(きれい)な虚無さえ陽光(あかり)を呈さず〝ゆうん〟と消された。「明日(あす)」の未知へと器用に翔(と)べない「彼女」の幼夢(ようむ)はガラシャの奥義(おく)からすうっと佇み幻(まぼろし)さえ観て、事実に咲き得た〝向うの世界〟へ揚々一人で独歩を重ねる白い生地(きじ)など散歩へ見せ活き、俺の麓(もと)から首を擡げて〝虚無〟を識(し)らずに打ち解けている。昨日まで居た「女性(おんな)の化身」は「明日(あす)」を象り成体(からだ)を成さない。空気(もぬけ)へ透った美的の神秘(きずな)は俺を通して未来へ居座り、暫く言動(うご)けた俺の表情(かお)など何処(どこ)でも舐め取り、一端(いっぱし)ついでに彼女を突っ伏し、意味の無いほど哄笑(わら)って在った。霞の端麗(きれい)な〝感覚(いしき)の空間(きずな)〟が矢庭に漏れ行き地上(ここ)へと行き着き、俺を初めに「彼女」を初めに、「俺と彼女」に揚々集えた待ち人など迄、何処(どこ)まで経っても泡を成さない人間(ひと)の輪を着せ、孤高に寄れない、折れない諸刃(やいば)を現実(いま)に携え盛んに在った。やがて連想(ドラマ)は俺の元から「彼女」の元から羽ばたきついでに孤独を離れて、〝器用〟を保(も)て得ぬ荒野の許容(うち)へと寸分違(ちが)って辿って在った。幻想(ゆめ)と現(うつつ)を繋いだ岐路へと、酷く急いだ人間(ひと)の思惑(こころ)は遊泳(およ)いであって、彼女から来る不思議の独気(オーラ)は俺の背後に上手く隠れた。何にも見得ずの現(うつつ)幻想(ゆめ)には塗工を重ねた人間(ひと)の労苦が凡庸ついでにひっそり重なり、固まる哀れな残骸(むくろ)を「彼女」を迎えて弱々しくなる。溝(どぶ)の脚色(いろ)した現(うつつ)の水面(おもて)は人間(ひと)の活き得る波紋の数など光明(ひかり)に乏しく悠々して在り、どっこいどっこい、彼女の呈せる活力(ちから)の程には〝会話〟の咲かない朧の憂慮がほっそり翻(かえ)って感嘆して活き、記憶の樞(ひみつ)を抜本(もと)から失くした俺の脚力(ちから)は毅然とし得ない。男女の衝動(うごき)が現行(いま)の空体(からだ)に掛かる最中(さなか)に、宙を流れた見慣れた星座(ほし)など、清閑(しずか)を奏でて傍観して居た。三つ編みした時の流れが〝綾〟を掠めて飛んでった。広い帽子の鍔の端先(はさき)に俺の心中(こころ)へ真向きに向かった影法師が在り、緩々冴えなく淫らな調子に俺と「彼女」を術無く乗せ得る大きな人影(かげ)には宇宙が吹き立ち、暗い広さの所々で、「彼女」に纏わる自由の軽さが両肩(かた)を窄めて独歩(ある)いて行った。煌めく星には線が貫(ぬ)き立ち、彼女と俺とを暗空(そら)の麓に繋げて在って、彼女の吐息は涼風(かぜ)の向く儘、気休め程度の微笑を並べて遠い園へと還って行くのだ。緑色した青いハットを頭に被(かぶ)って望遠する程、宙(そら)の息吹は尽きず内にて、俺の〝人間(ひと)〟への何気な気色を細(ささめ)の漂う宙(そら)の最中(さなか)へ運んで行って、「彼女」と俺にはそうして象(と)られる青い人影(かげ)など、人間(ひと)に彩(と)られた地球に窺え仕様が無かった。よろよろ漂う両脚(あし)に任せて確かを言うと、〝人間(ひと)〟に彩(と)られた地球の脚色(いろ)へは青が佇み黒色(こくしょく)へ向かい、煌びやかに鳴る延命(いのち)の火照りは地上を独歩(ある)ける残骸(むくろ)の火照りが桃色(はで)に輝き活きるのでもあり、〝彼女〟を透した柔い地上(ここ)へは、俺の居場所がふらりと燃え立つ厚みを呈した〝土台〟が現れ、彼女と俺とを密かに乗せる回った球体(からだ)は手足が生やされ、野退(のっぴ)き成らない人の寄縋(よが)りに悶々発狂(くる)える人間(ぬくみ)の姿態(すがた)へ行く行く代われる連鎖(くさり)を見て居て納得していた。白い体は宙へ浮き行く人の群れなど静かに伸(の)めして俺へと辿り、彼女と相(あい)せる揚々豊かな諮問を片手に浮足立つのは現行(ここ)から離れてつくづく還れぬ脆(よわ)い肢体(からだ)の表れでもあり、「彼女」の躰を蹂躙して行く柔らの血などは俺の延命(いのち)へほとほと付き得ぬ髑髏(されこうべ)を観て真っ青にも成り、背景(うしろ)に清閑(しずか)な独創(こごと)の文句は揚々豊かな〝淡さ〟に引かれて躍動し始め、両親(おや)の輪郭(かたち)を器用に象(と)れ得ぬ〝とぼけた両眼(まなこ)〟が暗空(そら)の初めに掌(て)から飛び行く元気を空転(ころ)がし、俺と地上(ここ)との現行(いま)の経過(ながれ)を鎹ともした。泥(どぶ)の色彩(いろ)へとぴたりと嵌れる彼女の体色(いろ)には黒味(くろみ)が差し活き、現行(ここ)から始める人間(ひと)の行進曲(マーチ)に柔い発音(おと)など未熟を透してまったり伸び行く気配を冠した若輩など立て、〝暗(あん)〟に押し売る〝彼女〟の吐息は俺に運べる孤独な「monk」を敢え無く認(したた)め、如何(どう)にも就けない仕業(しぎょう)の麓(もと)へと落ち着いている。仄かな描写が俺の内実(なかみ)を素早く弄り抉り出し活き、風の通らぬ〝ブラックホール〟の彼女の腔(こう)へは四肢(てあし)が滑って理性(はどめ)が利かず、真黒(まっくろ)から成る魅惑の神秘(ベール)に幾つの「彼女」がぶらぶら下がって〝両脚(さし)〟さえ吊られて、俺から始まる明るい調子は無暗を配せて静かに成り得る。呼吸(いき)を殺した〝彼女〟の姿態(すがた)が滔々流行(なが)れる延命(いのち)の帯(おび)へとまったり静まり、微かな美声(こえ)にて緩い吐息は彼女から出て気楼と成りつつ、以前(むかし)に観ていた「彼女」の景色は厚い地盤を密かに担げる、暗空(そら)から降り行く孤独の雨情(ぬくさ)に思惑(こころ)を宿して透明で居る。〝彼女〟に仕上げた〝微かな美声(こえ)〟への細い幻想(ゆめ)には、俺の独歩(ある)ける確かな通路が暫く立ち得て矛盾を通し、彼女へ懐ける脆(よわ)い足跡(あと)など〝銀河〟を離れて頂上さえ識(し)り、俺に生れる独創力には、「彼女」から鳴る〝不明の子宮(みやこ)〟がぐうたら加減に、努々(つとつと)弾ける小雨(あめ)の余韻(あまり)を失くしてもいた。

 気忙(きぜわ)が俄かに漂う初秋(あき)の夕暮れ、気丈な女性(おんな)と〝縋る女性(おんな)〟が土手の細道(みち)など散歩をして居り、紅(あか)く燃え立つ熱い夕日が、二人の顔など横から照り付け、二人の表情(かお)には俺から見得ない人間(ひと)の温度が隠されてもいた。紅(あか)く照るのは俺が何時(いつ)しか現行(ここ)まで独歩(ある)いた気色の最中(うち)にて生れた赤身で、何気に器用に無頼の女肉を薄ら灯して煌めいてもいて、俺の足元(もと)から端麗(きれい)に飛び立つ腕力(ちから)を保(も)ち得て立脚してある。白雲(くも)の切れ間に小さく覗けた奇妙の活気が片付いても在り、女性(おんな)の発声(こえ)には何分(なにぶん)解(と)け得ぬ杞憂の心理に放蕩し始め、滅多に終れぬ男児の試行を身欲の内へと転身(てんしん)させ活き俺の文句(ことば)は「彼女」に届かず惨(まい)ってもいた。〝気丈な女性(おんな)〟は腕を通せぬノースリーブの夏服なんかを未だに故無く着熟(きこな)しても居り、俺の感覚(いしき)が「彼女」の真横を通(とお)って在っても幾分冷たい聡明(かしこ)い姿勢(すがた)を器用に見せ付け表情(かお)は凛々しく、自分の定めた〝夕日の差し行く土手の細道(みち)〟など、誰にも知られず気取って独歩(ある)ける〝気丈〟を灯してやんわり活きた。何時(いつ)も誰かと連(つる)む女性(おんな)は〝縋る女性(おんな)〟の気配に居着いて離れる事無く、晴れた日にでも雨の日にでも、取り返しの付く自分の環境(まわり)を自然に彩(と)らせて独歩(ある)いて在って、矢張り〝夕日の差し込む土手の細道(みち)〟など立派に独歩(ある)ける女性(おんな)の脆弱(よわ)さを成り立たせて居た。彼女に連れ添う〝他の者〟とは、彼女が落した愛子(まなご)であっても可笑しさなど無く、端正(きれい)に纏まる気色の程度は、夕日に晒され、人間(ひと)の望遠(はるか)に押見の無い程まったり煌(かがや)き、彼女の周囲(まわり)は見栄を連れても底儚となく、俺から辿った他(ひと)への臭気は彼女の白壁(かべ)へと顔を打ち付け夕日の土手にて自分を正して消沈している。そうは言っても二人の独歩(ある)ける〝土手の細道(みち)〟とは、文字通りに見て得体は気取れず、暗(やみ)に立ち得る萎びる形成(かたち)が過程を煎じて浮遊して在り、日毎に象(と)られる日常事(にちじょうごと)での丈夫な土台(だい)等、瞬く間にしてその身を失(け)し得る我自(どくじ)の〝砦〟に映って程好く、二人の「彼女」が自体(おのれ)を晒して何処(どこ)の辺りを独歩(ある)いて在るのか、明暗急いだ闇の果てでは一刻講じる空間(すきま)の無いほど俺の視野には彼女の居場所が分らなかった。彼女の身元を柔く仕上げた宙(そら)の主観(あるじ)は、彼女の姿勢(すがた)をそうして化(か)え行き、俺の脳裏(こころ)へ如何(どう)言う気配を構築したのか、一向分らず、俺の思惑(こころ)は宛無き旅へと何気に振舞う自由の身を着る哀れな支度へ「彼女」を観ながら急いでもいる。何方(どちら)の躰も白い照輝(てか)りを放射しており、俺の足元(もと)からすんなり上がった気弱の質(たち)には〝彼女〟の愛情(きもち)をすらりと射止める知識が騒いで熱情を保(も)ち、〝土手〟を独歩(ある)ける〝二つの彼女〟をいとも容易く仕留めて仕舞える幻想(ゆめ)の周辺(あたり)を分散して保(も)ち、俺から観得行く〝彼女〟の表情(かお)には、初秋を過ぎ得ぬ人間(ひと)の緩みが心地を着たまま凍り付き活き、俺の無様を激しく立たせてすんなり微笑む。

 白い美肌を非常に照らせる〝夕日の紅(あか)〟には視線が向けられ、俺から透った〝二人の彼女〟が自体を晒して何処(どこ)へ行くのか、灯(あか)りに模倣(なら)える人間(ひと)の道上(みち)には目途が立ち得ず、〝二人〟から成る人影(かげ)の延びには、俺の麓(もと)からそろりと立ち得た欲の上気がふわふわ顔(がお)して、〝二人の彼女〟の動力源など暗(やみ)に伏されて黙ってないか、企図する裏目の心理(りくつ)は彼女を離れて黙っても居た。俺が独歩(ある)ける日毎の道上(みち)には〝二人の彼女〟の人影(かげ)だけ伸び得て紅(あか)い夕日の聡明(かしこ)い挽歌がゆっくり延び立ち移り変って、青い宙(そら)へと孤独に伸び立つ幼春(はる)に身構(かま)えた幼児(こども)の記憶は、「彼女」の背後へぴたりと付き行く淡い感情(かたち)を交配していた。怯え続ける〝二人の彼女〟へひっそり対した俺の記憶(もと)には、紅(あか)い夕日に程好く伸ばされ生育(そだ)った成人(おとな)が、移り気に退(の)く微妙な気概(こころ)を何処(どこ)か哀しく宙(そら)へ返して、〝二人の彼女〟に運良く生育(そだ)てた無色の気色を、恋に準え〝古巣〟の逆行(もど)って嗚咽に伏せ得た。

      *

 「仁」に出て居た〝気丈〟を象る中谷美紀と、「班長シリーズ~安積班~」に出て来た黒木の彼女に程好く重なる〝縋る女性(おんな)〟の京野ことみが、〝夕日の降り立つ無重の土手〟からふらふら辿って幻想(ゆめ)へとのさばり、宙(そら)から湧き出る〝二つの彼女〟を悠々生育(そだ)てて成長させ行く具体を灯して自然へ付いた。そうした〝二人〟に暗(あん)に付き得る浮遊の〝彼女〟が如何(どう)いう訳だか伸び代から出て、俺の脳裏へ相対(あいたい)して行く鼓動を観(み)せつつ独歩に有り付き、美白を燈せる流行(はやり)の他(ひと)へと転身しながら俺の行方を自然に訊き付け益体に在る。如何(どう)して〝二人の彼女〟と俺が息衝く〝紅(あか)い古巣〟へ辿って来れたか好く好く識(し)られぬ謎であったが、三人目に立つ彼女の容姿は〝誰〟に彩(と)られてその実(み)をくっきり明かせぬ〝柔さ〟に在っても、彼女に問われた独気(オーラ)の息吹が、俺に問われた幻想(ゆめ)の理屈(かたち)へ誰にも象(と)られず独走(はし)り行くのが俺の脳裏を具(そくざ)に離せる術(すべ)にて、厚味(あつみ)を醸せる女性(おんな)の肢体(からだ)を立派に仕上げて笑って歩める身軽の雰囲気(くうき)を造り上げ得た。彼女の放てる独自の独気(オーラ)を俺の精神(こころ)は未だに掴めないのだ。人の身に住む小宇宙が、宙(そら)を眺めて創った存在(もの)にて、俺から発する厚い微熱は「彼女」へ辿れず沈黙して行く。

 透った三女の私的な独気(オーラ)を潜(くぐ)った我には、既に独自に使える記憶の躍動(うごき)が緩慢でも在り、通り過ぎ行く〝移ろう気色〟を真横に観ながら、俺の思惑(こころ)はどんな彼女と相対(あいたい)出来たか、一向図れず分らなかった。中谷美紀には〝キャリアウーマン風〟の気質が宿り、誰かの目前(まえ)にて多弁を揮える〝出来る女〟の独気(オーラ)を灯して散行(さんこう)して居り、そうした彼女の表情(かお)の形成(なり)には如何(どう)する間も無く柔い女性(おんな)の多質(たしつ)が存して横行して居て、俺の記憶がこれまで紡いだ他女(おんな)の上気を、一新せ終える明度(あかるみ)にも立つ無情の気迫も散行(さんこう)していた。暗(あん)から成り得る経過に揃えた記憶の程度は、俺が現行(ここ)にて親しく知り得た〝母性を映せる柔らな女性(おんな)〟と、〝不良娘に相対され得る浅黒肌など茶髪に隠した小顔に映して俺の実(じつ)から我欲を引き得る未熟に灯せる愛露(エロス)の女性(おんな)〟を両者纏めて淡く仕上げて、俺の水面(もと)から仄(ほ)んのり湧き立つ理想の縮図を看破して居た。〝母性を映せる柔らな女性(おんな)〟は現実世界に白衣を着熟(きこな)す少々冷たい端麗(きれい)な女性(おんな)を形成して居り、形成(なり)を観てから相対(あいたい)して行く〝未熟〟を呈した俺の分身(かわり)は、自分の過失を自然に操(と)らせて現行(ここ)に浮き出た端麗(きれい)な女性(おんな)を泣かせた記憶も密かに保(も)ち得る。〝女性(おんな)〟の名前は何時(いつ)ぞや見慣れた先の幻想(ゆめ)でも躍動(うごき)に隠れて女性(じょせい)を呈せた〝伊原幸子(いはらさちこ)〟を引用している。彼女の頬には未だ忘れず、俺の成し得た殺人紛いの健気な過失が揚々輝(ひか)って揺らめいていた。殆ど同時に、幸子の背後(あと)から仄(ほ)んのり出て来た〝小顔の女性(おんな)〟は彼女と同じに白衣を着熟(きこな)す天使を象り呆(ぼう)っとして在り、幻想(ゆめ)に謳える原動力(ちから)を有して立脚していて、俺が遊泳(およ)げる幻想(ゆめ)の宙(そら)へと、飛沫(しぶき)を立てつつ独歩して行く気丈の程度を模索しながら〝不良娘〟に短く宿れる幼春(はる)の快感(オルガ)を満喫して居る。俺の精神(こころ)は〝夕日が照り付く土手〟の上から〝二人の女性(おんな)〟が降りて来た時、如何(どう)にも操(と)れ得ぬ〝不良〟を呈した〝小顔〟の女性(おんな)を執拗(しつこ)く観ながら嫌ったようだ。〝柔い彼女〟を横目に見ながらか弱く成り立つ女性(おんな)の肢体(からだ)を擡げて来たのが〝黒木の彼女に程好く重なる〟没我を呈することみであって、彼女の両肩(かた)から素早く立ち行く人間(ひと)に踏まれた銀の翼は、紅(あか)い夕日にほとほと照らされ、弱い微熱を隠して保(も)ち得る〝定めの秘熱(ひねつ)〟を有してもいた。彼女から成る〝か弱い赤光(あかり)〟は俺から操(と)れ得る〝過失の道上(みち)〟など素知らぬ表情(かお)して唾棄に伏せ売る美麗の心を細く象り、俺から奏した身欲の憂いは彼女を囲んだ白壁(かべ)の前方(まえ)にて虚無を又観て、到底変れぬ淡い挫折を何度も観るうち彼女の化(か)われる時期の節目を女性(おんな)の正理(せいり)に改算(かいさん)している。それでも彼女の伏し目がちなる細い人見(ひとみ)は、黒目勝ちにて脆味(よわみ)を握らず、幻想(ゆめ)の内から外界(そと)に蔓延る塵(ちり)の内へと、失踪して行く我欲を掲げて唸っても居る。俺の精神(こころ)は、彼女へ対する脆(よわ)い細心(こころ)が生粋(もと)から伏されて奪(と)られて行くのを心底嫌って傍観して居り、幸子に対してすんなり憶えた恐怖と同じに、〝か細い女性(おんな)〟に酷く彩(と)られた彼女の記憶に恐怖して居た。〝彼女〟の姿勢(すがた)はずっと変らず俺の背後でけたけた、活き活き、何も言わずに紅(あか)く染められ微笑(わら)って在った。

 濁った排煙(けむり)が自然から成り俺と「彼女」が目指して見上げた端正(きれい)な宙(そら)まで立って在ったが、三つの彼女が自分を象り俺の興味を奪って行く内、俺を離れる無数の〝分身(おれ)〟には自分の立場を掴む程度にこれから辿れる自分の用地が宙(そら)に乾いて大きく成った。俺を離れた二つの彼女は一つの彼女と同質を観(み)て、俺の幻想(ゆめ)へと孤独に這入れる感情(こころ)を採りつつ、淡い気色に見紛う程度に失踪して行く京野ことみの美肌から成る斜光の裾には、少年(こども)に還れる気弱い未熟が一層繁って暗(あん)を象り、表面的には純朴可憐の気高い気色を選んじゃいるが、男性(おとこ)にとっては妖しい黒さが稚体(からだ)に伏す儘、女性(おんな)を気取ってきらりと翻(かえ)る。俺の両眼(まなこ)はそうして仰け反る彼女の姿態(すがた)を悶々観る内、自分を匿う怪しい〝用地〟を難無く見て取り多弁を位置付け、未来(あす)への感覚(いしき)を艶殻だ(まわた)に包(くる)める輝きを見た。彼女を見てから気丈に振舞う伊原幸子を仄(ぼ)んやり見てると、彼女が独歩(ある)ける〝土手〟の果(さ)きから小さく上がった人の気が立ち、〝宙(そら)〟を覆える暗さを睨(ね)め付け成長したので、中谷美紀から端麗(きれい)に成り得た幸子の艶体(からだ)も非常に豊かに啓発され得て、俺の横手をすうっと延び得る愛露(エロス)を醸して左往して居た。俺から見詰めた二人の彼女は如何(どう)にも斯うにも艶(あで)を抜けずに愛露(エロス)を着飾り、万人受けする明度を着分けて、俺の目前(まえ)では共通して生(ゆ)く体裁(かたち)を取り置き沈黙して居る。二人に対する俺の思惑(こころ)は彼女達から貰える褒美に限界(かぎり)を見てから上気を逸して、お茶汲みにも成る柔い姿勢(すがた)を崩さなかった。二人の彼女は〝無機〟を着飾り延命(まのび)を図り、俺の前方(まえ)から露とも失(き)えずに輝体(きたい)を拡げて沈黙して居る。しかしそうして整う未熟な女性(おんな)は〝二人の彼女〟に等しく分れて怠惰を目覚まし、二人に宿った煩悩(なやみ)を操る端正(きれい)な情熱(ねつ)には、俺から愛せる器用な懶惰が所狭しと四肢(てあし)を拡げて縦横へと就き、〝二人の彼女〟に俺の欲心(こころ)を堕落へ誘える不敵の主観(あるじ)を〝土手〟の上にて密かに洗える無欲の好意を出世させ得た。何時(いつ)しか〝土手〟には奇麗に透った以前(むかし)の景色が顔を揃えて並列して在り、俺と「彼女」の二人の微熱が涼風(かぜ)に晒され冷まされ行くのを、遠目に観て取る一つの経路が俄かに現れ無像を保(たも)ち、自然に彩(と)られる見慣れた景色を静かに独歩(ある)けた俺と「彼女」は〝俺の部屋〟へと足場を急かせる無量の身軽へ紅潮して活き、〝二人の彼女〟はそうした〝土手〟での何気の好意に〝自分の秘部〟まで少しの辺りを体(からだ)を滑らせ触らせる等の余った純心(こころ)に誓いを保たせ、俺の上気は真面目を崩して戯れ始めて〝彼女〟の真心(こころ)を喰い散らかすほど獣の温身(ぬくみ)を記憶して居た。もしかすると彼女各自が促(すす)めた秘部を、俺は何処(どこ)かで指に乗せ得て、二人に宿った微妙の妙味を心豊かに堪能して居る淡い空想(おもい)を識(し)ったか知れない。脆(よわ)く咲き得る処女の微臭(におい)は俺の目前(まえ)にて貞香に無いが、彼女各自に明るく宿れる古い傷には、以前の男性(おとこ)を永らく宿せた女性(おんな)の器量(うつわ)が大きく煌めき、艶(あで)を識(し)り得た貴重の体は、俺の掌(もと)からすんなり立ち得る僅かの気力を女性(おんな)に見せ付け、俺の精神(こころ)は〝二人の女性(おんな)〟の身軽の勝手に犠牲を憶えて華を観て居た。二人の彼女に自然に宿れる美麗の感覚(いしき)は、俺の麓(もと)から急いて立つのに男性(おとこ)と女性(おんな)の俄かの逢瀬を事々細かく断片して行き、緩い経過(ながれ)にほとほと寄り付く挨拶代わりの女性の好意へ樞(ひみつ)を繋げて憂いで行って、俺の心中(こころ)に、吝嗇したまま裸体の灯(あか)りを暫く通した二人の女性(おんな)は〝女性(おんな)の溜り〟を淀みの無いまま伝(おし)え始めて、俺から発する陽気のシグマは「彼女」を観ながら愉しみさえ見た。〝中谷美紀〟から尖って落ち得た伊原幸子は俺の精神(こころ)と二人切りでも自分へ懐ける鋭気の灯(あか)りは暗(やみ)を敷きつつ気丈を尖らせ、俺から放った欲心(こころ)の露悪(ろあく)が「彼女」を彩(と)るべき構図を識(し)らずにあたふたしてると、果(さ)きの見得ない〝彼女と落ち込む付き合い〟など見え、一方、別の〝土手〟へと足を速めて上(のぼ)った俺には京野ことみの柔さが懐いて凡庸が識(し)れ、そうした柔らを彼女に取り付け肉の強みと二重(だぶ)らせ始める狡い自我へと相対(あいたい)しつつも、俺の思惑(こころ)は性欲に強靭(つよ)い我が身を呈して体裁象(ていさいと)りつつ、少々黙れる彼女と見果てた男女の模倣(ならい)に明るく咲き得る交際など識(し)り、結局落ち着く俺の欲心(こころ)は自分に分(ぶ)が好い京野ことみと戯れ始める明るい未来(さき)へと、〝中谷美紀〟から漏れて成り得た幸子に対して〝気丈〟の悪さを引用しながら、歩速(ほそく)を速める怪しい身分を自分に見ていた。そうした最中(さなか)に〝二人の彼女〟は自分を尖らせ気忙(きぜわ)に在ったが、俺から見慣れた我欲の四肢(てあし)に体を引かれて両手を引かれて〝土手〟の通路を独歩(ある)いて行く内、女性の秘部さえ容易く晒せる女性(おんな)の技量に呑まれて居ながら、転々転々(ころころころころ)自分の顔さえ器用に仕上げる変化(へんげ)の手腕を講じても居た。

 俺の心身(からだ)はふわふわ浮んで暗(やみ)の内から現行(ここ)まで辿り、〝自然〟と言われる無色の気体を抜けつつ、気付いた瞬間(とき)には主観(あるじ)に従い「彼女」と居たのだ。するする抜け行く生気に従い、自分を超え得る新たの主(あるじ)を過去に呼吸(いき)する何等の生気がふらふら観(み)背行く孤独の許容(かこい)へ自分を誘(いざな)い、見知らぬ〝土手〟等、既知の物だと信じて居ながらそうした自分に付いて行けずに現行(ここ)で見え行く全ての記憶を疑い始める人間(ひと)の弱味は宙(そら)から落ち得る未来を装い、器用に象る女性(おんな)の水面(おもて)は俺から離れて暫く佇み、俺の居場所を傍観して居る未来の「彼女」は女神の独気(オーラ)を散々振り撒き、それでも化(か)わらず自身の発音(おと)など発しても居る。俺の興味は「彼女」を外れて世訳に在っても、自滅して行く脆(よわ)い空気(もぬけ)が俺を固める生気と繋がり、暫く見得ない固陋の歌声(こえ)などまったり静かに生還させ得て、遠く離れたこの夜(よ)の果てでも、決って「彼女」の柔さの内(なか)へと空転(ころ)んで戻れる自然の妙味が綽(しなや)かにも立つ。俺の両眼(まなこ)は自然が起せる〝都会〟の内(なか)から自分本位に暗闇など呼び、「彼女」が降り立つ修業(しゅぎょう)の園(その)へと真っ赤に燃え立つ夕日の裾にて、何に対すも冷徹ながらに真っ逆様から横殴りをして、自滅を誘える「女神」の感覚(いしき)を手に取り始めた。端正(きれい)に仰け反る夕陽の斜陽が〝土手〟の頂(うえ)から麓へ降り行く。俺と「彼女」はこれまで観て来た孤独を連れ添う明るみなど観て、「明日(あす)」の延命(いのち)に身体(からだ)を図れる青春ごっこの想いの脆(よわ)さにふと又気忙しくなり、誰かの感覚(いしき)にうっとりし出した自分の犠牲(かわり)を求め始めた。健康体から捌々(さばさば)抜け行く淡い〝生気〟の刹那の未熟(あお)さに、瞬く間にして気楼を宿せる透った不安へ妄想(おもい)を打(ぶ)ち上げ、上気を失(しっ)せる自身の覚悟を〝自然〟に見上げてくすくす笑える。日本の歴史も世界の歴史も現行(ここ)に居座る二人の人には一切彩(と)られず関係無い儘、〝気丈〟を擁せる男女の契りをエデンの園から援用して来て、大きな欠伸を二つ三つ吐き付け行く後、互いを見詰めた二人の「男女」は〝生気〟を嫌って宙(そら)へと居座り、現行(ここ)に流行(なが)れる得体知れずの無形の事象(こと)など、全てを片付け宙(そら)へ仕舞えた。「明日(あした)」から咲く〝無形の華〟には地に足着かずの孤独が居座り、宙(そら)の麓(もと)へと大きく小さく無傷で還れた二人の男女(すがた)は、一つに纏まる橙色した小さな夕日に私闘を観る儘、無形(かたち)の冴えない端麗(きれい)な樞(ひみつ)を〝自然〟が興せる無重の〝水面(みなも)〟へ透して返せる奇遇の仕上げを遠くから見て突っ立って居た。彼女から成る無像の正気は悪魔を生やして煌々(きらきら)棘立(とげた)ち、現代人には余程も識(し)れない未来(さき)の記憶が満載しており、彼女の温(ぬく)みを清閑(しずか)な両眼(まなこ)で見詰める我が身も、彼女に対せた奇妙な衝動(うごき)に期待をして活き、彼女から得る〝緻密でありつつ暴れる生気〟を、弟子の態(てい)して伝(おし)えて貰い、未来(さき)の麓へ落ち着く偶奇(チャンス)は奇麗に仕上がり丸まり始めた。しかしそれでも、これまで現行(ここ)にて信じて憶えた事の数多は立脚して活き、現代人にも通用して生(ゆ)く言葉の数多は俺の懐(うち)にて顕在して在り話し言葉も書いた言葉も〝迷文・悪文・奇聞に真言、箴言・詩篇に随想・評論〟、微妙に成り立つ他(ひと)の評価に見知らぬ主観(あるじ)が丈夫に気取られ黙して在ったが、「彼女」に問われる評の内には他(ひと)から成り立つ発想(おもい)の手数(かず)など一つも立たずに俺に煽られ、程好く透った小雨の内には雨情(こころ)に流行(なが)れる未熟(あお)い陳腐が四肢(しし)を組み活き遊んで在るのを、俺の感覚(いしき)ははっきり識(し)りつつ、「明日(あす)」の延命(いのち)を揚々豊穣(ゆたか)に見定め始めて「彼女」の居所(いどこ)を全身(すべて)を操(と)りつつ捜して行った。俺の周囲(まわり)でちらちら生れた両親(おや)の温身(からだ)は両脚(あし)を操(と)りつつ独気(オーラ)を操(と)りつつ、細い暗路(ルート)を小声の四隅に造って在ったが、冷たく光れる〝彼等〟の瞳は俺の心身(からだ)を包(くる)む振りしてそのじつ謎へと暫く歩ける活力(ちから)を有して立脚して在り、俺の両眼(まなこ)も〝彼等〟の慧眼(まなこ)も黙して語れず、怜悧(つめ)たい自然(ようす)を自然(じねん)に擦り抜け、滔々見得ない許容(かこい)の内へとすっぽり這入れる。そうした許容(わく)には四隅に固めた白壁(はくへき)が立ち、自分から出る言葉の色など生気を携え付された際には白壁ながらに自分の色などはっきり浮き立ち目立って行って、白壁(かべ)を呈した許容(かこい)の主観(あるじ)は〝そうして浮き立つ個性の脚色(いろ)〟など他(ひと)へ囃して面白がりつつ、紹介して行く見知らぬ(気取れぬ)無暗の過程(みち)には、俺に対して恥辱と成り得る挫折を予知する苦悶の響きが、精神(こころ)に騒いで〝堂々巡りの初秋(あき)〟を呈して俺の延命(いのち)は瞬く間の内、故郷を見付けてほっそり還る。「彼女」に揃った不安の時期と、俺に集える〝纏め〟の時期とが丁度好いまま融合して活き、樞(ひみつ)へ辿れる〝安価の寝床〟は俺に拝して沈黙して在る。表面(おもて)を上げずにじっとそのまま瞑想(ねむ)って在るから砂利の上でも〝痛み〟を感じず、孤独を凌いで徘徊して行く空蝉(がらん)の憂慮は俺から彩(と)られて沈黙して活き、一層返れぬ宙(そら)の内から現行(ここ)を眺めて儚く在った。〝意味〟を解(かい)せぬ人間(ひと)の文様(ことば)は暗(やみ)に塗れた単語の体(てい)して〝記号〟と呼ばれる〝自然(しぜん)〟を呼び生(ゆ)く舞台を彩(と)りつつ、清閑(しずか)に流行(なが)れる〝自然〟の飛沫は刹那に彩(と)られて紅(あか)く成り出す。硝子匣(ガラスケース)に暫く透れる俺の感覚(いしき)と彼女の仕種は、温度を見知らぬ器用な幻想(ゆめ)から細々上がって耳鳴りさえ保(も)ち、「明日(あす)」へ繋がる暗路(つうろ)を見取れぬ脆(よわ)い母神(ぼしん)に安堵を識(し)った。無茶をして行く若気の辺りは過去の記憶を不断に識(し)り得ぬ昔語りの奇想から漏れ、「昨日」に呼吸(いき)した哀れな末路(ルート)を心地の好いまま白紙(かみ)へと落し、〝目立たないのは平衡(バランス)を観ぬ夢想の変化(へんか)…〟と口を尖らせ密唱(みっしょう)して居り、白銀(ぎん)に咲き得た人間(ひと)を象る〝八岐大蛇(やまたのおろち)〟は、民話の中から気配を繰り抜き、空気(もぬけ)の辺りで呼吸(こきゅう)をして生(ゆ)く〝生気〟に肖り〝自称〟を観た為、俺の目前(まえ)にて清閑(しずか)に成り立つ淋しい孤独の固陋の勇者は、〝大蛇(おろち)〟を倒せた巫女と成れずに烈しい天河(てんが)へ昇って行った。暗(やみ)から闇へと、暗(やみ)から光へ、光の園から自然に誘われ落ち得た闇へと、巡行して行く人間(ひと)の肢体(からだ)は俺を取り巻く肉欲とも成り、周辺(あたり)に根付いた器用な変化を露ほど気にせず活き行く肢体(からだ)は俺の心(うち)へとぽつんと咲け得る妖美(ようび)を示して消却され活き、恰好(かたち)を象(と)らせぬ神秘のぐるりは暗悶(あんもん)にも着き、黒く映え得る俺を取り巻く樞(ひみつ)の在り処は、「彼女」の仕種に揚々漏れ行く一新され得た徒労の軌跡を粉砕して居た。挙句の果てには「彼女」を取り巻く奇跡の神秘(ベール)も粉砕された。粉砕したのは紛れも無く自然を象(かたど)る永久(とわ)の主(あるじ)で、主(あるじ)が努めた孤高の通路(みち)には誰も何もが介入出来ずに、夜明けを牛耳る過去の景色は俺の背後で暗(やみ)を欲しがり空転した儘、端麗(きれい)な彼女から成る生気の魅力を、心行くまで吟味(あじ)わい尽すと、印象(かたち)に成らない突飛の空想(おもい)に満ち果てていた。

 そうした景色を暗路(あんろ)を通って具に観ていた俺の感覚(いしき)は、自然に心身(からだ)を与り、「彼女」の元へと順々急いだ岐路に在りつつ紅(あか)く成り活き、〝土手〟の頂(うえ)から紅(あか)く燃え行く夕日を観る度、〝彼女〟に潜んだ微温(ぬる)い肉壁(かべ)など俄かに潤い誘い出したが、突飛に湧き出た思いに操(と)られて衝動(うご)きが安(やす)まり、〝何処(どこ)か、此処(ここ)から程々離れた見慣れた場所にて、自分に課された任務が在るから、行かねば成らぬ…〟と、小声で呟き蠢き始めた〝焦り〟を湿らす妙な吐息は、「そうした〝任務〟をし終えた後(のち)にて、〝彼女〟と再びいちゃいちゃしよう…」と、余程に吹かれた気色の内にて、俺の心を酷く揺るがす〝真面目〟が働き先を急いだ。一度この身が欲に巻かれた残骸(むくろ)と成って、彼女の艶(あで)へとすんなり堕ち行く〝落着紛いの形成(なり)〟を見てから純情など失(き)え、男性(おとこ)へ対せた女性(おんな)の明度に〝肌〟を知るまま肌色に惚れ、男性(おとこ)に相(あい)した俺の記憶は、彼女目掛けて走って行った。理想(ゆめ)に覚えた女性(おんな)の柔さの泥濘(どぶ)の内にて、男性(おとこ)の精(こころ)を即座に狂わす〝果実〟を見ながら情欲を立て、躰を見せ付け何にも言わない女性(おんな)の努力(ちから)に憤悶(ふんもん)して行く無性(むしょう)の惑いに攫われ始めた。俺の孤独ははっきり浮き立ち、女性(おんな)の両眼(まなこ)に真向きに捕われ、舌なめずりして習慣に向く。女性(おんな)の心身(からだ)は白壁(かべ)を呈してまったり煌(かが)やき、俺の目前(まえ)から遥かに先(せん)じた〝独学・闊歩〟を体好く見せ付け、放屁に似寄る翼を生やして宙(そら)の絵と成る。原稿(ここ)で見られた幾多の煩悩(なやみ)が経過を連れ添い俺の過去など僅かを残して暗(やみ)へと去り消え、僅かに残した〝女性(おんな)〟の外形(かたち)は真昼に失(き)え行く快感(オルガ)を追い駆け蛇と出会って、肢体(からだ)に付け行く飾りを観(み)せては外界(そと)の涼風(かぜ)吹く荒野の園(その)へと率先しつつも落ち込んで居た。派手に転んだ女性(おんな)が在れば、そうした気色を女性(おんな)に片付け、自分の厚着を恥に想える拙い男性(おとこ)が騒ぎ始めて、何処(どこ)へ向くのか一向知れない〝女性(おんな)の園(その)〟へとまっしぐらと成り、自分の微熱がどんな行為を働かせるのか、一向知れ得ぬ人間(ひと)の無知へと邁進するのは誰でも同じで、他(ひと)と違(ちが)わぬ許容の内から食み出ぬからとし、息巻き、揚々、〝人間(ひと)の音頭〟に従い始める。知らぬ間(あいだ)に現行(ここ)に生れた俺の心身(からだ)は自然を見て取り、自然に懐ける人間(しぜん)の内には男女が芽生えて空気(もぬけ)を着飾り、各自が各自で、自体の内など一切報せず危ない懸橋(はし)へと渡って行って、二度とは返って来れない死地へ向かって独歩(ある)いて行くから俺の気持ちは清々したまま寝転び出した。女性(おんな)の唾液は男性(おとこ)を識(し)る儘、態とらしく舞う偽の律儀を取り揃えて活き、生き生きしながら分別顔して、男性(おとこ)に沿いつつ弄(あそ)びを忘れず、〝自分の道を…〟と一層目立てる〝紅い土手〟へと姿を晦まし闇へと活き行く。現代(いま)に活き得る男性(おとこ)の姿勢(すがた)もそろそろ女性(おんな)に従う間(あいだ)に自分へ課された男性(おとこ)の義務など終ぞ忘れて〝土手〟へと登り、紅い夕日に対する間(あいだ)に、女性(おんな)に彩(と)られた紅い悪魔が女の女肉を薄ら連れ添い男性(おとこ)へ観(み)せ付け、男性(おとこ)の肢体(からだ)は夕日へ向かった猪突の態(てい)して決して戻れぬ妄想(ゆめ)を見守り自分を消した。〝土手〟の上にて宙から麓を横行するのは、女性(おんな)から成る虚無の肉体(からだ)の温度であった。初秋(あき)の涼風(かぜ)吹く土手の上では「昨日」に観た灯(ひ)がすんなり冷え活き虚構へ暮れ出し、俺から見得ない暗(やみ)の灯(あか)りを密かに点(つ)け出し我が身を呈した。

 俺の心身(からだ)はそうする最中(さなか)の景色に彩(と)られて脚色(いろ)を付けられ、空気(もぬけ)へ失(き)え行く女性(おんな)を追い駆け乞食の体(てい)して保身を観(み)続け、慌てながらにこの世に活き行く自己(おのれ)の煩悩(なやみ)を透して行くのに、女性(おんな)へ飾れた無駄な妄想(おもい)に自分を見て取り地に足着けて、自分に課された〝定め〟が居残る〝見慣れた場所〟への散歩をし続け、創った「彼女」と自分で頂く青春(はる)を着飾る景色を探すが、一向経っても見付けられ得ず、あれ程願った〝二人の彼女〟と契りを交せる男女の遊戯は、この世で叶わぬ無為の描写を続けて行けた。一度も「彼女」と並んで歩けず、何処(どこ)かに隠れた一室(へや)の中へと這入って行けずに、二人を惑わす涼しい風には、この世に居着いて人間(ひと)を煽れた解(と)けない魔力(ちから)が常に輝き活き活きして居り、俺と「彼女」もそうした懊悩(なやみ)に茂みを知るのは人間(ひと)の常識(かたち)を好く好く離れず、無駄な労苦と相(あい)しても居た。自己(おのれ)から出る欲の姿勢(すがた)は「彼女」と「俺」とに等しく煌(かが)やき人間(ひと)の〝行為に過失(ミス)をするのに笑顔が零れて余裕(ゆとり)さえ出来、各自が各自で、自分を活かせる律する甘さに白壁(かべ)を仕立てて遠方(とおく)を見据え、男性(おとこ)は女性(おんな)に、女性(おんな)は女性(おんな)に、俺は宙(そら)へと、誰か何かを見知らぬ奇妙な迷いに云々(うんうん)共鳴(ひび)いて延命(いのち)を仕上げて、「明日(あした)」から就く旅路の麓へ怜悧(つめ)たい表情(かお)して四肢(てあし)を拡げて、硝子に透った脆(よわ)い日差しに〝定め〟を預けて落ち着き始める。俺の心身(からだ)が誰に対して、何に対して活き行き在るのか、女性(おんな)の芳香(かおり)が宙(ちゅう)に漂い〝土手〟を避(よ)けても、俺には分らず、幻想(ゆめ)の気色が欠伸をしていた。

 俺の精神(こころ)が自分の体(からだ)に通せんぼをして、〝土手〟を渡れぬ哀れな残骸(むくろ)を犠牲に取らせた刹那の内では、伊原幸子を密かに愛した詰らぬ情念(おもい)が脳裏を独歩(ある)いて杮(こけら)を落し、「彼女」に対した数多の我欲が夢想を捧げて肉体(からだ)を温(あたた)め、「彼女」の身内へ無駄に潜めた〝紅(あか)い悪魔〟が尻尾を振り上げ、幸子の秘部には膣の温(ぬく)みがじんわり解(と)け込み注入され行き、「彼女」の〝愛〟から揚々滴る処女の生き血が唾液を垂らして男性(おとこ)を欲した。俺の心はそうした「彼女」に憧れ始めて妄想して生き、止め処無い程この世で煌(かが)やく悪魔の生き血が男女を温(ぬく)めてほっそり振舞い、やがて跳び行き俺が見上げた宙(そら)の内へとすっぽり静まり孤独を嘲笑(わら)い、大童に彩(と)る「彼女」の灯(あか)りに〝ダイヤ〟を見ながら過剰に温(ぬく)めた自分の麻疹(はしか)が俺の根を取り現行(いま)の現行(いま)まで白煙(けむり)を見詰めて自慰に耽った。滅茶苦茶滾って興奮して居た男性(おとこ)の精(たね)には下肢(あし)が伸び行き「彼女」が焦がれて、他に活き得る男性(おとこ)の精(たね)には〝決して識(し)られず奪(と)られない〟等、白紙に翻(かえ)った奇妙の文句は人間(ひと)に付かずに俺を象り、自然に愛され失くした純情(こころ)は、「彼女」の理想(ゆめ)から決して離れぬ固陋の文句にその実(み)を化(か)え活き吐息を吐いて、俺の狡さは京野ことみをそれでも手元に蹂躙して生き〝温かさ〟を見て、自然に彩(と)られた男女の丸味は俺から離れた死地へと赴き、奇麗な顔した「彼女」の紅身(あかみ)へほとほと黙って相(あい)して在った。

 夜、巨体の怪物オークが幾匹眠る空地の周りを、俺から生れた分身(かわり)の温身(ぬくみ)は〝二人の彼女〟と漫ろに歩いて暗(やみ)へと向かい、所々に光のちらつく冷たい空気を感じながらに、自然と並んだ一つの経過(けいろ)を疑問に思わず独歩(ある)いて行った。二人の表情(かお)には所々の光を想わす〝光明仕立ての良薬(くすり)〟の態(てい)した柔い微笑(わら)いがふんわり落ち着き記憶へ解(と)け得て、俺から離れる真理の文句(ことば)はどぎまぎしながら「彼女」を吃らせ、何を言うのかはっきりさせずに怜悧(つめ)たい感覚(いしき)に精神(こころ)を運ばせ、「明日(あす)」へ追い付く人間(ひと)の意識を、他の誰とも相対(あいたい)出来ない空慮(くうりょ)を灯して懊悩さえ観(み)ず、食うや食わずの明日(あした)を彩(と)るのがそれ程見辛い景色であるのか、〝仄(ぼ)んやりして居る彼女〟に問うても何にも変らぬ自分の〝分身(かたち)〟を宙へ擡げて相対(あいたい)する儘、彼女に宿れる過去の感覚(いしき)は移り気さえ無い潔白(しろ)い体(からだ)を晒しながらに、俺を通せる暗(やみ)の神秘(ベール)に相対して居た。そうこうしながら俺の心身(からだ)は分身(かわり)の衝動(うごき)を分析する内、少々拙い自分の仕事を程好く離れた空地に見付けて往復して在り、空地を土手とを観たまま繋げる細い暗路(あんろ)を徘徊しながら、しなけりゃ成らない堅い仕事に躍起に成っては〝彼女〟を見送る飽きない傾斜に暫く傾(かしづ)き、元(もと)を取り得ぬ〝彼女〟に教わる〝人間(ひと)と付き合う最中(さなか)の敏手(びんしゅ)〟を懇切丁寧、至極孤独に諭され始めて、俺から延び行く男性(おとこ)の人影(かげ)には彼女の生気が仄(ぼ)んやり仰け反り宙へ居直る気配を観せては、個人(ひと)に彩(と)れない哀れな残骸(むくろ)を落胆間際の非力へ投げた。俺から生育(そだ)った彼女へ対する不変の発声(こえ)には、人間(ひと)であるうち誰にも問えない白壁(かべ)が仕上がり孤高を観せた。そうした〝彼女〟の背後にちらちら、〝光明〟にも似た二人の男性(おとこ)が俺を見付けてほっそり立ち行き、孤独を連れない二人の男性(おとこ)は宙から生れて現行(ここ)まで来たのか、刹那(みじか)い間(あいだ)にするする生育(そだ)てた自体(からだ)を観せ生き生長して在り、〝彼女〟に連れ添う俺の弱味を直ぐさま掌(て)に取り非常に捉え、遣らねば成らない〝何かの仕事〟へ躍起に取られて向かう間(あいだ)に、男性(おとこ)の人影(かげ)からすくすく延び行く輝体(きたい)が煌めき形相(かたち)を取り付け、潜(くぐ)り抜けない〝自然〟の周辺(あたり)で粉砕出来ない白壁(かべ)に対して嘆いて在った。〝彼女〟を離れる俺の躰へひそひそ連れ添う二人の男性(おとこ)は何時(いつ)か何処(どこ)かで見知った表情(かお)して静かに在ったが、〝二人〟の姿勢(すがた)は人間(ひと)の衝動(うごき)へ巧く隠れて一人で在ったり二人で在ったり、光明(ひかり)の差し行く暗路(あんろ)の周辺(あたり)で〝彼女〟を離れず沈黙して在る。〝彼等〟の周囲(まわり)をこんもり取り巻く奇妙な暗(やみ)には、光明(ひかり)が差しても明度を増せない根深く灯った強靭味(つよみ)が観て取れ、どれだけ、途々(みちみち)、気丈に燃え立つ〝夕日〟が差し込み暗(あん)を切っても、決して取れない暗(やみ)の生気がかたかた活き活き、俺から観えない〝彼等〟の姿勢(すがた)は空気(もぬけ)に攫われ失(け)されて在った。しかしながらもそうした〝彼等〟が自分の〝生気〟を宙(そら)へと投げ付け、俺の周囲(まわり)に確かに居るのが滅多矢鱈な闇の内にてはっきり観て取れ、〝白紙〟に書き行く憶え書きにも〝二人〟の姿態(すがた)は陽(よう)を着た儘すんなり降り立ち、俺と白壁(かべ)へと身近に対せる表情(かお)の緩みは、然程も萎えずに器用に彩(と)られて俺から挙がった上気に対して〝何程でも無い日頃〟を想わせむっつりして居る。立場の彩(と)れない〝二人の男性(おとこ)〟は俺から離れず〝彼女〟を離れず〝俺〟から失(き)え行き俺に現れ、暗路(あんろ)に通した神秘(ひみつ)の過程(みち)へと忠義顔して独歩(ある)いて居ながら通り過ぎない多勢を仕留めて雲散して居る。俺の心身(からだ)はよぼよぼ汚れて〝彼女〟を識(し)りつつこうした〝二人〟に散々寄り付き〝明度〟に彷徨い露店に在ったが、星の数だけ〝彼等〟が見得行く嫉妬に駆られて〝彼女〟へ寄り付き気忙しくあり、表情(かお)には〝彼等〟へ対せる幻さえ見て燥いで在ったが、如何(どう)にも奪(と)れない白壁(かべ)に対して嫉妬をしていた。疾走(はし)り始めた夢幻の主観(あるじ)は〝彼等〟を取り巻く白壁(かべ)に打(ぶ)つかり身向(みむ)きを変え行き、堂々巡りの〝相(あい)〟に成り得ぬ悪癖(くせ)の酸味を飛ばして在ったが、それにつけても傾倒し切れぬ〝彼女〟の衝動(うごき)に仄(ぼ)んやり仕上がる俺の無靴は〝彼等〟へ向けられ突拍子も無く、〝彼等〟に下がった〝彼女〟の緩みが何分(なにぶん)動じて衝動(うご)かないのを不満に見て取り不覚を覚え、〝彼等〟に貼られた〝ラベル〟の文字には暗(やみ)の明度を明かし切れない細かな字体が記され始めて、俺の元から漫々(そろそろ)離れる〝彼女〟の姿態(すがた)は、文句(ことば)で彩(と)れない幾何学模様の神秘を保(も)ち得て神秘(ベール)を象り、個人(ひと)に識(し)れない〝短編紋様(たんぺんもよう)〟を上手く逃がして立唱(りっしょう)して居た。焦りの伴う俺の過去には〝淡い恍惚(オルガ)〟が仄(ぼ)んやり仕上がりこの果(さ)き独歩(ある)ける自分の〝通路〟を〝暗路(あんろ)〟に見立てて収めて在ったが、〝彼女〟の犠牲(かわり)が〝彼等〟の下から暫く飛ばされ、ぽとぽた落ち着く〝人身(ひとみ)〟の態度に萎(しな)んで在ったが、俺から仕上がる「彼女」を象る無像の安堵は儚く切り立ち〝白紙〟を添え付け、〝彼女〟の残像(のこり)を巧みに描(か)き生(ゆ)く主観(あるじ)に模倣(なら)って微笑(わら)って在った。俺の感覚(いしき)は彼女を連れ添う気性に彩(と)られて柔く仕上がり、暗(やみ)を透せる十万億土の神秘の光明(ひかり)を未だ携え靡いて在ったが、「彼女」が空転(ころ)がる夢想の辺りは純度の眩い〝定め〟に模倣(なら)って孤高を打ち添え、俺の独歩(ある)ける逆境(かがみ)に映え出し無重に浮き行く活気を孕んで共鳴(さけ)んで在った。俺の心身(からだ)はとあるゲーム、ロールプレイングゲームに登場して来る〝勇者〟の使える魔法の内(なか)から〝ラリホー〟など〝眠らす魔法〟を瞬時に覚えて習得して居り、自分の内実(なかみ)にそろそろ揃えた〝隠した実力(ちから)〟にうっとりして行く微かな強靭味(つよみ)を何気に捉えて直立して在り暗(やみ)に紛れる小さな遍路を心行くまで堪能しようと、「彼女」の行方を小さく求めた自分の行為に少々安堵を豊かに携え〝「彼女」の失(き)え行く暗路(みち)〟の内へと闊歩したまま這入って行った。俺の表情(かお)には「彼女」の姿勢(すがた)を幻想(そこ)に観ながらずっと共鳴(さけ)んだ鬼畜が吊るされ姿勢(すがた)を化(か)えない。「彼女」を見付けて這入れた暗路(みち)と、「彼女」の行方を細々(ほそぼそ)追いつつ這入れた暗路(みち)と、半々ながらに一つの〝暗路(あんろ)〟に亡失され得る〝奇妙〟を捉えた俺の独創(こごと)が幻想(ゆめ)を創った。そうして経過が自然の態(てい)して流行(なが)える最中(さなか)に、俺と「彼女」のてくてく独歩(ある)けた夢見の〝暗路(あんろ)〟は漆黒(くろ)い煙霧(えんむ)を頭上に冠せた空地の周囲(まわり)で一続きと成る。俺の心身(からだ)はそうした〝空地〟の周囲(まわり)の暗路(みち)にて、「彼女」を連れ添い、「彼女」を追い駆け、〝光明(ひかり)〟が芽吹いた〝経過〟の端果(はさき)に「彼女」の残像(のこり)を垣間見始めた佳境の折りから、ぐんぐん延び行く〝煙霧(えんむ)〟に任せて自由を象り自信を装飾(かざ)り、宙(そら)へ昇って物見出来得る〝眠らす呪文〟を刹那に憶えて垣間見て居り、「彼女」の姿態(すがた)を留(とど)める他にも、「彼女」に纏わる他の男女の言動(うご)きも止(と)め得る自然の操(と)れない活気を見付けて、自分の操(と)るべき今後の衝動(うごき)を秘密に講じて浮き浮きして居た。

 巨体の怪物・オークが横切る〝空地〟と成り行く森の光景(けしき)を、自分に彩(と)られた横目で窺い、オークの独歩(ある)ける小路(こみち)の住処を〝空地〟の内にて散々探してオークの背後に野平(のっぺ)り煌(あか)るい光明(ひかり)の姿態(すがた)を幻想(ゆめ)へと着付けて、俺の心中(こころ)は誰かに追われた焦燥(あせり)を見せ付けゆっくり独歩(ある)き、〝何か〟に追われる奇妙な気色を具に見定め開眼して行く自分の主観(あるじ)に従え添い得る仄かな恐怖と対峙したのは、オークの気配が暗(やみ)を透せる〝奇妙な光明(あかり)〟に煌々明るい孤独を呈せた妄想(おもい)に在った。そうする内にも暗空(あんくう)漂う白い布にも似通(にかよ)る白雲(くも)の流動(うごき)が俺の傍(そば)迄そわそわ、さわさわ、自分の空体(からだ)を晒す程度に夜霧に化けつつ緩々流行(なが)れ、雲間に隠れた巨物(オーク)の〝睡眠(ねむり)〟が声を荒げて俺へ向くのは、曇った天下でひそひそ独歩(ある)けた俺の気色に温(あたた)かかった。段々温(ぬく)まる脆(よわ)い肢体(からだ)を気にして居ながら、如何(どう)にも斯うにも、オークの怪力(ちから)にほとほと怯えた俺の胸中(むね)には一つ綻ぶ勇気が芽生えてつかつか独歩(ある)き、のっそり茂った〝オークの森〟へと頭蓋を低めて近付く最中(あいだ)は、一匹眠ったオークの表情(かお)から仄(ほ)んのり明るい目的(あて)を見据えて呆(ぼ)んやりして活き、じわじわ起き行く宙(そら)の暗きは巨物(オーク)の空体(からだ)を俄かに灯らせ、俺へ対した身近な帳はオークの記憶を講じてもいた。俺の気持ちは暗(やみ)を独歩(ある)ける微動の思惑(こころ)に一点短い晴れ間が覗けて自由が在ったが、緩々包(くる)まる柔い妖気(ようき)の底で寝そべる分身(かわり)を見詰めてひっそり微笑み、自分に宿れる不思議な独気(オーラ)を暗空(そら)へ見送る記憶と同じに自分の元へと揚々手繰って引き摺り寄せては、巨物(オーク)へ対せる身近な腕力(ちから)を未来(さき)へ投げ付け「彼女」を待った。「彼女」の精神(こころ)は宙(ちゅう)へ漂う俺の記憶をその背に乗せつつ、俺の元(そば)から結構離れる浮世の三角州(しま)まで躰を飛ばしてすうっと解け入り、俺から見得ない器用な空想(おもい)を二手に分けつつ活きてあったが、俺に操(と)れ得ぬ「彼女」の心中(こころ)は明度(ぬくみ)を報さぬ霊力(ちから)を煎じてほとほと脆(よわ)り、白鱚(しらぎす)みたいな奇麗な顔には何にも解(と)け得ぬ固陋(くせ)が寄り付き生気が暮れる。暗空(そら)へ羽ばたくオークの群れには翼の生えない体力自慢が揚々拡がる星の光に駆けつつあるが、「彼女」の姿が俺から消えない脆(よわ)い最中(さなか)は音を発てずに、牛々(ぎゅうぎゅう)縮まる白い霧など、白雲(くも)に重ねて空へと挙げた。そうした〝帳〟の白体(からだ)を見詰めた脆(よわ)い思惑(こころ)が「彼女」の姿勢(すがた)を微動(うご)かせない儘、〝意味〟の解らぬ脆(よわ)い孤独を愛して居たから、俺の頭上(うえ)では白鱚(しらぎす)にも似た「彼女」の顔など表情(かお)を観せつつ浮んで居たので、暗さに通れる〝オーク〟の浮力(ちから)は灰雲(くも)の上へと全く失(き)え行き、俺の元には小さく騒げる無表情だけ「彼女」を捕えて冷笑(わら)ってあった。

 むくむくしていた巨物(オーク)の空体(からだ)は俺の目前(まえ)にて更に大きく、ずんぐりむっくり膨れた寝首を更に太くし体力(ちから)を温(あたた)め、再び起き行く無性(むしょう)の力は俺の目前(まえ)にて新しさを保(も)ち、これまで独歩(ある)けた俺の定めを冷たくして行き動揺(うご)いて居たので、俺はそれから巨物(そいつ)目掛けてぼそぼそ呟き、暗さに染み入る鶺鴒(とり)の声して呪いを掛けた。ラリホーの呪文である。〝再び〟起き行くオークの空体(からだ)に、俺の両眼(まなこ)は切に煌(あか)るい記憶を見て取り回顧して居り、何時(いつ)か何処(どこ)かでひっそり止(と)まった〝最中(さなか)〟に相(あい)して、〝空体(オーク)〟の独気(オーラ)が暗(やみ)から挙がって俺へと対する微温(ぬる)い恐怖を次第に仕上げ、宙(そら)を仰いだ空(から)の手先は奇妙に笑って憤悶(ふんもん)へと就き、無精(ぶしょう)を衒った宙(そら)の涼風(かぜ)には思惑(こころ)が座れぬ三角州(しま)が湧き立ち俺の心中(こころ)を恐怖へ落せる白洲を晒して輝いて居る。

「やっぱ、長いこと使ってなかったから出ないのよねえ~」

等と明るく聞える発声(こえ)の内には、俺から見得ない静かな怒りが真横に飛び活き忙(せわ)しさなど保(も)ち、巨物(オーク)の居座る〝蠢く森〟へと脆々(よわよわ)しいまま勢い散らして歩いて行くのは俺から挙がった残像でもあり分身(かわり)でもあり、それでも暗(やみ)には白黒表(ひょう)せぬ色彩など立ち「彼女」が表れ、俺の心中(こころ)に小さく蔓延るサイケな気色は「彼女」の足元(ふもと)へ薄ら止まった俺から呈せる淡い感覚(いしき)に段々操(と)られて色調さえ化(か)え、二度と浮ばぬ〝孤島〟を見詰めて「彼女」に相(あい)せる悲哀を吟味(あじ)わい透って行った。

 調子に乗りつつ俺の感覚(いしき)は周囲(まわり)に漂う「彼女」達の残りの像(すがた)に揚々羽(は)ためき体裁(かたち)を採りつつ、きっとそうして「彼女」の像(すがた)へ余裕を見せては微熱を帯び出し、「ん、ちょっと待てよ、カメハメ波なら出るかも知れない…」等また、「彼女」の像(すがた)に恐れを見せない少年(こども)の姿勢(すがた)を腹案しながら暗い空地(あきち)の頭上(うえ)に成り立つ捉えぬ空気を傍観した後、目前(まえ)へ居座る巨大のオークにちっとも怯まぬ固さを練りつつ〝丈夫〟を捉えた少年(こども)の両手は「彼女」を呼ぶのに躊躇しながら、すっぽり収まる暗気(あんき)を見上げて解体され行く。揚々努めて、「彼女」の美象(びしょう)が逃げぬ内にと散々苦しむモルグの姿態(すがた)は俺の胸中(うち)へすんなり落ち込み、「彼女」が微笑(わら)える瘴気の端果(もくず)へ堂々巡ってぽつんと突っ立ち、こうした幻想(ゆめ)へと殴り込む程〝強気〟を晒した我(われ)の姿も、遠(とお)に透って、「彼女」から成る流行(はや)りの妖気にとっぷり暮れ行く未熟を見立てて〝少年(こども)〟の降り立つ陳腐な過去には「彼女」の逃げ行く気楼が成り立ち幻想(ゆめ)へと透る。「彼女」の独気(オーラ)を〝空地〟に佇む〝少年(こども)〟の脇へと少々静かに降り立たせる儘、畏れも疲れもまるで見せない少年(こども)の姿勢(すがた)は揚々振舞い、カメハメ波に立つ何等不思議な波(は)を練り構成し遣ると、俺の掌(て)からも何等不思議な力の流行(ながれ)が何処(どこ)かの暗(やみ)からほっそり訪れ、俺の立場を姿態(かたち)を窄めて一投振りつつ、遊泳(およ)いで仰げる「彼女」の表情(かお)にも孤島に舞い立つ習癖(ドグマ)が降り立ち、奈落を目掛けて疾走(はし)って失(き)え行く俺の孤独は空気(もぬけ)を呈して、「彼女」を仰げる両の手先は感覚(いしき)に仄(ぼ)んやり隠され出した。俺の心身(からだ)を自由に延ばせる人影(かげ)の上には「彼女」に向かって柔(やん)わり煌めく華(あせ)の光がほっそり浮き立ち、首をこきこき、左右へ揺らしてオークに対する構えを見出し眠りに就いては、青い光が頭上に仄(ぼ)んやり〝火の粉〟を散らして反転(バウンド)して居る。そうする最中(さなか)に「彼女」の視野から瞬く間にして暗(やみ)へと返った主観(あるじ)の文様(ことば)は、掌(て)から波(は)を出す俺の衝動(うごき)に緻密が彩(と)られてことこと蠢き、柔い空気(くうき)にすんなり射止める女神を見出し温もりさえ観た新たな化身は俺の心身(からだ)を上手に揃えて突破の機を知り、〝カメハメ波〟をする俺の人影(かげ)には「彼女」を湿らす微(よわ)い脚力(ちから)も残らなかった。

「彼女達に余裕を観(み)せつつ、恐れを見せないように努め振舞いカメハメ波をすると、出そうな感覚(かんかく)を覚えただけで結局出なかったが、その感覚が在ったことをもうほぼ出た事にして、その場をそれにて良しとしていた。」

 心中(こころ)に返った奇妙な文句(ことば)はきんきんぎらぎら上手に象(と)られて暖気を漂い、他人(ひと)から成り立つ主観(あるじ)の文句(ことば)が如何(どう)で在っても関わり合い無く、新参者(しんざんしゃ)が立つ細い砦に体を紡いで伸び立ち生(ゆ)くのが、生気に彩(と)られた「彼女」の微笑(わらい)にずんぐりむっくり優雅に飛び立つ俺の孤独が表れてもいる。そうした稀有の景色に程好く絆され、遠(とお)に煌めき〝未熟〟を排(はい)せる「彼女」の肢体(からだ)は巨物(オーク)へ向かってすんなり先立ち、暗い空地に仄(ほ)んのり明るい夜明けを持っては美しくもあり、白く透れる「彼女」を象(かたど)る空気(もぬけ)の顔には、俺の上気を仄(ほ)んのり凄める微(よわ)い感覚(いしき)が歯軋りして居て、巨物(オーク)の生気に全く弛まぬ強靭(つよ)い姿勢(すがた)に悠々佇み、俺から離れぬ〝温(ぬく)み〟を呈した孤独の内にて、俺の前方(まえ)から巨物(オーク)の真横を、どんな物にも気を取られず儘、真向きに捉えた淡さの内へと直進して行く女性(おんな)の怜悧を華咲かせていた。夕暮れから成る紅(あか)の光輝(こうき)が真上に降り立つ細い土手(みち)など独歩(ある)ける孤独に、「彼女」に宿った女性(おんな)の素顔は〝華(はな)〟にも敗けずに輝いて在る。

 夜明けが来ぬ程、凍て付く暗路(あんろ)を辿った俺には、虚無と無粋が「彼女」を取り込む無感の〝空地〟へ往来し始め、自分の総身が暗く漂う〝空地〟の隅へと果ての無いほど遊泳(およ)いで行け得る全く非力な文武の感覚(いしき)が巨物(オーク)を観てから記憶を引き寄せ、〝空地(ここ)〟へ来る前、過去に知り得た洋画の場面を器用に採りつつ微笑(わら)って転がり、「ハリーポッター吹き替え版」にて親父が呟く台詞の内での「何だよこのでかいおっさんはー」など他愛ないほど空気(もぬけ)に失(き)えては印象(インパクト)を取る〝でかい言葉〟に俺の興味はするする解(ほど)けて影響され活き、俺の思惑(こころ)は〝親父〟を真似してそれと同じに全く堂々台詞を呟き、自分の心中(こころ)を妙に操る徒労の仕種を見詰めて居ながら、俺と過去等(かこら)が歩ける目的(あて)の寝そべる土手の上から、青白(しろ)い貌(かお)した見知らぬ青年(おとこ)が〝俺と過去〟とに逆行した儘、細い〝土手〟から暗(やみ)の溺れた〝空地〟の隅へと酷く黙って歩いて居たのを、俺から見得行く視野(ひかり)の内では滔々流行(なが)れる感覚(いしき)の態(てい)して自然に見て取れ、仄(ぼ)んやりして行く空気(くうき)の固体(かたさ)が青年(おとこ)を巻きつつ青年(おとこ)の心身(からだ)が少年(こども)に返って生長するのが、経過(とき)の速さにそのまま埋れる人間(ひと)の感覚(いしき)を集散(しゅうさん)させ得た。呼び鈴(りん)鳴らして「彼女」の肢体(からだ)は宙(そら)へ浮くまま未知を表し、俺の思惑(こころ)へ直接対せる淋しい習癖(ドグマ)を晒して無虚(むきょ)を成すのは、壊れた時代が人間(ひと)を飛び越え、俺の胸元(もと)までほっそり還れる、透った世代へ充満している。充満していた心地と心を虚構へ見立てて億尾を成すのは薄ら止まった「彼女」の幼体(からだ)をすっぽり覆える暗気を示せる帰去の上にて、俺の後頭部(あたま)が呆(ぼう)っとして生(ゆ)く〝しゃん〟と出来ない無根の代数(シグマ)を応用した儘、樞(ひみつ)を仰げる青空(そら)の下では、遥かに和らぐ夢想の主観(あるじ)を接待して居て、今日の〝音頭〟を何処(どこ)から採るのか、不思議に見得ない悪辣(わる)い感覚(いしき)へ傾倒する内、観得ない「彼女」の徒労の〝代数(シグマ)〟に、虚構を示せる俺の素顔は、野平(のっぺ)り立ち得る精神(こころ)の丈夫(かたさ)を何処(どこ)まで伸ばして幻想するのか、全く潰れぬ魅惑の顔へと固陋を灯した〝鬼火〟を追い生(ゆ)く、何にも出来ない夢想の素顔を評定していた。白い衣を暗(やみ)に袷て、私情に縺れた柔さを従え固まる暗(やみ)には、俺から生れた「彼女」の脚力(ちから)を至上に咲かせる孤独の憂慮が散在して在り、俺に始まる「彼女」を彩(と)り得た無限の規定(ルール)は硝子の白さへ仄(ほ)んのり透れる人間(ひと)の淡さをすっかり伸ばせてTV(テレビ)を付けさせ、〝魅惑〟の退屈(ひま)にもすっぽり納まる俺(おとこ)の吐息は、如何(どう)にも着かない「彼女」の幻想(あかり)を両掌(りょうて)へ延ばして笑顔で在って、「彼女」の古巣へこつこと懐ける、真夏(ゆめ)の旅路は〝堂々巡り〟に、灯(あかり)を点けない〝賭博の老師〟を、一目散へと懐(うち)の底へと画す内にて、人間(ひと)の笑顔(かお)には主観(あるじ)が求める無駄な利益を、〝白さ〟に勝った硝子細工の工夫の手順へ、次第に、のっそり、うっかり相(あい)せる〝奈落の都〟へ群情(ぐんじょう)従え、「彼女」を透せる浮気の心算(こころ)が〝女性の時代〟をすっかり気取らす赤い夕日に心頭さえ模す。〝浮世盛り〟に上手く通れる孤独の檻には、〝樫の木〟に似た曼珠桜が薄紅色した花弁(はな)を紅(あか)らめ、ひっそり画せる孤独の気温を傍観した内、俺の精神(こころ)は「彼女」の心算(こころ)へひたすら疾走(はし)って割腹して生(ゆ)く〝しどろもどろの悲哀の体(てい)〟等、ひっそり落ち着け打ち付けてもあり、孤狼(ころう)の思惑(こころ)を愛し抜き浮く男性(おとこ)の幻想(ゆめ)には上手く透さぬ女性(おんな)の感覚(いしき)が隈なく重なり、二重に疲れる〝男性(おとこ)〟の人影(かげ)から〝コンニャク〟みたいな軟体極める小さな蟲など脆(よわ)く羽ばたき活気を追い駆け、俺へと落ち着く四方(よも)の仕種は、歯茎を剥き出し鑑み打って、悶取り打つのを淋しく忘れた〝器用な姿態(かたち)の歯車〟等へは、俺から生れて美意識頬張る「彼女」の絵柄がすっぽり湧き立ち遊泳(およ)いで先立ち、自信の孤高へ決して触れ得ぬ小さな衝動(うごき)を決って無視せぬ正義の下(もと)へと、小さく羽ばたき大きく打ち鳴り、画され失(き)えずの紅(あか)い〝陽(よう)〟へと〝男女〟を忘れて疾駆(はし)って生(ゆ)くのだ。足の麓でしがみ付くのは〝へちょぼ〟で零れる華(あせ)の精気で俺と温もり、暗(やみ)に裂かせた淡さの群れから〝落ち着く雰囲気(ムード)〟を存分集めた〝花の艶子(いろこ)〟を取法の無いほど小窓(まど)から放(ほう)って悪夢を見て取り、歯牙(しが)無い文野(ぶんや)でのっきょり脚(あし)からふらふら淡(あわ)げる精神(こころ)を仕留めて騒々しく在り、〝はぁー…ッ〟と溜息(いき)吐き落ち着く涼風(かぜ)には如何(どう)にも止まない殺気が降(ふ)りつつ、俺と「彼女」と巨物(オーラ)の姿勢(すがた)を一つへ並べる手毬を弾いてお道化(どけ)て見せた。泡(あぶく)の七色(いろ)から努力(ちから)が共鳴(な)りつつ四肢(てあし)は解散(ばら)けて、俺が喰うのは「彼女」の霞と巨物(オーク)の生気で、活気が立ち得ぬ空気(もぬけ)に相(あい)して賢く成りつつ、精神(こころ)の〝白紙〟に忍び寄せ行く〝活気〟を巡れる〝殺気〟の恋へは、陽(よう)へ成り立つ不動の子宮(みやこ)が上手に呼吸(いき)する〝寡〟の黒喪(くろも)にうんざりして居る。〝歯抜け〟た傀儡(どうぐ)が闇の許容(うち)へと悶取り打つ頃、言葉を遣えぬ遠く脆(よわ)さが〝この世を咲かせる〟先駆けにも咲く女房(にょうぼ)に宿れた決まりの肴が、一匹逃げ行く暗い路(みち)から身近に沿い得る孤狼(ころう)の〝荒野〟へ、揚々添い生(ゆ)く〝意味〟の心算(つもり)が無敵を揃えて大体(からだ)を馴らせ、俺の口元(くち)からすんごり出て行く覇気の流行(ながれ)は、俗世に割かれた淡い人間(ひと)へと闊歩し辿れて、暗雲漂う密室(へや)の内(なか)でも人間(ひと)の希薄が浮き立ち生(ゆ)くのを、仄(ぼ)んやり観ている俺の両掌(りょうて)は懐かしさに立て憤悶(ふんもん)など観た。俺の記憶は「彼女」へ添いつつびしょ濡れでもあり、「彼女」の恋する巨物(オーク)の姿態(すがた)は巨万を見て取り融合され活き、身体(からだ)の具合いが怠(だら)けて生(ゆ)くのを俺の両掌(りょうて)へ密かに乗りつつ、躰を乗り出す〝闇〟の脚力(ちから)は俗世(かこい)を飛び出て楽園(パラダイス)へ生(ゆ)き、過去から昇れる果て無い悪魔を、「二人の彼女」の卑怯にも観た孤独の幻想(ゆめ)にもしっかり固まる〝時刻〟を据え置き怒涛に跳び付き、彼女二人に悠々近付く俺の思惑(こころ)に〝肢体(からだ)を識(し)るのが目的〟等とは宙(そら)が裂けても不意とも語らず、恐怖に縛られ「彼女」を捕えた〝虚構〟の華咲く紋様(ことば)の代数(シグマ)は、心算(こころ)を閉ざして女性(おんな)を棄て得たあの日から観た紅(あか)い土手(どて)にも、〝嫌われない程、楽して生き行く孤踏(ことう)を踏めない見事な道化師(ピエロ)〟が、後(あと)から後から「華(はな)」を追い駆け溜息吐(つ)くのに、も一度計れる幻象(ゆめ)の在り処を隈なく捜せる暗路(あんろ)を敷き得た。

 言葉の記憶が宙(ちゅう)を飛び交う闇の中程、孤独顔した「彼女」の感覚(いしき)がひっそり漏れ活き俺まで届き、何時(いつ)か見果てる夢想(ゆめ)の肩身を両手で探って転々(ころころ)空転(ころ)がり、出足を隠せる今日(きょう)の身元へ夢路を睨(ね)め付け噴散(ふんさん)していた。晴れた暗(やみ)から鋭(とが)った闇まで、内を鳴らせぬ「彼女」の横顔(かお)には俺から離れた暗夜が立ち込めふうっと仰け反る哀しい気色は「彼女」を離れて闇間に覗け、俺の背後(うしろ)をえっちらおっちら、遠くに尖った疾風の僧まで、自分を画せる四季を彩る二つの極(きょく)には、誰にも何にも不意にも問われぬ美顔が小波(さざ)めき虚空を投げた。「彼女」の横顔(かお)には俺から離れる〝記憶の古巣〟が「今日」を出て行く色香の余韻(かげり)を地響き鳴らして脅かしていた。「彼女」の夢想(ゆめ)へはどれ程空転(ころ)がり渡航に暮れても、大海原(せけん)を疾走(はし)れる記憶の定かは波(なみ)を観る間(ま)に見る見る留まり、「明日(あす)」の景色を上手く辿れぬ清閑(しずか)な延命(いのち)を夢見て仕舞える。解け入る間も無い闇に裂け得る人間(ひと)の都は罪を残してすらりと立ち活き、俺と彼女にほっこり湯気立つ晴嵐(あらし)を呼び付け高踏(こうとう)して居た。地に足着かない無法の共鳴(さけび)が四肢(てあし)を揺らして〝孤独〟を牛耳り、美白(しろ)い吐息(いき)から群青(あお)い吐息(いき)まで全てを独歩(ある)ける脚力(ちから)を身に付け「彼女」に出会える桃色(はで)な帳を頭に被(かぶ)って揚々泣いた。俺と「彼女」の空気(もぬけ)の杜から器用に溢(あぶ)れる文字を片手に、細い眼(め)をした徒党の砦は〝知らぬ存ぜぬ、悪しき片眼(まなこ)を夢中に喰えるは好し〟とした儘、血の実(み)が空転(ころ)がり黄泉の園(くに)へと透って生(ゆ)くのを、二人の躰は伸縮する内、病みの終焉(おわり)と光の園(その)まで遠くの宙(そら)へと羽ばたく体(てい)して眺めてあった。〝二人の彼女〟の四肢(てあし)の揺れにはこの世の〝硝子〟に上手く解け入る手筈(すべ)を設けて、俺の思惑(こころ)へ静かに宿れる未数(みすう)の発疹(はしか)を体(からだ)に見付けて数えて行って、細く屈(こご)める人間(ひと)の夢想(ゆめ)から夢遊(あそび)が観え生(ゆ)く大きく微かな独りの夜想(こうた)が、ぽろり、ぽろり、経過(とき)から落ち出す人間(ひと)の厚みが余程に割かれて無頼に在った。俺の「彼女」の孤高の原宿(やど)には初めから得ぬ人間(ひと)の温身(ぬくみ)が無感に安らぐ自然の生徒へ如何(どう)とも言えない未完を呼び込む悪魔の群れなど清閑(しずか)に在って、〝彼女〟の隙間へ俺の原罪(わいろ)が無数の波間に肢体(からだ)を揉まれて可笑しな空虚に次第に巻かれて象られる頃、「彼女」から成る無数の記憶は朝の夢間(ゆめま)に撓だれ削がれて、早く咲かない人間(ひと)の新芽は延命(いのち)を宿して謳って在った。時計の針には人間(ひと)の気を刈る無数の刃物が意味の醜態(かたち)をお盆に載せて、サロメに息巻く無数の美炎(ほのお)を嫉妬に加えて仰ぎ見て居た。夜目(よめ)の利かない空虚を漏らせる二つの僧には、脚(あし)の付き行く形態(かたち)の乗らない美白の小宿が間髪入れずに俺へと近付き、水面(みなも)は「彼女」の肌から水気(みずけ)を奪(と)りつつ、二度と咲け得ぬ究極(さいご)の人煙(けむり)を黙々挙げた。「彼女」の下肢には一度は失(き)え行く〝彼〟の記憶が俗世(このよ)の憂いを奇麗きっぱり払拭して生き、俺の記憶が電子に乗らない迷路を抱えた〝帳〟の檻まで、のっそりとっくり、果て得ぬ旅路を細目に捉えた〝二人〟の機敏に忽ち身構え、夜目(よめ)に堪えぬ母神(ぼしん)の像には〝土手〟に咲き行く奇麗な灯(あかり)が銀河を並べて細々(ほそぼそ)微笑(わら)える。彼女二人がまるで身重(みおも)の難儀を携え、南方(みなみ)の果(はし)から北方(きた)の果(はし)まで仁王立ちして独歩(ある)いて在った。

 急須に入れ替え、緑の柱が急に立ち得た〝縁起を担いだ二匹の灰像(コアラ)〟が木の実を捜して空地(ここ)まで辿り、女性(おんな)に咲かれた寡黙の両眼(まなこ)が生気を従え俺へと対し、女性(おんな)の軽さは悪魔に勝てない未熟の気熱が肢体(からだ)を汚(よご)して無頼に在った。段々毀れる女性(おんな)の理性(たち)には、発狂(くる)った談議に没我を識(し)り抜く男性(おとこ)の独創(こごと)が邪魅に見舞われ、砂塵の立ち行く二匹の灰像(コアラ)を自分の身元へ引き寄せ得る程、自分勝手に宙へ根付かす思想の程度は夕日に相(あい)して、中々立てない空(から)の両脚(あし)には女性(おんな)にやられた美白の脆(よわ)さが自然に注がれ密封され活き、女性(おんな)の発疹(はしか)に突起を見て取る無数の脆(よわ)さのお膝元では、男性(おとこ)に成れない男性(おとこ)の脆(よわ)さが性質(からだ)を借り立ち、砂塵(ほこり)に塗れて、橙色した〝夕日の土手〟へと両手を振りつつ独歩(ある)いて行けた。

 彼女の胸中(むね)からするする解(ほど)けて出るほど白(しら)けた夢想(ゆめ)には黒さの通らぬ魅惑の刃(やいば)がほとほと煌めき、巨物(オーク)の肢体(からだ)にぽんと透れる人間(ひと)の余韻(こえ)には冬に響ける靴音程度の小さな木霊が二つ三つへ、無我を狂わす厚い夜へと闊歩をして活き、遠くで凍える「彼女」の両肩(かた)には、俺の呼吸(あいず)が全く乗れない脆(よわ)い共鳴(こえ)などちらほらぽろぽろ、暗(やみ)の目下(ふもと)で大きく掲げる空気(もぬけ)の温度が散歩をしている。俺の心中(こころ)を巧く離れた俗世(このよ)の「彼女」は豪邸間近に車を停め置き、自分の用事がきちんと済むまで、俺へ対する温(ぬく)い情(じょう)には決して揃わぬ誠意を託して精進して居り、本来愛した女肉と相(あい)せる野蛮な彼氏(おとこ)は、彼女が振舞う安い宿から朝方間近に足早に出て、〝肉〟と相(あい)する「彼女」の木霊を、彼(かれ)の温みは必ず上手に抱擁して居た。そうした結路(末路とほぼ同意)を「彼女」の記憶は既に知り抜き熟知して在り、彼氏(おとこ)の擁する強靭(つよ)い諸刃(やいば)を愛して居たから、〝二人の彼女〟も「彼女」の残像(すがた)も、彼(かれ)の要する女性(おんな)の柔さを〝肉〟へと代え活き男性(おとこ)を待った。男性(おとこ)を待つ時、彼女が住み込む豪邸(いえ)の家具など一つ一つが小さく煌めき「彼女」の情緒(こころ)を微妙ながらに小さく揺さぶる涼風(かぜ)を吹き付け誘いもするが、俺の記憶も彼女の肢体(からだ)も、彼氏(かれし)の言葉も男性(おとこ)の気分(なみ)も、全く靡けぬ強い目的(あて)など宙(そら)に抱えて保(も)って居た為、豪邸(いえ)の灯(あかり)も人気(ひとけ)を忘れた孤独の住処を用意して活き小さく囁き、誰にも通れぬ泥濘(どろ)の小庭(こにわ)を周囲(しゅうい)に敷き立て確立していた。ふうっと吹かれた宙(そら)から発する「彼女」の呼吸(かぜ)には銀河の星(しずく)が一等星から順に流行生(おちゆ)く自然の気色を垣間見させ得て、俺と「彼女」の生き得る先など暗(やみ)の許容(うち)にて仕分けて在ったが、「彼女」の誠意を律儀に恐れて保身の余りに彼氏(おとこ)の気分(なみ)にも注意をして生(ゆ)き、全く探せぬ〝女性(おんな)と味わう未熟の浪漫〟を、俺はこの掌(て)で宙(そら)へ棄て行き、遠くに佇み〝二人〟を見守る賢母の愛情(こころ)へ真向きに対し、俺から離れる俗世(このよ)の流行(ながれ)は転々(ころころ)空転(ころ)がる棄物(きぶつ)の顔して集地(ならく)の底へと空転(ころ)がり失(き)えた。明日に延び行く生気の欠片と、今日を有する狂気の欠片が、「彼女」から成る二つの〝檻〟から構築され行くchaos(カオス)の素顔を混在させ得て、「明日(あした)」を彩る道標(どうひょう)等には、俺から辿れる〝二人の彼女〟の幻影(なごり)が在った。白地(しろじ)に澄み生(ゆ)く「彼女」の生気は巨物(オーク)の小声(こえ)から発散され得る力強さが散見され得て、俺を訝る女性(おんな)の両手に、昨日まで見た人間(ひと)の姿勢(すがた)は残らなかった。人間(ひと)から立ち得る静かな好意は消極的にも荒い俗世に呑まれて行って、所々で人煙(けむり)に跨る空虚な活気を根強く咲かせ、「明日」に通れぬ男性(おとこ)の奇声を成り立たせて行く。奇妙に馬鹿げたこれ等の経過(ながれ)は巨物(オーク)の足元(ふもと)へ吸い込まれて行く「彼女」を追い駆け、「明日(あす)」に生きない男性(おとこ)の延命(いのち)を常識(かたち)に酔わせて蹂躙して居た。

 俺の生体(もと)から仄かに仕上がる〝彼女の群れ〟から、俗世に湧かせて幻想(ゆめ)を観させた人間(ひと)の呵責が原罪(つみ)を追い駆け、これまで観て来た脚色(いろ)の過去など奇麗さっぱり削ぎ落した儘、微弱(よわ)い涼風(かぜ)から木の葉が散るのを傍観した後、異国の女性(おんな)が縦横無尽に経過(ながれ)へ割り込み哄笑(わら)って在るのが、俺の思惑(こころ)の何処彼処に咲く淡い気色に充満して居た。〝金髪娘〟の萎えた響きに愛露(エロス)の破片が飛び込む間際、俺から離れた〝常識(かたち)〟の確かは指折り撓(しな)んで陶酔して生(ゆ)き、〝金髪娘〟の奇妙な乱舞(ダンス)に陽気を知るまま弱まり出した。〝二人の彼女〟と「彼女」の感覚(いしき)が俺を象る確かな幻想(ゆめ)へと落ち込む間際に、上手に肢体(からだ)を廻し損ねた〝金髪娘〟の乱舞(ダンス)の様子は女性(おんな)を謳えず男性(おとこ)を謳い、幻想(ゆめ)が始まる以前からでも、俺の脳裏に浸透し易く伸びやかでもあり、〝彼女〟が彩る二つの気色は、〝伸びやか〟ながらに〝金髪娘(むすめ)〟を射止めた強靭(つよ)い感覚(いしき)を護って在った。俺の心身(からだ)は〝二人の彼女〟を何時(いつ)しか離れて黄色に輝く無垢な蜃気に溺れて居ながら、〝金髪娘〟の豪胆ながらに痘痕が拡がる大きな躰に、罵声を吐き付け跳び付き始めて、未知の彼方へ性交して生(ゆ)く俗の美味へと興味を投げた。〝金髪娘〟はにこにこ笑って肉筋など観せ、まるで巨物(オーク)の剛毅な気質を素肌から観せ俺の煩悩(なやみ)を操る気熱(ねつ)など彼女等を見て圧倒せられ、果して落ち着く独創(こごと)が居座る脆(よわ)い宮には、女性(おんな)の息吹が一向止まずにびゅうびゅう唸り、初春(はる)から初秋(あき)へと一層茂った女性(おんな)の腕力(ちから)は、孤独を隠して乏々(とぼとぼ)独歩(ある)ける俺の生気(もと)から小さく降り立つ童貞(こども)の仕種を把握してさえ毅然に構える。俺の心身(からだ)は〝金髪娘〟の強靭(つよ)い生気(せいき)を気軽に小躍(おど)らせ弄(あそ)んで居ながら、自分の躰に揚々乗り行く女性(おんな)の気配に蹂躙せられて、行為の始まる明るい内から経過(ながれ)を追うまで、始終踏み付けられ得た男性(おとこ)の宮には「彼女」の重さがずっと乗り付け、言葉に出来ない鈍い痛みが音を上げずに籠らされて居た。俺の男性(おとこ)の突起から成る鈍く尖れる肌の積み木は、「彼女」の里から仄かに上がった遊戯に乗り込み痛味(いたみ)を感じ、「彼女」の様子を吟味(あじ)わう間際に時計を気にする柔い感覚(いしき)が〝金髪娘(むすめ)〟の上手を殊に捉えて「彼女」から成る女性(おんな)の色香に添い付けながら、流れ出ていく男性(おとこ)の華(あせ)には赤い血などが仄(ほ)んのり浮き出て、共鳴出来ない一つの行為に心行くまで踊らされ行く二つの性(せい)への諦めが在る。俺の精神(こころ)は〝金髪娘(むすめ)〟から立つ淡い上気を好意の内にて認めて居ながら、「彼女」に降り立つ男性(おとこ)の妙味を暗(やみ)の最中(さなか)に放散(リリース)して居り、「彼女」に見果てる〝男性(おとこ)の意地〟など宙(そら)へ舞い込み底儚く失(き)え、自然を寄せつつ野生を咲かせた金髪娘(むすめ)の呼吸(いき)には厚さが膨らみ、騎乗の体位で行為をしていた〝二人の感覚(いしき)は暗(やみ)へと漏れ生(ゆ)き、〝はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…〟、空転(ころ)がり続ける二性(にせい)の意図には人間(ひと)が這入れぬ脆(よわ)い覚悟が大手を振った。俺の腕力(ちから)は「彼女」を観ながら〝金髪娘(むすめ)〟を見ながら、結局驕る事無く弱々しく燃え、暗(やみ)の咲き行く宙(そら)の目下(ふもと)でもじもじしながら、「彼女」を愛する男性(おとこ)の行為に自信が揃わず沈滅していた。過去から上がった二つの記憶が何等の暗(やみ)へと密かに生き得る〝二人の彼女〟の気色を連れ添い、そうした「彼女」の俺の頭上で大映(おおうつ)しと成る可憐の素顔を訝る間も無く、躊躇して生(ゆ)く巨物(きょぶつ)の小言は、人間(ひと)の孤独を巧く連れ添い、如何(どう)でも四肢(てあし)を拡げる内にて、俺と孤独の二極(ふたつ)に跨る幻想(ゆめ)の防御を崩してあった。〝幻想(ゆめ)の牙城(とりで)〟が俺の掌(もと)からするする流行(なが)れて自然に戸惑う新たの経過(とき)へと自棄を観る頃、通り一遍、お花畑に運好く咲き得た女性(おんな)の実(じつ)には巨物から成る陶酔感など涼風(かぜ)に載せられ沈着して活き、人間(ひと)の体に限界(かぎり)を知り得た俺を衝動(うご)かす好意の脆(もろ)さは、暗(やみ)に解け入る幻想(ゆめ)の間近で〝暗路(あんろ)〟に吠え出し姿勢(すがた)を失(け)した。俺の目下(ふもと)へふらふら辿って剛毅を宿した女性(おんな)の人群(むれ)から初春(はる)に昇れる沈丁花の花弁(み)にほとほと落ち着く女性(おんな)の気力がむらむら上がって保身を期す儘、経過(とき)の礫に程好く孵った男性(おとこ)の活力(ちから)は「彼女」を観るまま放心に在る。月の脚色(いろ)から亜細亜の臭気が漆黒(くろ)い宙へと散乱する頃、〝金髪娘(むすめ)〟が如何(どう)して自身の毛色を化(か)えつつ、亜細亜の女を揺れ衝動(うご)かす儘、北欧サイドの女性(おんな)を採りつつ感覚(いしき)を得たのか、微動だにせぬ俺に埋れた脳裏の空間(すきま)は、美女に纏わる二つの美意識(いしき)を両手に掲げてその身が余る。

 俺の心身(からだ)は経過(とき)に蔓延る二つの気色に、「彼女」を取り巻く自由の脚色(いろ)さえ睨(ね)め付けながらに、自分に築ける岐路の分岐を、真面目な顔して揚々見渡し、黄色に輝(ひか)れる女性(おんな)の四肢(てあし)を映した上気が、何物かに依る不埒な意識と符合する儘、過去から揃えた人間(ひと)の呼吸(いき)には旧い記憶が縦横して居り、無下に相(あい)せる二つの〝性(せい)〟へは、俺の過去へと浸水して行く粗い記憶の透った要素が、不満を捉えて精進出来ない脆(よわ)いmorgue(モルグ)を体感していた。

 脆(よわ)い肢体(からだ)を二つに重ねて、俺の前方(まえ)から漸次遠退く女性(おんな)の輪郭(かたち)は、丸い輪を彩(と)り暗い宙(そら)からしゅんと降(お)り行く人工照(あかり)の直射を紡いで行って、仄かに湧き立つ女性(おんな)の両肢(りょうし)が瞬く間の内小さく成り果て、俺の記憶が何時(いつ)か見取れた〝学校主催のキャンプの景色〟が、人煙(けむり)の得体が上昇して行く宙(そら)の輪郭(かたち)を揚々反映(うつ)して気楽に在った。〝二人の彼女〟はやがてそうして二極に分れて対立して生き、俺の目前(まえ)から小さく掠める陽(よう)の気色を、流動して行く経過(とき)の狭間で換算し始め結託して生き、女性(おんな)の躰が幾つ在れども〝一つ〟と成り行く、気軽な〝淀み〟を洗って行った。俺の感覚(いしき)は根深(ねぶか)に灯った性(せい)の主観(あるじ)へ追従する儘、二極を跨げる宙の目下で「彼女」から成る〝女性(おんな)の上気〟に奔走して活き、再び〝二つの彼女〟を自分へ侍らす自然の奥義を観賞する内、自分が保(も)ち得る拙い〝性(せい)〟では「彼女」の体(からだ)が欲する欲求(ニーズ)を、到底用意出来ない〝人間(ひと)の限界(かぎり)〟がもろもろ落せる男性(おとこ)の極(きょく)へと相対(あいたい)する儘、掴み損ねる未来を浮かせる俺の安堵へ、〝二つの彼女〟は自己(おのれ)の固体を揺ら揺ら振(ぶ)れさせ透り生きつつ、俺が相(あい)した〝キャンプ〟の用地へふわりと腰掛け微笑(わら)って在った。宙(そら)に飛び交う世間の常識(かたち)を人間(ひと)が彩(と)り行く体裁(かたち)と摩り替え、記憶に宿れる凝(こご)りの内には、俺へ対せる微(よわ)い小僧(おとこ)の無理な音頭がひっそり遊泳(およ)いで荒んで在った。「明日(あした)」から散るこの身に宿れる詩的な温度は、心中(こころ)に宿した望遠鏡から遥かな宙(そら)へと畳まれ続ける〝二人の彼女〟を形成して活き、具に揃えた〝俺〟を操(と)れ得る女性(おんな)の咎には、人間(ひと)の集まる泥濘(どろ)に咲けない紅い果実を火照らせてもいる。男性(おとこ)と女性(おんな)がはにかみ出す内、〝紅い果実〟は果肉を縮めて味を良くして、蛇が蔓延る小山(こやま)へ辿れる人間(ひと)の労苦を詩文に焚き付け、焼け付く〝夕日〟の〝紅い線路〟は、男性(おとこ)を連れ添う優雅な女性(おんな)を、堂々巡りの過去の匣から盛り上がらせ活き俺の背後へそっと隠れてぴかぴかしている。かなり宙(そら)から夕が立つ折り、雨情(うじょう)を凌げる〝女性(おんな)〟の息吹が散滅させられ、俺の〝一人〟がやっと通れる紅く染まれる永い線路は、人間(ひと)を気取れぬ紫煙(しえん)の目下(ふもと)で自体から浮く物の延命(いのち)を小躍(おど)らせ始める。白体(からだ)が宙(そら)からすうっと解け行く二つの〝性(せい)〟へは、男女の区別がオレンジ色して空虚を透せる空気(もぬけ)の隙間が埋没して活き、俺の思惑(こころ)は〝二人の彼女〟が滔々生き得る二つの極(きょく)へと独走して行き、俺の瞼に画期を運べる両肢(りょうし)を連れ添い、「明日(あす)」へ咲け得る〝物の延命(いのち)〟を画策して生く。俺から飛び立つ男性(おとこ)に宿せる煩悩(なやみ)の種子(たね)から、すらりと勃ち得る純心(こころ)の性(さが)など虚空に立ち活き「彼女」へ対し、真向きに捉えた「彼女」の容姿は〝俺〟の身内(うち)から耄碌して活き〝紅い夕日〟が細々(ほそぼそ)煙たい子供の宿へと訪れ出して、初めから成る〝彼女〟に萎え行く桃色(はで)の脚色(いろ)には、男性(おとこ)と女性(おんな)のエロティシズムが仄(ぼ)んやり浮んで俺の背後は矢張り白々結束して行く男女の感覚(いしき)が寝かされてもある。〝何でも無い〟のに蝶々が羽ばたく奇妙な気色が男性(おとこ)と女性(おんな)の身体(からだ)の解(ほぐ)れに相対(あいたい)して行き、組(く)んず解(ほぐ)れつ無臭の漂う哀れな架空(そら)へと、転々(ころころ)空転(ころ)がる人間(ひと)の勝気と取っ組み合いして蝶々が敗ける。宙(そら)の内(なか)へとびょんびょん伸び行く硝子の延命(いのち)は凍結して活き、人間(ひと)の古里(さと)から上手く逃れた俺の〝孤独〟は独走(はし)って行って、紅身(あかみ)が差し行く〝土手〟の麓で微熱を発して転んで在って、〝二人の彼女〟が陶酔して行く甘い〝気色〟へ突進する内、〝二人の聖女〟が惜しまれ失(き)えた〝土手の墓〟へと這入って行けた。〝墓〟の窪みが暗(やみ)を投げ掛け自体(からだ)を畳ませ、白い気迫は俺の水面(もと)から新たに仕上がり鮮明でもあり、「独白体」にて〝彼女〟を仕上げる〝二人の彼女〟の身体(からだ)の泡には、桃源郷から七つに独走(はし)れる女性(おんな)の色気が巣立って活きた。俺の思惑(こころ)は〝彼女〟を捉えて離さなかった。〝彼女〟の息から仄(ぼ)んやり昇(あが)れる奇妙の様子を景色に仕上げ、輪郭(かたち)の無いのを妙な文句で〝紅い記憶〟へ蹂躙して行き俺から奪える精気の手数(かず)など物の頭数(かず)にもカウントされ得ず、〝白い悪魔〟は〝電子〟の微笑(わらい)を中継する儘、男女の身体(からだ)は自然に廻され〝企画〟の咎へと埋没して生く。絶対温度の揚々昇(あが)れぬ〝彼女〟が咲き付く細い〝土手〟には、真横にたわった線路の〝銀〟など人間(ひと)の図像を解散させ得て俺にも透せた〝女性(おんな)の容姿(すがた)〟は一目散へと闇夜に果て生き、桃色(ぴんく)に達した幻想(ゆめ)の屍(かばね)は舌を丸めて算段する内、「明日(あす)」の線路(みち)へも辿れないのを夢想(ゆめ)に温(ぬく)めて噛(しが)んで在った。

 遠くの宙(そら)にはこれまで渡った〝人物描写〟が翼を生やして立脚して在り、俺の独創(こごと)に吸収され行く新たな創始が羽ばたいても居る。〝二つの彼女〟が漸く〝宙(そら)〟からふらふら落ち着き、俺が立ち得る柔い〝土手〟へと帰還する頃、紅身(あかみ)を帯び行く人間(ひと)の生身は感覚(いしき)を忘れて透って行くのだ。此処(ここ)まで独歩(ある)いた環境(まわり)を拝する俺の記憶(かこ)にはむくむく上がった感情起伏が紅身を帯び出し、〝二人の彼女〟が夢遊と失(き)え生(ゆ)く〝土手〟の行方を講じた主観(あるじ)が、ぽっそり、ぽっそり、言葉を忘れて新たな場面を想定して居た。俺の生身(からだ)は宙(そら)へと失(き)えた。



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~相人(あいじん)~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji

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