第一章 初陣編

第3話 シュンタの隣、そして依頼人

 俺は昨日、萬部に仮入部する事を決めた。萬部には個性的なメンバーが揃っている。エーミール先輩、メロス先輩、兵十先輩、シュンタの四人だ。更に、彼らのうち三人が特殊能力を持つ能力者なのだ。


 今日もいつも通り学校に行ったが、今日も教室ではシュンタは一人でブツブツと何もない所に喋りかけている。やはり、近寄るのは気が引ける。クラスメイトも誰にも彼には近付こうとしない。


 しばらくシュンタを観察してみた。シュンタは楽しそうに話してしている。まるでそこに誰かがいるかのように。ん…?待てよ、ひょっとしてそこに誰かがいるのか?


 シュンタにしか見えないが……。


 キーンコーンカーンコーン…


 もう授業が始まる時間だ。一時間目は美術だから、美術室に行かないと!


 俺が急いで仕度をしている時、シュンタは仕度を終えて教室を出るところだった。


「戸部君も早く〜。」


「あぁ、うん。」


シュンタに言われて、俺は急いで教室を出た。美術室までは二人きりだ。これはシュンタがいつも話しかけている、“見えない誰か”について尋ねるチャンスだ。


「シュンタ。」


「ん?」


「そこに誰かいるの?」


「………!?」


 シュンタは驚いた顔をした。それと同時に、心の底から喜んでいた。


「戸部君には見えるの…?」


「いや、見えないけどそんな気がするんだ。」


 その後、シュンタに話を聞いた。シュンタの隣には、「シンタ」という親友がいるらしい。シンタは3年前にあった、能力者同士の大規模な戦争に巻き込まれて亡くなってしまったのだ。そして今は、亡くなったシンタがシュンタにだけ見えるようになった。シンタはシュンタの能力にも関係しているらしい。


 今日の授業が終わり、俺は部活に向かおうとした。その時、シュンタに呼び止められた。


「戸部君、一緒に行こう。」


「おう」


 道中、俺たちは今日あった出来事について話た。


「今日の田中先生、カツラズレてたね~w」


「あぁ、あれ面白かったw」


 シュンタはいつも一人で何もない所に話しかけていたから近づき難い存在だった。でも、話してみると面白いし、話が合う。俺達はすぐに仲良くなった。


 階段を上がり、4階の部室の扉を開けるとエーミール部長とメロス先輩がいた。


「やぁシュンタくん、戸部くーん。」


「よっ」


「先輩お疲れ様です。」


「どうもー。」


 そう言って、二人は挨拶してくれた。兵十先輩はまだ来ていないようだ。


「二人とも、今日は依頼人が来るんだ。どうやら事件の捜査をして欲しいらしいよ。」


「事件の捜査なんて久々ですね〜。最近ゴミ拾いとか草むしりばっかりだったから腕がなりますね。」


「へぇ、萬部っていろいろやってるんですね。」


「あぁ、俺らはボランティアみたいな事するのが多いな。」


 そんな会話をしていると、兵十先輩が入ってきた。兵十先輩は竹刀か金属バットが一本入りそうな入れ物を背負っていた。剣道か野球でもやっているのだろうか?あとで聞いてみよう。


「うっす。」


 兵十先輩は相変わらず静かだ。


「よっ兵十、今日は依頼人が来るらしい。」


「うっす、わかりました。」


 そう言って兵十先輩は背負っていた入れ物を置き、椅子に腰掛けた。すると、ドアをノックする音が部室なの響き渡った。どうやら依頼人が来たようだ。


to be continued

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