第4話 連続失踪事件

 ドアをノックする音が聞こえた。どうやら依頼人が来たようだ。エーミール部長がドアを開けに向かった。


「はーい。」


「どうも…萬部はこちらで合っていますか…?」


 エーミール部長が扉を開けると60代くらいの女性が立っていた。服装は決して派手ではないが、身に付けている物は全て高級ブランド物だ。


「はい、こちらが萬部です。依頼人の方ですね。どうぞ、お入りください。」


 エーミール部長は意外と礼儀正しい人だった。軽そうな顔をしているから、なんとなくだらしない人だと思っていた。


「失礼します…。」


 依頼人のお婆さんは暗く、今にも途切れそうな小さい声でそう言って部室に入った。


「どうぞ、こちらにお掛けください。」


 お婆さんは2人くらい座れそうなソファに座った。


「お茶です、どうぞー。」


シュンタがお茶を出した。部室の奥にはポットと湯呑みとお茶っ葉が置いてある。


 エーミール部長はお婆さんが座ったソファの、机を挟んだ向かい側のソファに座った。


「本日はお越し頂きありがとうございます。では、ご依頼の詳細をお聞かせ願えますでしょうか?」


「はい…先週、私の夫が行方不明になっていて…」


「警察には相談されましたか?」


「はい…先日から捜索をして頂いているのですが…まだ見つからないそうです。なので、こちらに伺いました…。萬部は事件を解決されていると噂を耳にしたので…。どうか、夫を見つけて頂けませんか?」


「なるほど。教えていただきありがとうございます。では、明日から調査を開始します。」


「よろしくお願いします…。皆様、お気をつけください、警察の男性も1人行方不明になっているそうですから…。」


「はい、ありがとうございます。」


 お婆さんはソファから立ち上がった。エーミール部長も、ソファから立ち上がった。


「では、本日は失礼します…。どうか…夫を見つけ出して頂きたいです…。どうかよろしくお願いします…。」


「はい、我々も全力を尽くしますから。お婆さんもお気をつけて。」


 エーミール部長はドアを開けて、お婆さんを通した。お婆さんはお辞儀をして廊下を歩いて去った。エーミール部長がドアを閉めて言った。


「近頃ニュースでも取り上げられている、連続失踪事件。興味深いね。」


「あぁ、やり甲斐のありそうな事件だ。」


 メロス先輩がそう言って拳を合わせた。


「明日は土曜、朝から調査ができるね。明日、校門の前で9時に集合しよう。」


 部長がそう言うと、全員が頷いた。


 校門を出て、俺たちは解散した。帰り道は兵十先輩と同じ道である。だから、兵十先輩が背負ってる入れ物について、尋ねてみる事にした。


「兵十先輩。」


「なんだ?」


「その背負ってる入れ物って何が入ってるんですか?野球か剣道でもやってるんですか?」


「あぁ、これか、これは火縄銃だ。」


「ん?」


「…どうした?戸部。」


「え、火縄銃…?なんでそんな物を?」


「これは大事な物なんだ。俺の恩人に貰った。それに、いざという時に使えるから持ち歩いてる。見るか?」


 そう言うと、兵十先輩は背負っていた入れ物を降ろして、中身を取り出した。なんと、本当に火縄銃が入ってるではないか。博物館でしか見たことがなかった俺は思わず声を出して驚いてしまった。


「ひゃぁ…本物だぁ……。でも、火縄銃なんて持ち歩いて、大丈夫なんですか?銃刀法に引っかかったりは…」


「問題ない。」


「本当に…?」


「あぁ、この辺りの警察官とは知り合いだからな。許可は貰ってる。」


 兵十先輩、狐のお面といい、火縄銃といい、不思議な人だ。 


「じゃ、また明日。」


「はい、さようなら。」


 明日は初の部活動だ。俺も少し下調べをしておこう。


to be continued

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