第16話 決闘
翌日、俺達は作戦会議に移った。
「生徒会メンバーの能力について知っている情報を共有しよう。」
エーミール部長が部員の前に立ってまとめ上げる。
「まずは、生徒会長・水上律。冷静沈着で真面目な性格の持ち主だ。彼の能力は水を操る能力で、一定の範囲内なら水の位置と形状を自由自在に操れる。でも、0から水を生成したり、氷や水蒸気に変えるのは不可能みたいだ。みんな、他のメンバーについて何か知ってる事はある?」
するとメロス先輩が口を開いた。
「生徒会会計・セリヌンティウス。アイツの能力は石を生成する能力だ。俺はアイツと幼馴染だから、アイツの能力に関してよく知っている。」
そして俺も説明をした。
「生徒会書記・夏海。あいつは小中学生の時から同じ学校だったんで、なんとなく知ってます。能力はなかったはず。だからそこまで警戒する相手では無いと思います。」
夏海。俺の幼馴染の親友だったやつだ。小学校では仲が良かったようだが、中学になってからはいつの間にか距離が開いてしまっていたらしい。
「なるほど、二人ともありがとう。残りの生徒会メンバー、副会長の日野修也君と広報の
部長が問いかけるが、全員が首を振る。ただしルロイ先生を除いて。
「ルロイ先生は何か知ってるんですか?教師なら生徒の能力とか把握してるんじゃ…」
「知ってるが、私はあえて秘密にしておく。」
「えっ、どうして?」
「臨機応変に対応するのも大事なことだからな。」
「そんなっ…先生は萬部を解散させられても良いんですか!?」
するとルロイ先生がニヤッと笑った。
「お前達はそう簡単に負ける程弱くないだろ?」
放課後、萬部と生徒会が学校のグラウンドに並んだ。今日は他の生徒達は部活動を禁止され、既に全員帰宅しており、他の教師達も早めに帰宅していた。
ルロイ先生がルールを説明を始めた。
「私が審判を務める。萬部と生徒会、それぞれ1人ずつ選出し戦ってもらう。今回はそれを5回行う5番勝負だ。相手を気絶、または立ち上がれなくした場合に勝利とする。」
説明が終わると、両陣営はグラウンドと端に集まって最後の確認をした。
「みんな、ルロイ先生が怪我を治してくれるとは言え、無茶はしないようにね。」
一方、生徒会陣営
「皆さん、全力を尽くしてください。これ以上萬部が危険な行為をしないよう、何としても止めるのです。」
律の言葉を聞いて、生徒会メンバーの表情が真剣になった。
「一回戦は俺が行きます。」
そう言ったのは与一だった。与一は弓矢と扇を携えて、グラウンドの中央に向かって歩き出した。
萬部陣営
「あっち那須君か…。向こうの能力が分からない以上、最高戦力を出そう。兵十君、いける?」
「うっす、いつでも。」
兵十先輩は立ち上がり、火縄銃といつも付けている狐のお面を確認してグラウンドの中央に向かって歩き出した。
しかし、兵十先輩は火縄銃の装填に必要な道具を置いて行ってしまった。
「部長、兵十先輩は火縄銃を装填する道具を持って行って無いけど大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫だよ戸部君。兵十君のお面には秘められた力があるからね。」
兵十先輩と那須先輩、両者がグラウンドの中央で向かい合った。そして、ルロイ先生が開戦の合図をする。
「1回戦、開始!」
二人は互いに距離をとり、相手の様子を伺う。
奴の武器は扇と弓矢…。恐らく能力と組み合わせて使って来るつもりだろう。
先に仕掛けたのは与一だった。与一は腰に携えていた扇を取り出し、兵十目がけて突進した。与一はそのまま、兵十の胸に扇を強く叩きつけた。兵十は叩き付けられた扇を取り外そうとするが、できない。
「取れない……。瞬間接着剤を使ったのか!?だが一体何のために…?」
与一はそのまま距離を置き、次に弓を構えて矢を放った。兵十は矢を難なく躱した。しかし兵十の横を通り過ぎた矢は、物理法則を無視して方向転換し兵十の下へ戻って来た。
「痛っ……!?」
矢が戻ってきた……?
「驚いて声も出ないようだな。」
今確かに矢を躱したはずだ。この扇の効果か…?さっきルロイ先生は、残りの生徒会メンバーは能力を持っているような口ぶりだった。ならば奴の能力は───
「なるほど…。お前の能力は『扇を貼り付けた対象に矢を必中させる能力』と、いった所か。」
「当たりだ。まぁ安心しろ、
与一は大量の矢を放つ。兵十はそれらを幾度も躱すが、兵十の横を矢は容赦なく兵十を襲う。
「お前は無能力者だと聞いている。お前の力では俺に勝つ事は不可能だ。さっさと降参するがいい。さもなくば、このまま貴様を叩き潰す。」
刺さらないとは言え、かなり痛い。矢を闇雲に撃っても全て俺の方へ飛んで来る。それを躱したとしても、また飛んで来る。このまま躱し続けるだけではジリ貧だ。ならばコイツを使う……!この広いグラウンドなら使っても問題ないはずだ。
「その答えは…………NOだ!」
兵十はお面に手をかざした。狐のお面が光り輝く。
「ごん、俺に力を貸してくれ!」
to be continued
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