第三章 生徒会・暗殺者襲来編
第14話 堅物なOBと暗殺者
入部試験の日から、約2ヶ月。生徒の装いは冬を感じさせるものになっていた。特に大きな事件も無く萬部は迷い猫探しや、草むしりなど平凡な依頼をこなして過ごしていた。ルロイ先生もよく顔を出すようになって、平和な雰囲気が汎っていた。
俺は今日も萬部へ行こうと、階段を上がっていた。シュンタは掃除当番があるため、俺だけ先に一人で向かっていた。
俺はいつも通り部室の扉を開け中に入った。部室の中は静まりかえっていた。まだ誰も来てない、そう思った次の瞬間背後に気配を感じた。振り返ると、見知らぬ男の姿があった。
「だ、誰っ…!?」
俺は思わず声を上げて驚いてしまった。男はこちらに近づいてきた。
「もしや、お前が戸部か?」
男は突然問いかけてきた。
「あ、えっと、そうですが…どちら様?」
「すまない、名乗るのが遅れた。俺はスーホ。ここの卒業生で元々萬部に所属していた。いわゆるOBってやつだな。たまにこうやって萬部に訪問してる。以後、よろしく頼む。」
そう言われ、手を差し出された。
「なるほど。えっと、スーホさん。よろしくお願いします。」
俺はスーホさんの手を握って握手した。スーホさんは真面目な表情で俺を見つめている。
「話には聞いている。イレイザーの構成員と一戦交えたそうだな。」
「ああ、はい。まぁ先輩に助けられましたがね。」
「だが素晴らしい活躍だ。先輩として俺も誇らしい。」
「いや別にそんな…!」
最近気づいた事だが、イレイザーの構成員と戦った事は案外世間に知れ渡っていて、クラスメイトからもいろいろ言われる。俺もそこそこ嬉しい。
すると扉が開いた。
「あっ、スーホさん来てたんですね。」
「久しぶりだなシュンタ。」
二人な仲良く挨拶をした。
「戸部君はスーホさんと会うのは今日が始めて?」
「うん、そうだね。」
「スーホさんは3年前に萬部を立ち上げたメンバーの一人なんだ。スーホさんと、エーミール部長と、今この学校の生徒会長の人と、あと『津田さん』っていう人の4人で。」
「へぇそうなのか。じゃあ、その『津田さん』って人も時々ここに来るの?」
「それが…アイツは来ないんだ。」
スーホさんが暗い表情で言った。
「どうしてですか…?」
「アイツは今───」
スーホさんが話していると、再び扉が開いた。
「あ、スーホさん。」
「うっす。」
「久しぶりっすね。」
エーミール部長とメロス先輩と兵十先輩だった。
「丁度全員揃ったみたいだな。では、始めるとしよう。」
「始めるって何を?」
「とりあえず座ってくれ。」
3人はそれぞれのポジションに腰掛けた。するとスーホさんは兵十先輩を指さした。
「ちょっと待て兵十、何だそれは。」
スーホさんの指先は、兵十先輩が手に持っていた飴に向いていた。
「これか、さっき友人に貰った物だ。」
「校内に菓子の持ち込みは禁止のはずだ。よこせ、俺が没収する。」
「いや、少しくらいいいだろう……。」
「いや、駄目だ。お前だけ特別扱いという訳にはいかない。」
そう言ってスーホさんは兵十先輩の飴を取り上げた。
「スーホさんはもう卒業生なんだからいいだろう……。」
兵十先輩はがっかりしていた。
「シュンタ、この人ちょっと厳しいすぎじゃな
い…?」
俺はひそひそとシュンタに話しかけた。
「スーホさん、元生徒会長だから校則違反には厳しいんだよねぇ…。」
シュンタも苦笑いだった。スーホさんは飴をポケットに突っ込んで座った。
「それでは、気を取り直して話を始める。近頃、軍人、元軍人が狙われる事件が多発しているんだ。」
「軍人が…?」
「ああ。約1年前から徐々に増え続けている。こそで今日は、その対策会議をしようと思う。」
「なるほど。」
「犯人は同一犯なんですか?」
「ああ。遺体の斬られた箇所と死因が皆同じなんだ。故に同一犯の犯行だと思われる。」
「間一髪で死を免れた被害者の証言によると、犯人は30代男性。日本刀を所持していて、それで斬り掛かって来るらしい。その男は殺す直前に『妻と娘の仇だ。』と呟く事から、犯人はお父さんというコードネームで呼ばれている。」
「妻と娘の仇…?つまり軍がその男に何か危害を加えたという事ですか?」
「分からない。だが、軍を恨んでいるのは確かだ。それから、萬部の顧問のルロイ先生も元軍人だ。」
「つまりルロイ先生を殺すためにこの学校に来る可能性もあるという事ですか……?」
「そうゆう事だ。」
場に緊張が走る。
「生徒に危害を加えられる可能性も考えられる。いざという時はお前達、萬部がお父さんから生徒達を守ってもらいたい。そして俺も可能な限り手助けしたいと思う。」
「分かりました。いざという時は僕達で学校を守りましょう。」
「ありがとう、とても心強い。では、これよりお父さんについて説明する。奴は───」
対策会議を終えた頃には、窓の外は日が暮れていた。俺達はそこで解散した。
──30分後──
「しまった、火縄銃を置いて来てしまった。」
兵十は火縄銃を忘れた事に気付き、学校に戻ろうとしていた。
兵十は校門の前に辿り着いた。生徒の姿は無く、校門は既に閉まってた。
「入れないか…。仕方ない明日一番に取りに来るとしよう。」
兵十が諦めて帰ろうとしたその時、兵十の背後から声がした。
「小僧、少しいいか?」
兵十は後ろを振り返った。そこには、スーツに身を包んだ30代くらいの男が立っていた。
この男…全く気配がしなかった、只者ではない。腰に携えている物は…まさか日本刀か?薄暗くてよく見えない…。
兵十は恐る恐る返事をした。
「何だ……?」
「ルロイという男を知らないか?」
ルロイ先生について尋ねてくるという事は、この男が例の暗殺者、お父さんに違いない。ならば──
「………………知らない。」
男は暫く黙ってから言った。
「お前、嘘をついているな?」
「何のことだ………。」
すると男は腰に携えていた日本刀を鞘から引き抜いた。そして日本刀を兵十の首元に近づける。
「正直に吐けば助けてやる。」
兵十は固唾を飲んで言葉を絞り言った。
「断る……。」
「ならば強引に吐かせてやる。」
男は日本刀を振りかざした。街頭の灯りが反射して、刃がギラギラと光る。
ここで戦闘するか…?いや、俺一人では分が悪い。それにこの場でコイツを使う訳にもいかない。ここは退散だ…!
兵十は煙玉を炸裂させた。煙玉は白い煙を放ち、兵十を包み込んだ。そして兵十はその場から逃走した。
「逃げられたか……。」
こんなにも早くお父さんが現れるとは……。直ぐに伝えなければ。
兵十は萬部のグループLINEに情報を報告した。
to be continued
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます