第28話 影の襲来

 ルロイに危機が迫る中、走り出した夏海を追ってメロスが高速移動で一階の教室を駆け出した。メロスは瞬く間にメロスはお父さんに突進する。しかし、お父さんとルロイの周りの空間は断たれていて、近づくことができない。


 遅れて他のメンバーがやってきた。兵十は火縄銃を、与一は弓矢を放つも、断たれた空間にせき止められてしまう。切断された空間に、誰もなす術はなかった。


 その場に居た誰もがルロイの死を覚悟した。反撃する手立てもなく、ただ彼の最期を見届ける以外の道は無いと思われた。しかしそんな中、断たれた空間を切り抜ける者が現れる。


 突然、お父さんの足元に黒い影が現れた。その影は、お父さんの両足を強く掴み、影の中に引きずり下ろそうとする。お父さんは必死に抵抗するが、影はお父さんを掴んで離さない。戸部が影が伸びる先に目を向けると、校門で少女がこちらを見つめて立っていた。


「なんだこれは………!?」


 お父さんは周りの断ち斬った空間に穴を開け、逃亡しようとするが、身動きが取れない。影の切断を試みるがそれも叶わず、お父さんは呆気なく影の中に引きずり込まれてしまった。


 あの影、路地裏のあの子…………!


 影の主を確信した戸部は影が伸びる先を確認し、立ち去ろうとする少女を目視した。戸部は少女を追いかけようとする。すると影の中から一人の老人がゆっくりと湧いて出て来た。戸部とメロスは、その老人に見覚えがあった。そう、以前に二人が対峙したイレイザーの構成員"お爺さん"だ。


「あの時の爺さん………!?」


 お爺さんと戸部は一瞬だけ目が合った。しかしお爺さんは戸部には見もくれず、すぐ近くでうずくまっているルロイも無視して兵十の下へ向かった。お爺さんは戸部の事など覚えていないようだ。


 お爺さんは兵十に歩み寄って、お面を外して露わになっていた素顔を確認した。そして何かを確信したように、兵十の右腕を掴みながら言った。


「見覚えがあると思えば。やはり、お前"十番"だな?こんな所に身を隠していたのか。」


「………離せ!!俺を番号で呼ぶな!それはの呼び名だ。今の俺には名前がある………!」


 兵十はお爺さんの手を振り払おうとする。しかしお爺さんの握力は強く、兵十の腕を掴んで離そうとしない。 


「ボスの指示は暗殺者を連れて来ることだけだったが、良い手土産になりそうだ。」


 兵十は必死に抵抗するがお爺さんは一切動じず、兵十の首に素早く手刀を入れた。兵十は意識が飛び、兵十の手から火縄銃が落下した。


「ボスがコイツを探してたからな、十番は頂いて行く。」


 兵十を担いだお爺さんは黒い影に飛び込んで沈んでしまった。お爺さんが飛び込んだ影は少女の下へと素早く戻って行く。戸部はその影を逃がすまいと、必死で追いかけた。


「待って………!!」


 少女は立ち去ろうとしていたが、戸部の声で歩みを止め戸部の方を振り返る。


「前に路地裏で会ったの覚えてないか!?」


 少女は小さく頷いた。少女の雰囲気は暗く、戸部を見つめる眼差しは寂しさで溢れていた。


「君の名前は……?」


「……………名前?」


 少女は深く考え込んだ。しかしその答えは浮かんで来ず、少女は混乱しながら今にも途切れそうな小さい声で呟いた。


「分からない……………」


 少女は困惑してその場で立ち尽くしていると、影の中からお爺さんの大声が響いた。


「十八番!何をもたもたしてる、早くしろ!」


 お爺さんの呼びかけで急かされた少女は、足早に影の中に飛び込んだ。そして少女と兵十を担いだお爺さんが入った影は、道路脇の側溝へと消えて行った。


「また逃げられた………」


 戸部が呆気にとられて立ち尽くしていると、部員達が駆け寄った。


「戸部君、大丈夫!?怪我はない?」


「俺は大丈夫だけど、兵十先輩が………それよりルロイ先生は!?」


 部員達はルロイの方を振り返った。ルロイは腕と腹部大量の血を流し、息も絶え絶えで、ぐったりとしていた。虫の息のルロイは少ない力を振り絞って喋った。


「腕を……断面に………くっつけて……それで指を治癒の指言葉の……形にしてくれ………。」


 ルロイの要望通りに、エーミールとメロスがルロイの両腕を元の位置にくっつけ、指を治癒の指言葉の形に整えた。すると、たちまち腕の切れ目が腹の傷口も塞がった。


「ルロイ先生の再生力は凄いな………斬られた腕を無理矢理くっつけちまった。」


「これはあくまで応急措置に過ぎない。恐らく、私は暫くは激しい戦闘はできない。すまない……お前達を守るどころか兵十を連れ去られ、私はこんな状態になってしまって…………。」


「いえ、先生は僕達を命懸けで守ってくれましたから。感謝しています。」


 部員達は誰一人としてルロイを責めることは無かった。むしろ、みな感謝の意志を示していた。


 その後、エーミールが呼んだ救急車がルロイを病院へと搬送した。


 翌日、迅刑事が当事者達に事情聴取をする為に学校を訪れた。そこでエーミールが事情聴取に答えた。


to be continued


※初登場時に名前が決定しておらず「刑事」と表記したキャラクターですが、名前が「シュン刑事」に決定いたしました。その為、今回から当キャラクターが登場した際には「迅、もしくは迅刑事」と表記させて頂きます。


 それと、光が丘警察署の受付のおばさんの名前は「ヤンおばさん」となりました。


 ちなみに二人とも能力者です。二人の能力は追々登場する予定です。


 今後も国語教本をどうぞよろしくお願いいたします。

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