第27話 拡大解釈
突如襲来した連続殺人犯の"お父さん"から生徒達を守るべく、ルロイはお父さんと交戦していた。萬部と夏海は校舎内から二人の攻防を見守りながら対抗策を練っていた。
「兵十君。仮にルロイ先生がやられた場合、今ここにいるメンツでお父さんと渡り合える戦力は恐らく君だけだ。君はまだ戦えるかい?」
「すまない、もうごんの力を使えるほど体力が残っていない。今の俺にできるのは火縄銃で援護することくらいだ。」
兵十の言葉に、エーミールは首を傾げた。すると夏海が勢いよく立ち上がったって呟いた。
「私に行かせてください………。私が弟の仇を討ちます。それでアイツに殺された人達の無念を晴らします。」
目の敵を見つめる夏海の右眼は復讐心で溢れていた。夏海は今すぐルロイに加勢するために教室を駆け出そうとした。しかし、戸部は夏海の手を握って止めた。
「待って夏海!そんなの無茶だ、アイツは連続殺人犯だ。お前がとても敵う相手じゃ────」
「わかってるよそんなの…………でもアイツは弟の仇なんだよ。私がやらないとあの子が報われないんだよ!!」
戸部は夏海にかける言葉が見つからなかった。その場に沈黙が流れる。戸部を見る夏海の視線は鋭く、戸部は思わず目を背けた。
「私は…………行くから。」
夏海は戸部の腕を振り払って足速に立ち去ろうとした。夏海が扉を開けようとしたその時、教室の扉が開かれた。扉を開いたのは律だった。その隣には修也と与一が立っていた。
「夏海さん、ひょっとしてルロイ先生に加勢して、あの男と戦うつもりですか?だとしたらそれは無茶です。貴方の命の保証がありません。」
「わかっています………でも、私は姉としてやらないといけないことがあります!」
「貴方に何か大事な使命があるのはわかりました。でも貴方がここで亡くなってしまえば、その使命は成し遂げられません。それは、ルロイ先生も我々も望んでいません。」
「でも…………」
「これは会長命令です。今このタイミングで我々が下手に動けば、かえってルロイ先生の足手まといになりかねない。我々にできるのは、ルロイ先生を信じるのことのみです。」
夏海は、律の真剣な眼差しを見て冷静になった。律はエーミールに敗北をしてもなお、会長としての威厳を保っていた。
メロスは生徒会メンバーの中にセリヌンティウスの姿が無いことに気付き、律に問いかけた。
「セリヌンティウスは……?」
「彼は保健室で休んで来ると言い残したきり、姿が見えませんね……。無事ならいいのですが。」
お父さん襲来から約13分。日が完全に沈み、空は藍色に染まっていた。そんな中、ルロイとお父さんの攻防に動きがあった。
ルロイは突然、一切身動きが取れなくなった。ルロイの周りを目視することのできない壁のようなものが取り囲んでいる。電話ボックス程の大きさのスペースに閉じ込められたのだ。
「困惑しているようだな、ならば教えてやろう。簡単な話だ。俺はアンタの周りに存在する空間を斬った。」
ルロイは状況を理解できず何もない所を叩いてみたり、声を上げたりして脱出を試みる。しかし見えない"壁" はルロイを見下ろし続けている。
「アンタは俺に云ったな。『お前も能力者じゃないのか。』と。その言葉で俺は自分が能力者であることに気付いた。」
お父さんは自身の右手の日本刀を眺めながら淡々と続ける。すると突然、グラウンドに強い風が吹き、お父さんの前髪を揺らす。
「俺の能力は恐らく、『切断』に関する能力のだろう。常人はこれを聞いて、『切断可能なのは物体のみ』と考えるだろう。」
そう言ってお父さんは何も無い空間に刀を振り下ろした。すると強風で激しくなびいていたお父さんの前髪が、微動だにしなくなった。
「だが俺は能力の解釈を広げ、『切断できるのは物体のみではなく、空間も切断可能なのではないか』と考えた。するとこの通り、空間を切断できたわけだ。」
「あの男は先程から何を言っているんだ………?」
ルロイの耳には周りの音が一切届いておらず、お父さんの声も聞こえていない。状況を理解できていなかった。隙を見せたルロイに、瞬く間にお父さんが斬りかかった。
「能力の強さは使用者の"イメージ"で決まる。」
お父さんは静かに刀を鞘に収めた。何が起きたのか、誰も理解できていなかった。しかし次の瞬間、ルロイの両腕は地面に落下していた。
「俺がイメージして斬れば一度割いた空間に穴を開け、切断されていた空間と再び繋げる事も容易い。」
ルロイは両腕を落とされ、反撃も再生もできずにいた。お父さんはルロイの腹部を斬り裂いた。ルロイの腹から鮮血が吹き出し、地面に跪いた。無防備なルロイの首に、お父さんは刃を近づける。
「『生徒を守る』とか言っていたが、この有り様か。無様だな。」
段々と視界がぼやけてきた。周りの音もはっきりと聞き取れない。臓物を斬られたようだ。早く立ち上がって抵抗しなければならないが、全く力が入らない。
「………………私もここまでか。」
すまないお前達。私の命の灯火はこの男に今ここでかき消される。私はお前達を守ると誓ったはずだが、それは結局果たせなかった。大造、お前が教えてくれた事は、私には荷が重すぎたようだ。そして庄兵衛。今からそっちに逝く、だから少しだけ待っていてくれ。
お父さんは首元に近づけていた刃を、自身の頭上まで振り上げる。ルロイは目を閉じ、覚悟を決めた。
夏海は窓を飛び出し、グラウンドへと走り出した。
「待って先生………!私まだ、あの日の事ちゃんと謝れてない…………!」
to be continued
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