第20話 決断

 シンタと修也の決闘が終わりを迎え、両陣営は第三回戦の準備をしていた。


 生徒会陣営


「修也、お疲れ。」


 律は治療で治療を受け終えた修也を労った。


「サンキュー律、燃えるケンカだったぜ!」


 修也と律は治療室から戻った。


「さて、ここまで1勝1敗。次も確実に勝利したい所ですが───」


 律が生徒会メンバーに言うと、一人が手を挙げた。


「俺が行きます。」


 手を挙げたのはセリヌンティウスだった。


「セリヌンティウスさん。気合十分なのは良い事ですが、まずは相手の動きを覗いましょう。」


「その必要はありません。三回戦はメロスが出ます。俺はメロスの事をよく知っています。だから行かせてください。」


「しかし───」


 律が止める間もなくセリヌンティウスはグラウンドへ向かってしまった。


「ここにも話を聞かない人が一人………。」


 萬部陣営


「シンタ、負けてしまったか…。」


「大丈夫、まだ1勝1敗だ。まだ挽回できる。」


 シンタの敗北を悔やむ暇もなく、萬部は次の会議を始めていた。


「俺が行く。」


「おぉメロス、なんだか気合が入ってるね。」


「三回戦はセリヌンティウスが出る。だからアイツの事を一番知ってる俺に出させてくれ。」


「メロス、本当にセリヌンティウスが出るの?」


 エーミール部長は少し困惑気味だったが、その困惑はすぐに解消された。


「ああ。ほら見ろ、アイツが来たぜ。」


 メロス先輩の目線の先には、生徒会会計・セリヌンティウスの姿があった。


「あ、本当にセリヌンティウスだ。」


 部員達が驚いていると、メロス先輩はグラウンドへ歩き出した。



「じゃ、行ってくる。」


 メロス先輩は淡々とした様子でグラウンドの中央へ向かった。


「部長、メロス先輩めっちゃ気合入ってるっすね。」


「うん、お互いに三回戦に出る約束をしてたみたいだ。」


「何か決着をつけたい事でもあるのかな?」


 再び生徒会陣営


「驚いた…本当にメロスさんが出てきました。」


「どうやらあの二人、幼馴染らしいな。」


 与一と夏海が二人を見つめながら言う。


「幼馴染ですか。二人の間に何かでもあるのかもしれませんね……。」


 メロスとセリヌンティウスがグラウンドの中央で向かい合うが、二人の間には沈黙が流れていた。ルロイはまだ治療室でシンタの治療をしていたため、試合は始められずにいた。


 暫くの間流れていた沈黙をセリヌンティウスが打ち破った。


「メロス、分かっているよな?」


 セリヌンティウスがメロスに近づき言う。メロスは俯き、口をつぐんだ。二人の間に再び沈黙が流れ、重たい空気が漂う。暫く考え込んでいたメロスは、顔を上げて言った。


「ああ、分かってる……。」


 メロスは暗く重たい声で返事をする。二人の会話は誰にも聞こえていない。


 ルロイがグラウンドへ戻って来た。


「待たせた、これより第三回戦を開始する。用意はいいか?」


 セリヌンティウスは頷き、自身の準備が整った事を示した。しかし、メロスは何か葛藤しているようだった。


「では、第三回戦開始!」 


 ルロイの合図と共に、二人は互いに距離を取る。すると、セリヌンティウスは地面に手を着いた。


 地面に手を着いた!という事は岩の攻撃が来る……!


 セリヌンティウスの能力は、岩石を突出させる能力だ。自身が地面や壁に手を当てる事が発動条件で、触れた場所に含まれる砂利・砂・泥などを合成し巨大な岩石を出現させる事が出来る。


 セリヌンティウスが手を着いた場所から、岩石の柱が出現した。岩石の柱はメロスの方へ猛スピードで伸びてゆく。メロスは岩石の柱を能力の高速移動を使う間もなく攻撃を喰らってしまう。メロスはよろけ、跪いた。すかさずセリヌンティウスはメロスに岩の攻撃を叩き込む。メロスは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


「メロス先輩が…!」


 部員達がメロス先輩のピンチに焦りだす中、エーミール部長だけは違った。


「おかしい…メロスはもっと素早いはずだ。あんな攻撃くらい軽々と躱せる。」


 メロス先輩と高1の頃からの付き合いがある部長の言葉には説得力がある。それに、少女の影の中で戦った時俺も見ていた。メロス先輩がここまで追い込まれるのが信じられない。


「メロス、わざと攻撃を受けてるのか……?」


 これでいいんだ。これでみんなを少しでも───


 メロスが諦めかけいたその時、グラウンド中に大きな声援が響き渡った。


「メロス!頑張れ!!」


 声の主はエーミールだった。そして、部員達がエーミールに続く。


「先輩!諦めないで!!」


「先輩ならいけるはずだ!」


「頑張ってメロス先輩!!」


「エーミール………。みんな………。」


 あいつら俺の事を…。そうか、俺が負けた所であいつらは折れないよな。エーミールは…あいつらは萬部を続ける事を望んでるんだ。だったら俺は今何をするべきか。それは全力で戦う事だ……!


 メロスは、立ち去ろうとするセリヌンティウスの脚を強く握りしめた。


「待てよ…俺はまだ負けちゃいねぇぞ……。」


 セリヌンティウスは動揺していた。


「まだ戦うつもりか……?」


「おうよ……!あいつらのおかげで俺の迷いは晴れた!!」

 

 メロスはセリヌンティウスを離そうとしない。


「どうゆうことだ…?じゃないか……!!」


 セリヌンティウスはメロスの腕を蹴って振り払い、メロスから離れた。


「俺はもう迷わねぇ…アイツらの為に戦う……!だから負ける訳にはいかねぇんだよ!!」


 そう言うと、メロスはゆっくりと立ち上がった。先程の岩の攻撃が堪えているのか、足取りがおぼつかない。


「萬部を潰す絶好の機会だぞ!それなのに何故お前は萬部を庇う……!?何故そこまで萬部に執着する!?お前はに背く気か!?」


 目の前で立ち上がったメロスを見て、セリヌンティウスは怒りと焦りを隠せずにいた。


「俺は知ったんだ。能力者は悪い奴ばかりじゃねぇって事を、この萬部で!だからここでわざと負けるなんて真似、する訳にはいかねぇんだよ!!」


 そう言い放つとメロスはセリヌンティウスに向かって突っ込んだ。

 

そうかメロス……。お前は長い間萬部にいたせいで変わってしまったんだな。お前だけは信頼していたのに…………。


 セリヌンティウスの目は先程までとは比べ物にならないほど鋭く、メロスを軽蔑する目に変わっていた。


「ならばここで全力でお前をで叩き潰すまでだ。」


to be continued

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