第15話 生徒会
「と、言う訳だ。」
放課後、部室で兵十先輩が昨日の夜の出来事について俺達に話した。
「ルロイ先生の居場所は大方奴に絞られてるのか…。」
「迅刑事にも連絡したんだけど、お父さんについて手掛かりが少なくて警察もお手上げみたいだ。」
「僕達とスーホさんだけで何とかしないといけないですね。」
俺達は今後どうするべきか暫く考え込んでいた。すると、部室の扉が開いた。
「お前達、来たぞ。」
扉を開けたのはルロイ先生だった。俺は昨日の出来事を伝えようと思った。
「先生、大変です。昨日の日本刀を持った男が──」
「日本刀………?」
ルロイ先生の目線が鋭くなり、声が一気に低くなった。
「それで?」
「そ、その男はルロイ先生を探していました。恐らくそいつが軍人・元軍人を狙う暗殺者の───」
「『お父さん』だな?」
ルロイは強い憎しみを抱いているように見えた。
「お父さんが今どこに居るか分かるか?」
「いえ…それは分からないです。」
「そうか、お前達も気を付けろよ。」
「……はい。」
ルロイ先生は険しい顔をして、椅子に腰掛けた。
場は険悪な雰囲気になってしまった。俺が余計な事を言ってしまったからだ…。
しかし突然、その空気を打ち破るように扉をノックする音が部室に響き渡る。
「失礼します。」
扉はゆっくりと開かれる。そこには5人の生徒の姿があった。彼らは堂々とした足取りで部室に踏み込んだ。
「どうもこんにちは。我々は生徒会です。」
5人の真ん中に立っていた生徒が口を開いた。
この人は確か、生徒会長の水上律。成績は常時トップで、冷静沈着で真面目な性格の持ち主だ。能力者という噂もある。
「生徒会がうちに何の用?」
エーミール部長が対応する。部長の対応の仕方は、どこか雑なように感じた。
「我々は皆さんにお伝えしなければならない事があり参りました。」
「単刀直入に言うと、本日を以て萬部は解散して頂きます。」
「は…?」
「何言ってんだアンタ。」
メロス先輩がキレ気味で言う。
「近頃の萬部の部活動は危険なものと見なされました。そのため解散とします。」
「どうしていきなりそんな事……?」
エーミール部長は困惑している。
「犯罪組織との交戦、校門前で指名手配犯と対峙し交戦しかけた事。過去にも多くの危険な行為がありました。」
「ちょっと待てよ。俺達は──」
「皆さんが奉仕活動などをしているも知っています。しかしそれ以上に皆さんの行動は危険なんですよ。そう、スーホさんと津田さんの時からね。」
エーミール部長は少し黙り込んで考えてから言った。
「話は分かったよ、律。でもね、僕らもそう簡単に引き下がる訳にもいかない。」
「これは命令です。従わないのならば、それ相応の措置を下しますよ?」
「何だと…?」
「メロス待って!」
メロス先輩が能力の高速移動で会長に近づき殴ろうとした。部長が止めようとするが、間に合わない。
「この野郎っ…!」
メロス先輩の拳が会長の顔面に到達しそうになる。しかし、その拳をを会長の右隣にいた生徒が止めた。
「やめろよ、メロス。」
「セリヌンティウス………!」
この人は確か生徒会会計のセリヌンティウス先輩だ。この人も能力者らしい。
セリヌンティウス先輩はメロス先輩の腕を強く掴んで振り払った。
「メロス、お前は昔からすぐカッとなるのが悪い癖だな。」
「わ、悪い……。」
メロス先輩は後ろに下がった。そして会長が再び話し始めた。
「それで、どうするんです?」
「どうするって……………」
すると、ルロイ先生が口を開いた。
「萬部と生徒会で決闘をするのはどうだ?」
「決闘……?」
部長と会長が同時に言った。
「どちらも丁度5人ずつで能力者もいる。丁度いい。」
ルロイ先生がそう言うと、会長の左隣の生徒が笑った。
「おぉ決闘か、面白そうだな!燃えるぜぇ!」
この熱苦しい人は生徒会副会長の日野修也。この人もどうやら能力者らしい。
「でも先生、流石に危ないんじゃ?」
「そうです、それこそ危険ですよ。」
「私の能力なら死なない限り怪我の治癒は可能だ。それにお父さんの動きも活発化している今、力をつけるいい機会だ。」
「なるほど…。」
「なあ、やろうぜお前ら!」
修也副会長が生徒会メンバーを鼓舞する。
「やらないと彼らも引き下がるつもりが無さそうなので、やります。」
「会長がやると言うのなら従いましょう。」
他の生徒会メンバーも了承した。
「萬部の強さを見せつけてやりましょう。ね、皆んな!」
俺は路地裏で出会ったあの少女の事を思い出し、返事をした。
「……うっす!」
「決まりだな。では明日の放課後、グラウンドにて決闘を執り行う。各自、備えるように。」
こうして、萬部と生徒会の決闘が決まった。
to be continued
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